青春、冒険、恋――ノスタルジックに夏に浸る文庫小説

ダ・ヴィンチニュース / 2014年8月21日 11時50分

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『ゴールデンボーイ 恐怖の四季 春夏編』(スティーヴン・キング:著、浅倉久志:訳/新潮社)

 夏真っ盛り。高校野球は盛り上がり、花火大会で街は浴衣姿であふれかえる。心霊特集がテレビをにぎわせ、ひやりとすることもあるかもしれない。青春、冒険、思い出――夏はただ暑いだけじゃなく、日常とはちがう何かを期待させる。そして夏を通して出会ったもの、あるいは失ったものは人を成長させてくれるはずだ。感動も涙も、きっと“いまのあなたに必要”なもの。『ダ・ヴィンチ』9月号ではそんな夏にぴったりの文庫を特集。何かを得るには、何かを失わなくてはいけないんだな……、なんて、ノスタルジックに思わせてくれる文庫小説6冊をここでは紹介する。

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■『ゴールデンボーイ 恐怖の四季 春夏編』 スティーヴン・キング 浅倉久志/訳 新潮文庫 840円(税別)
 トッドは13歳。夏休みにドゥサンダーという老人の住む家を訪ねる。老人の秘めた過去を確かめるためにだ。最初こそ抵抗していたドゥサンダーだったが、トッドを自宅に招き入れる。ここからふたりの不可思議な関係が始まり、やがて奇怪でおぞましい間柄となっていく。過去の過ちのせいで……。

■『向日葵の咲かない夏』 道尾秀介 新潮文庫 670円(税別)
 ミチオは小学校4年生。明日から夏休みという日に、欠席したSの家にプリントを届けに行った。ミチオが訪ねると庭に面した部屋からSが見えた。おかしな具合に全身を揺らしていたのだ。首が、人間の姿とは思えないほど長く伸びている。ミチオは急ぎ学校に戻り教師に説明したが、Sの死体が消えていて……。

■『しずかな日々』 椰月美智子 講談社文庫 495円(税別)
 母親の仕事の都合で転校することになったぼく。けれどせっかくできた友人と別れるのはつらい。だからぼくはおじいさんの家で暮らすことにした。「夏。古い大きな家。麦わら帽子。ホースから飛び出るしぶき。土の匂い」。少年の夏は、おじいさんと暮らす時間、友人と過ごす日々、冒険でキラキラと輝いていく。

■『季節風 夏』 重松 清 文春文庫 629円(税別)
 親との別れ、死んだ兄の妻だった義理の姉の再婚と甥っ子との別れ、死んだおばあちゃんがお風呂上りにつけてくれた天花粉の匂い。夏はそれぞれの人に、様々な思いを焼きつける。そしてするりと、夏の終わりはやってくる。けれど終わりがあるから輝ける……、そんな夏を舞台にした12本のお話。

■『夏の朝の成層圏』 池澤夏樹 中公文庫 590円(税別)
 彼はマグロ漁船から落ち、波を乗り越え、南の島に上陸した。椰子の木が何本も立っている島には、人の気配はない。椰子の実で喉の渇きを癒やし、バナナを見つけその場で一度に20本食べた。それからどれくらい日にちが経っただろう。島が彼の心を領している。彼はこのままこの島で生きていくのか?

■『異人たちとの夏』  山田太一 新潮文庫 430円(税別)
 妻子と別れた脚本家は、仕事場として使っていたマンションに住んでいる。ある日、子どものころに住んでいた浅草へと行ってみた。そこは昔、寿司職人の父と母、親子3人で住んでいた場所。そこで死んだ父と母に会った。36年前に死んだふたりに。それから何度も通ううちに男の身体に変化が現われ……。

構成・文=大久保寛子/ダ・ヴィンチ9月号「文庫ダ・ヴィンチ」

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