重厚なテーマをみずみずしく描く 今日マチ子が『cocoon』で開花させた才能とは!?

ダ・ヴィンチニュース / 2014年8月27日 12時0分

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『cocoon』(今日マチ子/秋田書店)

 第18回手塚治虫文化賞「新生賞」に輝いた今日マチ子。2年連続で文化庁メディア芸術祭「審査員会推薦作品」に入選したデビュー作『センネン画報』以来、精力的に作品を生み出し続けている。

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 叙情派。水の青。詩の人。アートの人――。『センネン画報』からイメージされる作家像を、自らの意思で打ち破ろうとしたのが、沖縄戦を題材にした長編『cocoon』(2010年8月刊)だった。激情。血の赤。大きな物語。少女の毒――。この1作で彼女は、物語作家としての才能を覚醒させた。

 『cocoon』の系譜ともいえる作品が、上下巻の長編『アノネ、』だ。人が人を殺す最悪の世界を、想像力によって輝かせてみせる少女のけなげな姿……だけじゃない。想像力こそが、悪を生む。そのリアルもまた、謎の小部屋にひそむ「青年」の言動を通して描き出すことに成功した。収容所の残虐なリアルも、目をそらさず描ききった。

 『センネン画報』のポエジーと『cocoon』の物語性が合体したのが、『みつあみの神様』だ。震災後の誰もいなくなった風景に、置き去りにされた、物。そこにドラマを見出したマンガ家の視線に胸打たれる。エロティックホラーを目指したという長編『U』で証明したのは、彼女が手塚や藤子に連なる「少し不思議(S・F)」作家だということだ。『mina-mo-nogram』では新進気鋭の劇作家とコラボし、いまだかつてこの世界に存在したことのない種類のマンガを完成させた。

 今日マチ子とはこういうマンガを描く人だ……なんて分かりやすい説明はもう、絶対できない!

 『ダ・ヴィンチ』9月号では、そんな今日マチ子を特集。作品分析のほか、本人のロングインタビューも掲載している。


■『アノネ、』(上・下) 今日マチ子 秋田書店 各950円(税別)
 新制帝国軍による収容所送りを回避するため、東方系民族の一家は隠れ家生活に。少女・花子の唯一の楽しみは、日記に文章を記すこと。だが、「あのね、」と書き出した途端、謎の少年が待つ白い密室に移動する̶。アンネとヒトラーを下敷きにした、戦争長編第2弾。

■『みつあみの神様』 今日マチ子 集英社愛蔵版C 933円(税別)
 海辺にぽつんと佇む一軒家で暮らす、みつあみの少女。洗濯バサミ、石鹸、ゴム手袋、浮輪、枕……。ここではモノたちが他愛無いおしゃべりをしていることを、少女は知らない。モノどもは旅立ち、出会い、喜び悲しむ。ここは「どこ」か? ラストで真実が顔を現す。

■『U[ユー]』 今日マチ子 太田出版 1200円(税別)
 大学でクローン技術を研究する、引っ込み思案なユウ。自分の舌を埋め込んだコピー人間と奇妙な友情を結び、彼女の協力で先生との恋愛を楽しむ。コピーがオリジナルへの殺意を抱き始めた頃、双子の姉妹・アイがやってくる……。少し不思議なSFサスペンス。

■『mina-mo-no-gram(ミナモノグラム)』 今日マチ子、藤田貴大 秋田書店 950円(税別)
 劇団「マームとジプシー」の作・演出家、藤田貴大と、ネーム段階から密接な打ち合わせを交わして作り上げたコラボ作品。リフレインを多用しながら、「川」「海」「湖」の三部構成で、主人公・青柳いづみ(同劇団の看板女優がモデル)の青春の日々を描き出す。


構成・文=吉田大助/ダ・ヴィンチ9月号「コミック ダ・ヴィンチ」

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