「花子ロス」患者必読! ドラマでは描かれなかった花子をめぐる人々の実際

ダ・ヴィンチニュース / 2014年10月5日 5時0分

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『村岡花子エッセイ集 想像の翼にのって』(村岡花子/河出書房新社)

 「曲がり角の先には、きっと一番良いものが待っているの」。毎日想像の翼を広げていた朝の時間が恋しくてたまらない。朝の連続テレビ小説『花子とアン』が終了して、「花子ロス」に陥っている人も少なくはないだろう。花子のあの前向きさ、まっすぐさに心奪われた人は今、朝の時間にふと寂しさに襲われてはいないだろうか。

【画像あり】『村岡花子エッセイ集 想像の翼にのって』中面をチェック

 村岡花子氏著『村岡花子エッセイ集 想像の翼にのって』(河出書房新社)は、朝ドラヒロインのモデルとなった村岡花子氏の言葉が詰め込まれた作品だ。単行本未収録、新発掘エッセイが多数というこのエッセイ集にはなんと美しい言葉が織り交ぜられているのだろう。この作品は、朝ドラでは描かれなかった彼女や彼女の周りの人の姿が描かれた、ファンにはたまらない1冊である。

 朝ドラでは描かれてなかったが、村岡氏の母は、83歳でこの世を去った。村岡氏は、いつも机の上に亡き母の写真を飾り、簡単に「美しいあゆみなりけり おん母よ」という歌を書き付けておいたのだという。終戦後まもなく父親がこの世を去って以来、村岡氏は大森で母親も一緒に暮らしていた。近所に住む他の娘や息子に囲まれて幸せな晩年を送ったのではないだろうか。

 彼女が母親の思い出で忘れられないのは幼い頃に毎晩眠る前に話してくれたお話の数々。たとえば、あるところに小さい子がいて、字が上手になりたくてたまらなかったが、ろくに練習もしないで、「どうか手をあげてください」と祈ったところ、手が上がったきり下がらなくなってしまったという逸話。彼女はこの話を不思議と忘れられないのだという。字が上手になるのを「手があがる」といったものだが、お祈りだけに頼るその子には罰があたったというのだ。村岡氏の母は小言をあまり言わない代わりに、お話をしてくれたのだそうだ。翻訳家であり、童話作家である村岡氏の原点は、母の話してくれたお話にあったことが想像できる。

 夫とのエピソードも微笑ましい。村岡氏が彼と文学談義、特に英詩について語り合うと、村岡氏はどの詩も「十八の時に読みました」と答えていたようで、夫はいつも花子が何か詩を口ずさむと「それも十八の時に読んだのかい?」と茶化してきたらしい。けれども、どの本の一節も、何と笑われても、18歳、女学校5年生の時に読んだものばかりだから言い返せない。手当たり次第に名詩名作に触れた時代を回想して、村岡氏は、若い日の読書が人の一生を支配する力の強さに驚きを感じている。

 村岡氏を取り囲む人々の存在、本との出会いが彼女に「想像の翼」を授けたのかもしれない。この本を読んでいると、何気ない日々の中に幸せを見出していく彼女の姿に勇気づけられる気がしてくる。『花子とアン』ファンだった人、必読の1冊。

文=アサトーミナミ

ダ・ヴィンチニュース

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