ギャグあり! SFあり! ブラックユーモアあり! 哲学者の「神髄」をまさかの8Pに凝縮

ダ・ヴィンチニュース / 2014年11月10日 18時0分

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『新釈 うああ哲学事典』(須賀原洋行/講談社)

 アリストテレス、マルクス、ソシュール…。古今東西の思想家たち、その名前を聞いた事がある人は多いだろう。けれど、その著作を読破したという人は、そうそういないのではないだろうか。学生時代、手に取っては見たけれど、日本語を読んでいるはずなのに、ぜんぜん文章が頭に入ってこないので、まったく先に進めなかったというひどい経験をした覚えがある。それ以来消えない「哲学コンプレックス」に、ピンポイントで効いたのがこの『新釈 うああ哲学事典(上)』だ。

【画像あり】『新釈 うああ哲学事典』中面をチェック

 2000年代に『モーニング』誌上で連載されていたこの作品、たった8ページでひとつの哲学思想を描き出すという、なんとも大胆で実験的なマンガなのだ。それもギャグありSFありブラックユーモアありとスタイルは変幻自在で、よくもまあ、こんなぴったりのシチュエーションを思いつくものだと、その感性に脱帽してしまう。発表されてから10年以上経っているとは思えない、斬新な作品だ。

 作者の須賀原洋行は、大学で哲学を学び、暇さえあれば哲学書を読んでいるという、筋金入りの哲学好き。だからこそ、こんなに新鮮、それでいて深い解釈が可能だったのだろう。例えば「万物は流転する」といったヘラクレイトスの人間論を「人間ってスルメなんだ」とまとめちゃったり、スピノザの「汎神論」では本当に神様が主人公で人間が病原菌だったり…。どの話も最後のコマは、それぞれの思想家に対する作者のコメントなのだが、これもなかなかいいところをついていて、ううーんと考えさせられる事しばしば。独特の発想で哲学の「核」を鮮やかに描き出し、こちらはくすくす笑いながら、いつのまにかどっぷり哲学にはまっている。安部公房の『箱男』やカフカの『変身』といった、哲学的文学作品も扱うなど、内容もバラエティに富んでいて、哲学初心者のための哲学入門としてはもちろん、哲学オタクも結構満足できる1冊だ。

 マンガだからとっつきやすいが、吹き出しが多く、ぎっちり中身が詰まっているので、すらすらっと読み流してはもったいない。じっくりと腰を据えて、ディープ&シニカルな須賀原流「哲学ワールド」を堪能したい。

文=kawapara

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