川村元気最新作! 宝くじで3億円を手にした主人公は幸せになれるのか?

ダ・ヴィンチニュース / 2014年11月17日 17時40分

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『億男』(川村元気/マガジンハウス)

 皆さん、今までの人生で一番影響を受けたのはどんな本ですか? 残念ながら、世の中の人に一番多くの影響を与えた本は聖書でもコーランでもなく、「預金通帳」ではないでしょうか。「いや、そんなことはない」と言い返したくなっても、お金は人生を一変させるだけの危うさを孕んでいるというのは誰もが実感していることでしょう。増減する値に一喜一憂。私たちはお金に縛られ続ける存在ではないでしょうか。

【画像あり】『億男』中面をチェック

 『億男』は、『世界から猫が消えたなら』で本屋大賞を受賞した川村元気氏著の最新作。皆さんも自分にとっての「お金と幸せの意味」を考え直す良い機会になるかもしれません。

 「金持ちになったら、何をしよう」。そんな妄想を広げることは誰にでもありますが、この物語の主人公・一男は、実際に宝くじで3億円を手にし、途方に暮れています。3000万円の借金が原因で別居中の妻子やその借金を返すべく昼夜問わず働いている日々を送っていた一男。人はお金で幸せになれるのでしょうか。これからの人生に一抹の不安を覚えた彼は、「お金と幸せの答え」を求めて、大富豪となった親友・九十九のもとを15年ぶりに訪問します。ですが、九十九は、一男のお金とともに失踪…。果たして、一男は、親友の行方を掴むことができるのか。「お金と幸せ」の答えを探す一男の旅が始まります。

 心に残ったのは、10億円もの金を押し入れの奥を隠したまま暮らす九十九の元恋人の姿。お金に振り回されない平凡な暮らしを求めて、ユーモアもセンスも普通の公務員の男と結婚しながらも、ふとした時には、押し入れの奥を撫でてキモチを落ちつける女は、お金から逃げようと思っても、永遠に逃げることができない悲しい女です。夫とそんな関係を続けて何の意味があるのか、とどうしても疑問に感じてしまいます。お金って人を幸せにするものではないの?幸せにするものではないの? 読者はその答えを求めて、この本をむさぼるようにめくることでしょう。

 登場人物達が見失っていたのは、人と人との当たり前のつながりではないでしょうか。他人を心から信じることではないでしょうか。読めば読む程、歯がゆい。よく話し合えば解決できるはずのところで、彼らはすれ違っています。もしかしたら人は、とても単純なところで、すれ違ってしまう生き物なのかもしれません。お金を手にした人は、疑心暗鬼になって、周りが見えなくなる。金持ちが抱える孤独がこの本には詰まっています。

 お金を手にすることで得ること、失うこと。得られた自由と、不自由。私たちにとってどう生きるのが、幸せなのか、今一度考えてみませんか?

文=アサトーミナミ

ダ・ヴィンチニュース

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