空飛ぶ陸と古代文明、アンドロイドの少女と優しい青年の正統派冒険譚!

ダ・ヴィンチニュース / 2014年12月6日 8時0分

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『あせびと空世界の冒険者』(梅木泰祐/徳間書店)

 『あせびと空世界の冒険者』は、『月刊COMICリュウ』の投票型新人発掘企画『登龍門3』で見事1位を獲得した作品で、筆者の梅木泰祐氏にとって初めての商業誌連載です。空飛ぶ陸と古代文明と聞くと思わず「バルス!」と言いたくなりますが、空から女の子は落ちてきません。素材は似ていますが、まったく異なる形で料理された、しかし同じく正統派の冒険譚です。

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 この作品中の「大空の世界」では、人々は空に浮かぶ陸に暮らしています。とはいえ、『天空の城ラピュタ』や『ONE PIECE』の空島のように巨大な陸地が単独で空に浮かんでいるわけではなく、陸は無数に浮かんでいます。人々はそのあいだを、飛行船で行き来しています。ただ、空には「竜魚」という巨獣が生息しており、飛行船や陸をも襲ってきます。人類の行動範囲は竜魚の存在によって制限されており、その版図は古代文明全盛期の10分の1にも満たないと言われています。竜魚から人々を守るのが「衛士」の役目です。空に浮かぶ陸以外、すなわち大地の存在は示唆されておらず、空から落ちたらどうなるのか? といった謎はいまのところ明かされていません。

 主人公の「あせび」は、古代文明ウォルデシア帝国の人型モジュール、いわゆるアンドロイドの少女です。衛士の青年「ユウ」とともに、ウォルデシアの文明が生き残っている古代島を目指しています。あせびは、竜魚との戦いでは防御障壁を展開したり、飛行船の動力源を代替したりと、アンドロイドらしい挙動も見せます。しかし、普段のあせびはアンドロイドであることを隠しており、普通の表情豊かな少女にしか見えません。ただ、過去のシーンでは無表情なアンドロイドとして描かれており、豊かな感情表現はどのように獲得したものなのかが気になるところです。ユウに向けられている恋心が、いわゆるツンデレ的な振る舞いになっているのも面白いところ。ちなみにコミックス1巻のおまけ漫画では、あせびとユウの性格や距離感が見事に表現されていて、ニヤリとできます。こういう遊び心、私は好きです。

 不思議なのは、男性の登場人物は全員カタカナ(ユウ、ハイト、カナタ、ゲング、グラムなど)ですが、コミックス1巻に出てくる女性の登場人物は全員ひらがな。しかも、あせび(=馬酔木)、つばき(=椿)、つくし(=土筆)と、みんな植物に関連する名前です。世界観がしっかり組み立てられている物語なので、こういう小さな点にもきっと何か理由があるはず。あせびがウォルデシアを離れるとき「彼女に人生を与えて欲しい」と願った人物は誰なのか。自己修復能力まで持っているアンドロイドを作れるような高度な技術が、なぜいまを生きる人々にはほとんど伝えられていないのか。空に浮かぶ陸や飛行船はどういう原理なのか。竜魚とはいったい何なのか。そして多くの人が目指しているウォルデシアの首都島ブラントには、何が待っているのか。多くの謎を秘めた壮大な物語は、まだ始まったばかりです。

文=鷹野凌

『あせびと空世界の冒険者』梅木泰祐/徳間書店(リュウコミックス)
http://www.amazon.co.jp/dp/4199504168
月刊COMICリュウ『あせびと空世界の冒険者』
http://comic-ryu.jp/_asebi/
梅木泰祐氏のブログ『雲形発着場』
http://hattyakujyou.cocolog-nifty.com/blog/

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