ほの暗さ、辛さが漂う『Fate』シリーズの魅力とは ルールの中で正義を成すことの難しさ

ダ・ヴィンチニュース / 2014年12月8日 12時0分

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『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』

 10月より放送が始まった『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』は、発売から10年経ったゲーム原作のアニメ。現代社会を舞台に、7人の魔術師(マスター)と彼らが召喚する使い魔(サーヴァント)が、「あらゆる願いを叶える」という1つの聖杯を巡って、命がけの戦い(聖杯戦争)を繰り広げる。

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 サーヴァントは、歴史上の「英霊」が7つのクラス<剣士(セイバー)・槍使い(ランサー)・弓兵(アーチャー)・騎乗兵(ライダー)・狂戦士(バーサーカー)・魔術師(キャスター)・暗殺者(アサシン)>に応じて召還される。物語の中心を成すのは、セイバーのクラスの女剣士とそのマスターとなった男子高校生だ。彼らサーヴァントは宝具と呼ばれる歴史上の武器を操り、必殺技を繰り出すことができるが、現世に存在し続けるためにはマスターからの魔力の供給が不可欠となる。そのため、聖杯戦争では霊体であるサーヴァントではなく、生身のマスターの殺害が目的となってしまう。

 ゲーム原作らしく、様々なルールが設定されており、願いを叶えようとする彼らの手足を縛り、またそこに駆け引きの妙も生まれている。

 サーヴァントはクラスに応じて特性があり、ジャンケンのように対戦に際して有利な相手、不利な相手が存在する。したがって序盤戦では、強い相手に対してマスター同士が同盟を結ぶことも。またマスターの腕には、令呪(れいじゅ)が刻まれる。これは最大3回まではサーヴァントを自らの意思に従わせる事ができるいわばワイルドカードで、サーヴァントを瞬時に自らの居場所に移動させることもできるし、極端な話、自害させることも可能だ。令呪を「引きはがす」ことで、他のマスターのサーヴァントを自分に服従させることもできる。

 この物語の前史とも言える『Fate/Zero』から一貫して、主人公は「皆を救おう」「正義を成そう」として藻掻くが、聖杯戦争の時に理不尽なルールと他の参戦者の思惑に飲み込まれ、救われない展開が続いてしまう。

 実はこの作品、いわゆる美少女PCゲームとして誕生して以来、PlayStation、PSPと家庭用ゲームへの移植、TVアニメ、劇場アニメ、そして『魔法少女まどか☆マギカ』などで知られる虚淵玄氏によって前史『Fate/Zero』が出版され、アニメ化されるなど、数え切れない程の映像化、シリーズ化がなされている。ゲームでは物語は複数に分岐するが、どの道筋(ルート)もほの暗く、登場人物達を辛い運命が待ち受けている。

 決してハッピーエンドではない物語。いずれの物語も、聖杯戦争を勝ち抜く――とは言っても、それはほろ苦い結末を伴うのだが――のは、魔術の名門といった伝統の蓄積でもなければ、力押しのマッチョなサーヴァントを従えたものでもない。どちらかと言えば非力だが、自らの信念に従いながらも、柔軟な戦略を持ったものたちだ。

 魔術師や使い魔が活躍するこの物語だが、これだけの長い期間にわたって多くの人に支持されているのは、出自や見えないルールに翻弄され、その名の通り「Fate=運命」に藻掻き、抗うその姿に現実世界の私達が強く共感していることが背景にあるのではないだろうか?

文=まつもとあつし

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