加瀬 亮「観るたびに好きなシーン、好きなせりふが変わるんです」

ダ・ヴィンチニュース / 2014年12月16日 12時0分

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『時間』(吉田健一/講談社)

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、俳優の加瀬亮さん。かねてから敬愛するホン・サンス監督とは、初対面だった対談の席で意気投合。その場で出演のオファーを受けた。主演映画『自由が丘で』の魅力を語る。

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 韓国映画の鬼才・ホン・サンス監督の、実に独特でスリリングな撮影方法について、加瀬さんはこんなふうに振り返る。

「映画監督が脚本を書いてる姿を初めて見ました(笑)。その日の朝、書くんです。だいたい3シーン、10ページくらいなんですが、2時間ほどで書き上げる。書きあがったらその場で覚えないといけないので、役作りとかそういう感じではなかったですね。台本が面白くなかったらその方法はツライかもしれないですが、これがものすごく面白い。だから覚えなくちゃいけないというより覚えたい、みんなで早くやろうっていう感じになるんです。撮影期間は2週間。でもそれも今回は英語だったからで、これまでの監督の映画はほとんど6日間で撮ってると聞いて、びっくりしました。それですべての映画が面白いなんて、本当に魔法のようです」

 すれ違う恋人たち。大切な人からはぐれたモリは、まるで時間からもはぐれてしまったかのよう。人生のエアポケットのようなハードタイムを、ホン・サンス監督ならではの絶妙な会話劇が切り取っていく。

「モリがどんな男なのか。恋人のクォンがなぜプロポーズを断ったのか。演じている僕も最初は気づかなかったことが、観るたびにまた違った見え方で見えてくるんです。おせっかいに見えるという意見もありましたが、ゲストハウスのあの甥は、ものすごい借金を背負っている、だとしたら見せないけど、たくさんのしんどい経験をしてきてるはずで、そう思うとおせっかいに見えるシーンも、自分にはすごい優しいシーンに思えました。この映画は人それぞれの受け取り方で楽しめると思います。」

 さりげない会話劇の中に、それぞれの人が秘めている痛みや優しさが見え隠れする。人生の宝石のようなそれを見つけながら観るのもホン・サンス作品の醍醐味。

「“When do you feel happy, Mori-san?”のシーン、これはまさに吉田健一の『時間』の冒頭の一文と通じます。このシーンは“you don’t have fear”というせりふでバッと終わるんですけど、それがまた印象的でした。観るたびに好きなシーン、好きなせりふが変わるんです」

取材・文=瀧 晴巳

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