警察小説や青春小説だけじゃない! 誉田哲也版『世にも奇妙な物語』

ダ・ヴィンチニュース / 2015年1月6日 11時50分

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『あなたの本』(誉田哲也/中央公論新社)

 ホラーや不思議な物語は、何も夏だけに楽しむものではない。寒さが厳しい季節に読むのもなかなか味わい深い。誉田哲也氏が描いた7つの短編が収められた『あなたの本』(中央公論新社)は、今読むべき、「世にも奇妙な物語」だ。

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 誉田氏といえば、『ストロベリーナイト』をはじめとする「姫川玲子」シリーズや「ジウ」シリーズといった警察小説から、『武士道シックスティーン』を代表とする「武士道シリーズ」などの青春小説まで幅広いジャンルの作品を描き、人気を博している作家である。SFからファンタジーまで、本書に収められた物語はバラエティ豊か。ムー伝奇ノベル大賞優秀賞やホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し、デビューした誉田氏らしい、伝奇物語的な要素やホラーテイストが味を効かせている。誉田氏が描く作品の魅力がすべてギュッと詰め込まれた作品集といえるかもしれない。

 元恋人につきまとわれている女が、姉とともに、憎んでいた田舎に里帰りをする様子を描いた「帰省」。深い森で暮らす原始人たちが遭遇した不可思議な出来事を追った「贖罪の地」。天才スケート美少女を見守り続ける少年の淡い初恋を描いた「見守ることしかできなくて」。地球人の姿となって交番で働く宇宙人の姿を描いた「交番勤務の宇宙人」…。この作品内の物語は、どれも不可思議で現実にはありえないものばかりである。結末も決してハッピーなものばかりではない。予想外な結末、ブラックな結末にヒヤリとさせられる。だが、そんな7つの物語を読むたびに、今、生きる毎日に深みが増すように思える。現在自分が立っている場所を再認識できるような気がする。私たちがあり得ないことはわかっていても、「不思議な話」を求めてしまうのには、そういう理由があるのかもしれない。読めば読む程に「誉田版『世にも奇妙な物語』」ともいえるような作品に魅せられてしまうこと間違いないだろう。

 特に、表題の「あなたの本」は、読む者を思考の渦に迷わせる。主人公・辰男は、10歳の時、父親の書斎で、「あなたの本」という題名の本を見つけ、手にとる。その中にはなぜか、自分の今までの人生とその後の人生が書かれていた…。もし、そんな本をアナタが見つけたら、どうするだろうか。子どもの時は、「親が遊びで書いたもの」と思い込めば、済ませられるかもしれない。しかし、大人になった今、将来への不安が増していく今、その本に出会ったとしたらどうだろう? アナタは、未来を知りたいと思うのだろうか。

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