伊坂幸太郎と阿部和重の合作! 人生の”一発逆転”はできるのか?

ダ・ヴィンチニュース / 2015年1月9日 11時30分

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『キャプテンサンダーボルト』(阿部 和重、 伊坂 幸太郎/文藝春秋)

 「大人」という存在は、子供が生み出した幻想に過ぎないかもしれない。年を取るたびにそんな風に思ってしまうのは、自分が子供の頃憧れていた大人になれていないためだろうか。子供の頃の自分が今の自分を見たらどう思うのだろう。過去の自分に誇れる自分になりたい。誰もが悩み、苦しんでいるのではないか。

【画像あり】『キャプテンサンダーボルト』中面をチェック

 『キャプテンサンダーボルト』はそんな大人たちがあがき、一発逆転を目指していくエンターテインメント小説だ。『アヒルと鴨のコインロッカー』『ゴールデンスランバー』などの著作で名高い伊坂幸太郎氏と、『グランド・フィナーレ』で芥川賞を受賞した阿部和重氏という2人の大人気作家による合作である。現代を代表する人気作家が持てる全てを詰め込んだというこの1冊、読まない手はないだろう。

 主人公は、相葉時之と井ノ原悠。かつては少年野球のチームメイトであり、固い絆で結ばれていた2人だ。だが、成長するに従って行く道は別れ、高校時代のある事件をきっかけに、決定的に関係が壊れてしまっていた。しかし、それから12年後、2人はふとしたことをきっかけに再会し、それぞれの人生を賭けて、世界を揺るがす危険な謎に迫ることになる。気が付けば、しょぼくれた大人になっていた2人が挑むのは、東京大空襲の夜に東北の蔵王に墜落したB29の謎と、公開中止になった幻の映画の真実?!そして、彼らの行方を追ってくる残忍な男達の正体とは?父親の死の秘密を探ろうとしているという謎の女の存在も気になる。相場と井之原は、無事、謎を解き明かすことができるのだろうか。

 この物語は、登場人物すべてが個性的。相葉は、怪しい芸能事務所に騙されていた女性を救おうとしてなぜか自分が多額の借金を負うことになってしまった、正義感は強いのにも関わらず、何をやっても上手くいかないお調子者。一方で、井之原は真面目な性格の人間だ。原因不明のアレルギーに悩まされている4歳になる息子の治療費のため、莫大な医療費の工面に追われている。2人の共通点は、ともに青春を過ごしたということ、そして、金に困っているということしかない。2人は、別に能力が高いわけではない。なにができるというわけでない。持っているのは、運の強さと、友情の深さだけ。かっこよくないヒーローの活躍がここにある。

 彼らは人生を一発逆転できるのだろうか。幸せになることなどできるのだろうか。どこにでもいるようなつまらない大人を主人公にしているからこそ、自分もこうやって何かができるのではないかとワクワクさせてくれる1冊。

文=アサトー ミナミ

ダ・ヴィンチニュース

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