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郊外・ロードサイド立地で存在感増す「韓丼」がめざす「ファストカジュアル」とは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年1月14日 20時59分

韓丼の看板。メニューの肝である「熟成醤油生だれ」を開発した、創業者の夫人をキャラクターにしている

いま、郊外のロードサイドで「カルビ丼とスン豆腐専門店 韓丼」(以下、韓丼)というチェーンが活況を呈している。「カルビ丼」と「スンドゥブ」(同店では「スン豆腐」と表記)などをリーズナブルな価格で提供するファストカジュアルチェーンだ。同店を展開するのは、京都府京都市伏見区に本拠を置く、やる気(大島幸士社長)。2010年9月にオープンした1号店「新堀川本店」(京都府京都市)を皮切りに、現在はフランチャイズを主体に70店舗(直営は6店舗)まで拡大している。

韓丼の看板。メニューの肝である「熟成醤油生だれ」を開発した、創業者の夫人をキャラクターにしている

月商1700万円の店舗も!

 やる気の創業は1988年2月。創業者で現相談役の大島聖貴氏が個人事業として、京都・祇園に焼肉店を開業、京都市内を中心に「焼肉やる気」の屋号で焼肉店を次々と出店していく。やがて食べ放題の焼肉店が人気を博すようになると、同社も食べ放題の店舗を展開していくが、マーケットが飽和状態だったこともあって、新しい業態を検討することになった。

 新業態の開発にあたり、同社が重視したのが、焼肉を切り口とし、かつ若い人が気軽に食べられること。試行錯誤の末、創業者の夫人が開発したタレに自信があったことから、「さっちゃんのカルビ丼」という夫人の愛称を冠したメニューを看板商品とした新ブランド「韓丼」を2010年にオープンした。

 前述のとおり、「韓丼」では、カルビ丼に並んで「スン豆腐」を看板メニューに据えている。これには、男性客にカルビ丼、女性客にはスン豆腐をアピールすることで客層を広げるというねらいが込められている。また、「カルビ丼とスン豆腐の両方を食べたい」というニーズにも応え、スン豆腐と小サイズのカルビ丼がセットになったメニューも提供する。

「韓丼」のメニュー。丼物、スン豆腐、セットに大きく分かれている

 価格はカルビ丼が590円、スン豆腐が690円から、ミニサイズの丼とスン豆腐のセットが990円で、平均客単価は880円。40坪の店舗に40席を用意し、月商1700万円を稼ぐ店舗もある。

2016年からFC展開をスタート!

 転機となったのは、直営2号店の「北名古屋店」(愛知県北名古屋市)をオープンした2013年頃だ。

 同店の最大の目玉は、ジェットオーブンを初めて導入した点だ。1号店では、生の状態の素材を店内で焼いていたが、これではお客を長時間待たせてしまう。また、生焼けになってしまったり、焦げ付きが多くなってしまったりなど、クオリティが安定しないという課題もあった。ジェットオーブンを導入し、そこで素材を焼いたあとに炭火台でしっかりと焼き上げるオペレーションに変更することで、品質を保ちながら、提供時間を早めたのである。

 フランチャイズ展開を検討し始めたのもこの頃だという。フランチャイズ展開は2016年に開始し、現在は70店舗まで店数が増えている。300坪の敷地に店舗面積40坪、約20台の駐車スペースを標準とし、人員は社員が2人、パート・アルバイトが20~25人。投資額は居抜き出店で約3500~4000万円、新築で約6000万円だそうだ。ロイヤルティは3.5%で、食材は同社指定のものを使用する

 コロナ禍が本格化する2年ほど前からテイクアウト事業も行っており、コロナ期間中は需要が急増し、厳しい状況のなかで成長の原動力となった。

筆者が食べた「海鮮スン豆腐」と「さっちゃんのカルビ丼」(小)のセット

接客に代わる新たなホスピタリティ

 現在、社長を務める大島幸士氏は、創業家出身で現在30歳。大手小売業から転じて、2020年4月にやる気に入社した。社長に就任した大島幸士氏がまず取り組んだのが、情報システム部の立ち上げだ。これにより、テイクアウトが大きく効率化され、飛躍的な売上アップをもたらした。大島氏はこう語る。

 「韓丼がめざしているのは『ファストフード』ではなく、『ファストカジュアル』。ファストフードよりも提供時間はかかるが、キッチンにしっかりと投資し、シズル感あふれる専門性の高い商品を提供していくのが基本的な考え方だ。これは創業時から続く当社の理念でもあり、店のつくり方や提供方法は常にブラッシュアップしている」

 韓丼では、お客が券売機でチケットを購入すると、従業員は注文に従って調理を開始。商品ができあがるとベルで知らせる、フードコートに近いスタイルをとっている。直近の新店では、店内に配置したモニターで番号を表示してお客に知らせるようになっている。食事が終わると、お客自らが空いた食器を返却口まで持っていく。

新堀川本店の厨房と客席の様子。厨房は客席にせり出していて、奥の方に返却口を設けている
調理のシズル感やライブ感にこだわっているのが韓丼の特徴だ

 このように韓丼では従業員がお客に接する部分は少ない。一方で、店舗の中央にオープンキッチンを配置し、調理のライブ感やシズル感を大きくアピールしている。こうした試みは、接客に代わるホスピタリティの新しいかたちと言えるだろう。

 大島氏が唱える「ファストカジュアル」とは、「ファミリーレストラン」よりワンランク上の「カジュアルレストラン」のクオリティをファストフードのかたちで提供する業態を意味する。つまり、カジュアルレストランのクオリティと専門性を維持しつつも、サービスを簡略化して、低単価で提供するというわけだ。物価高騰の折、外食を利用するお客は専門性が高く、おいしい食事を求めている。今後もこうしたファストカジュアルの出店が増えていくであろう

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