インフレ時代、既存店をいかに高めるか? ライフ、ヤオコー、ビッグ・エーの共通項とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年1月30日 20時59分
2023年の食品小売は総じて好調でした。食品スーパー業界団体の統計を見ても既存店の前年クリアが続きましたが、その要因は、なんといっても一品単価の上昇でした。既存店の伸長は2024年も続くのでしょうか? それは客数・買上点数・一品単価のどれを伸ばすことで達成できそうなのでしょうか? 23年末の取材機会のうち、既存店の成長について聞けたライフコーポレーション岩崎高治社長、ヤオコー川野澄人社長、ビッグ・エー三浦弘社長の話には、ある共通項がありました。
ライフ岩崎社長「客数・買上点数は販促次第」
ライフコーポレーションの岩崎高治社長は、日本スーパーマーケット協会の会長という立場での年末会見で、一品単価の上昇は続くという見通しを示しました。原料調達に関わる値上げ圧力が弱まったとしても、人件費や物流費からくる値上げ圧力は変わらないからという理由です。
「世の中がインフレのマインドに移っている中で、一品単価の上昇は続くだろう」(岩崎社長)
インフレのマインド、もしくはモメンタム(勢い)といったものが、コロナ後の経済環境です。一品単価が上昇を続けるとしたら、23年のように客数や買上点数は落ちる傾向も続くのでしょうか? 岩崎社長はそうとも限らないといいます。
「23年の秋以降、ライフがそうであるように客数がプラスに転じる企業は増えている。そもそも客数・買上点数は販促次第のところがあり、企業が変えようと思えば変えられる。重要なことは、トータルの売上げ・利益を見ていくことだ」(岩崎社長)
客数・買上点数が販促次第であるのに対し、一品単価のコントロールは、企業努力ではどうにもならないところがある・・・・。これもインフレ環境で顕著になったことです。
以下に挙げるヤオコーとビッグ・エーの戦略も、突き詰めれば思うに任せない一品単価ではなく、客数・買上点数にフォーカスしようというものです。
ヤオコー川野社長「来店頻度を高める」
ヤオコーの川野澄人社長は、同社の商勢圏のうち、北部エリアは客層に占めるシニアの構成比が高く、客数も買上点数もさほど伸びていないといいます。
「北のエリアでは点数を確保する施策が必要。また、チラシへの感度が高い特徴もあるので、ハイ&ローによって集客を図る」(川野社長)
一方、南部エリアは数年来の取り組みであるEDLP(エブリデー・ロープライス)や、月1回の「豊洲祭り」「イタリアフェア」、その他催事での企画提案が集客につながっているといいます。
「普段は来店されていなくても、今日はハロウィンだから、クリスマスだからヤオコーに行こうというお客さまがいる。価格政策や、ファンづくりにつながるような独自商品を磨いていくことで、さらに来店頻度を高めていく」(川野社長)
24年3月期は既存店の客数・客単価とも大きく伸ばしているヤオコーですが、23年9月の商圏シェアは平均で19.9%です。「商圏シェアはまだ上げられる。だから前年のハードルは超えられないほど高いものではない」(川野社長)と、成長の余地を見出しています。
ビッグ・エー三浦社長「買上点数が上がれば、客数はついてくる」
ビッグ・エーの三浦弘社長は、既存店の伸長を続けるために、まずは買上点数の増加に取り組むといいます。
「買上点数が増えるのは、品揃えに関するお客さまの評価が上がっているという証だ。月1回のチラシでお客さまを呼び込み、買い物への満足が点数増に現れるようになれば、結果的に客数も増えていく」(三浦社長)
買上点数を増やすために、①品切れをなくす。②欠落品(他店の売れ筋なのに自店にはない)をなくす。③標準3000品の品揃えの中での編集力を高める。以上3点を徹底しているそうです。
客数が増えるのは、買上点数に示される顧客満足アップの結果という考え方に、インフレ時代の環境変化を感じました。低価格を打ち出して集客するという作戦の一本槍では限界があるということです。
ビッグ・エーの従来の価格戦略は、競合との比較で一律的な安さを志向し、「トップNB(ナショナルブランド)の価格を競合よりも低く、どこよりも安くしたいというDNAで戦っていた」(三浦社長)というものでした。しかし今の環境下、それは「企業として持続可能な価格戦略なのか?」(三浦社長)という疑問に変わったそうです。
先の3000品の編集力にも関わることですが、どの商品をどのような価格に設定すれば、安さを期待する顧客の満足度を最大化できて、店舗の利益も最大化できるかを探求しています。
「今までとは異なる視点で、仮説を立てては修正しながら、データ分析を続けている。科学的な根拠を掴みたい」(三浦社長)
デフレ環境においては、既存店の売上が伸びれば業績は改善しました。しかし、さまざまなコストが増加しているインフレ環境にあっては、既存店が伸びていればOKではなく、どのように伸ばしていくかを考えなければ収益がついてきません。
ここに挙げた3社に共通するのは、一品単価はままならないという前提です。一方で、客数・買上点数については能動的に取り組めます。それらをいかに伸ばして、既存店の売上げ・利益を高めていくか。インフレ時代の既存店戦略は、デフレ時代よりもいっそう複雑です。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
マックスバリュ東海、上期決算増収増益を支えるDX戦略とは?
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年11月14日 20時55分
-
減益SM相次ぐなか中間決算絶好調のヤオコー、増収増益記録更新に向け視界良好!
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年11月11日 20時59分
-
クラウドサーカスのファンマーケティングツール『Metabadge(メタバッジ)』、スーパーマーケット「ライフ」へ導入
PR TIMES / 2024年11月6日 20時15分
-
ライフ「BIO-RAL」 ナチュラルスーパー日本一へ 30年度目標400億円
食品新聞 / 2024年11月1日 13時46分
-
節約志向にどう対処するか? ライフ、イオン、セブンの施策とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年10月29日 20時54分
ランキング
-
1【独自】所得減税、富裕層の適用制限案 「103万円の壁」引き上げで
共同通信 / 2024年11月23日 18時57分
-
2昨年上回る規模の経済対策、石破色は一体どこに?【播摩卓士の経済コラム】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月23日 14時0分
-
3副業を探す人が知らない「看板広告」意外な儲け方 病院の看板広告をやけにみかける納得の理由
東洋経済オンライン / 2024年11月23日 19時0分
-
4《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン / 2024年11月23日 16時15分
-
5農協へコネ入社の元プー太郎が高知山奥「道の駅」で年商5億…地元へのふるさと納税額を600万→8億にできた訳
プレジデントオンライン / 2024年11月23日 10時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください