異国の魅力あふれる街、大阪・鶴橋 こだわりの店で焼肉を楽しむ
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年2月29日 20時59分
コロナ禍が落ち着き、久しぶりに海外旅行を検討している人も多いのではないだろうか。欧米、アジアはじめ、お気に入りの国を歩く姿を想像しながら立てる計画は楽しいものだ。しかしその前に思い出してほしい。日本にいながら異国を感じられる魅力的な場所があることを。今回は、大阪・鶴橋へ行き、焼肉を食べるというお話である。
韓国スイーツ「ホットク」を食す
「大阪」駅からJR大阪環状線外回りに乗って16分、降り立ったのはJR「鶴橋」駅。19ある環状線駅のうち乗降客数では「大阪駅」「天王寺」「京橋」に続いて第4位を誇るだけあって、活気を感じる。
他の駅にはない特徴もある。それは改札口を出ると、焼肉の香りが漂ってくることだ。ただ立っているだけで、食欲が刺激されるのは、ここ鶴橋だけである。
それもそのはず、「鶴橋」駅がある大阪市生野区は、日本最大のコリアタウンを抱える街。焼肉はじめ本格的な韓国料理を楽しめる店がそこかしこに密集しており、香りの理由も理解できる。さらに独特の文化、雰囲気も魅力で、食通のみならず旅行客、韓流ファンなど様々な人を惹きつけている。
早速、散策する。まずは駅から直接、アーケードでつながる「鶴橋商店街」から。
ネオンの独特な色使い、店頭に並ぶ多様なチヂミ、加工された見慣れぬ魚介類、飛び交うハングル語──。どこを向いても初めて見る光景は刺激的だ。
立ち止まって店を覗き込むと声をかけられる。「おいしいよ。お兄さん、いかが」。興味を持って質問すると、丁寧に教えてくれる。いつもは母国語を使っているのか、たどたどしい日本語を話す店員もいて、これがまたよい。
何か食べてみようと歩くうち、「ホットク」というお菓子を販売する店を見つけた。韓国で食べられる屋台スイーツのようだ。味は「黒砂糖ナッツ」と「クリームチーズ」の2種類。オススメを聞くと、「黒砂糖ナッツが一般的です」と教えてくれた。現金を手渡し、その場で頬張ると素朴で、どこか懐かしい味がした。
店にはベテラン風の2人に加え、20代と思しき1人、計3人の店員が働いている。いずれも女性だ。年季が入った店構えに興味を持ち、「長く商売されているのですか」と聞くと、アッケラカンと「先月から」との答えで拍子抜けする。
自分の経験や勘がまるで通用しないところ込みで面白い。
おいしい焼肉に大満足
鶴橋に来たら、食べたいのは焼肉。駅周辺にも数多くあるが、せっかくなら少し変わった系統の店はないものか。そう考え、調べるうち興味を持ったのが「小川亭 とらちゃん」である。
公式サイトを見ると、「創業1979年 肉に妥協せず ひたむきに」と記してある。さらに「シェフの目利きで、その時の新鮮で上質なものを厳選して仕入れております」などの文言から、“熱い”思いが伝わってくる。
駅から歩いて数分で到着。見上げると看板には屋号とともに「ブランドの誇り」とのキャッチコピーが書かれてある。いちいち“熱い”ところが興味深い。それにしても、焼肉店で「ブランド」という言葉を使うとは珍しい。
入店する。昼時だったが比較的空いており、すぐに座ることができた。メニューを開くと、いくつかの「ランチセットメニュー」が載っている。「楓」「桜」「椿」の3種類のうち、2500円の「椿」を選択、スタッフのお姉さんに注文した。
店内を観察すると、落ち着いた内装で高級感がある。奥に座っている女性2人はマダム風で、身なりも小綺麗な様子。
そうこうするうちに私の目の前に届けられたのがこれ。タン塩、クラシタロース(ロースの肩に近い部位)、ミノの組み合わせで合計200g。どうです、おいしそうでしょう。
すでにアツアツになっている網に、クラシタロース、タン塩×2、ミノ、さらに野菜を乗せる。これらを、じっくりと育てるように焼く。たまに長細いトングを使い、意味なく表面を押さえたり、端をめくってみたり。
そうするうちにクラシタロースが完成、好みの“ウェルダン”に仕上がる。箸でそっと持ち上げ、タレにつけ口へ。もう最高である。続けて、ごはんを食べたが、これが止まらない。落ち着いたところでタン塩、続けてミノも。風味もよく、完全にノックアウトである。
夢中になって食べ、そして完食。ごちそうさまでした。座席の背にもたれ、しばし幸せの時間を味わう。
しばらくして入口すぐのレジでお勘定を済ませる。カードで決済中、ふと横を見ると、誰かのサインが飾ってある。近づくと、2022年7月、凶弾に倒れたあの元首相のものだった。店員の女性に教えてもらい、数年前に来店されたことを知る。一国のトップが訪れるとは驚きだ。
店を出た後、Webサイトにあった文言や、看板にあった「ブランドの誇り」といった表現を思い出していた。何事も自分の方向性を明確にして言葉にすることは、「差別化」に有効なのかも知れない、そんなことを考えながら歩いていた。
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