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本多利範氏が語る、ディスカウントストア開発の成否を分ける2つの要素

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年3月3日 20時59分

primeimages/iStock

各種商品の値上げが続くなか、ディスカウントストアの注目度が高まっている。そのなか、新フォーマットとしてディスカウントストア開発に挑戦する小売企業も相次ぐ。本多コンサルティング(東京都)の本多利範氏は「もともと社会的ニーズの高い業態だが、日本市場に合った特徴を工夫すれば、大きな流通の勢力になる可能性がある」と持論を展開する。
本稿は連載「教えて本多利範さん!」の第2回です。

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依然として影響力持つ問屋

 さまざまな商品の値上げが続いている。一方、コロナ禍の影響、また景気の不透明感のなか、収入減に苦しむ家庭は多い。ここ数年、生活保護世帯数がじわり拡大していることでもわかる。

 生活に困っている人が増えているわけだが、厳しい状況を背景に注目されているのがディスカウントストア業態だ。生活必需品をはじめ、日々、安い値段で買物ができる店は、多くの生活者にとっても頼もしい存在であるのは間違いない。

 イオン(千葉県)グループやヤオコー(埼玉県)をはじめ、“次世代の乗り物”としてディスカウントストア開発に取り組む有力小売企業が増えている。とはいえ動きはまだ始まったところで、各社とも手探りの状態にあるのが現状だ。

 新しい業態としてディスカウントストアに挑戦するにあたっては、念頭に置かねばならないポイントがある。

 ひとつは「安い商品を求めるのは、お金がない人」と決めつけるのは間違いということだ。比較的高所得者であってもディスカウントストアを利用する。自分が本当に欲しい商品には金に糸目をつけず買物をする反面、こだわりのないモノについてはできるだけ安い店で済ますと考える人も少なくない。つまり買い方が多様化しているのだ。

 次に、日本では独自の流通が発達してきた点にも注意すべきである。具体的には、「問屋制度」という複雑な仕組みのなかに、食品ビジネスが置かれているのだ。

 一般に食品のディスカウントストアは、中間流通を通さずに成立してきた業態と言える。しかし現在の卸売企業は、デリカ商品の開発力もあり、今も大きな影響を持ち続けている。日本の食品流通はグルーバルな視点からすれば異質である。

 こうした複雑な取引制度のなかで、小売企業は独自のフォーマットをいかに組み立てるか。価格だけでなく、地域性といった要素も視野に入れる必要がある。

  さまざまな側面を考慮すると、新たな業態としてディスカウントストアを確立することは決して簡単ではない。しかし社会的には顧客ニーズの高い業態であるのは確かだ。知恵を出せば、大きな流通の勢力になりえる可能性を持っているのは間違いない。

独自の進化を遂げるDgS

 新たにディスカウントストア業態を構築するにあたっては、今、挙げた点を意識した上で、さらに成否を分ける要素が2つあると私は考える。

 1つ目は、小商圏だ。

 人々のライフスタイル、消費行動、心理といった要素は外すことはできない。現代人は忙しく、できるだけ近くの店で効率的に買物を済ませたいというニーズは高まっている。これまで1週間に7店の食品スーパーを買い回っていた人も、3店で済ませているという話も聞く。

 同時に高齢化も進行している。肉体が衰えると、遠くに買物へ出かけるのも億劫になるものだ。こうしたなか、小売業が定期的に来店してもらうには小商圏を前提にした品揃え、店づくりは必須条件になる。

 2つ目は、ディスカウントストア向けプライベートブランド(PB)商品の開発である。

 イオンには「トップバリュベストプライス」がある。しかしほかのディスカウントストアに目を向けると、ディスカウントストア向けのPBはほとんどない。前述の小商圏ビジネスのなかでは、ナショナルブランド(NB)だけの戦いでは集客することには限界がある。ましてインターネットで買物する生活者が多い時代にあっては「アマゾン」や「楽天市場」にとられてしまう。小売業が自社の特徴を打ち出し、差別化を図るためには、PBを持つことは重要だと思う。

 この2点を踏まえた店はないかを考えると、「業務スーパー」は面白く、競争力があると感じる。店はコンパクトで小商圏に対応しているし、独自開発商品に加えて珍しい輸入品もあり、いずれもPBに近い。

 日本ではドラッグストア(DgS)も独自の進化を遂げている。北陸には小規模な店で、生鮮を含む食品を積極的扱う企業も出て来ている。食品の売上高構成比は50%を大きく超えており、ディスカウント型スーパーマーケットという見方もできる。

 いずれにせよディスカウントストア業態がこれからどのように変化していくのか。私は日本型のユニークなフォーマットが登場することを期待している。

本多利範さんの書籍「お客さまの喜びと働く喜びを両立する商売の基本」

商売の基本_書影本多 利範 著
定価:1650円(本体1500円+税10%)
発行年月:2022年03月
ページ数:276
ISBN:9784478090787

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