「レジなし」小売を目ざす、ウォルマートの取り組み

DIGIDAY[日本版] / 2018年7月26日 6時50分

ウォルマートがレジの自動化分野のテストを進めている。当初、買い物客がアプリで商品をスキャンして支払いできるようにしていたが、現在は、店員がモバイルデバイスで買い物客の支払いを手伝えるようにしている。

また、支払いの自動化に対する買い物客の満足度レベルの調査も進めている。ウォルマートのラガン・ディケンズ氏によると、現時点では、レジ係をなくすというところまでには至っていない。買い物客が選択できる精算のメニューを拡大し、レジ係はその一部を担っていくことになるという。

ふたつのテストモデル

完全に自動化した店舗を計画しているのかという質問について、ディケンズ氏はコメントしなかったが、ウォルマートはこの2カ月、「Check out with Me(精算は私のところで)」と名付けたAppleストア風のコンセプトを350店で実施している。これは、店員がモバイルデバイスで買い物客の支払いを受けつけられるようにしたものだ。取引が完了すると、メールかテキストメッセージで買い物客にデジタルレシートが届く。ディケンズ氏によると、初期の結果は上々で、さらに多くの店舗に展開する計画だという。

ウォルマートは従来の小売りとデジタル小売りの体験を結びつけるこうした実験によって、伝統ある大手小売りの同社が長年培った実店舗でのプレゼンスとテクノロジーのイノベーションの力を組み合わせようとしている。ハイブリッドモデルならば、テクノロジーに対する安心感がさまざまな幅広い買い物客のニーズにフィットするかもしれない。ウォルマートが従来のレジセンターへの依存度を下げようとテストしているモデルは主にふたつ。ひとつはスキャンアンドゴーで、買い物客はアプリをダウンロードするか、店舗に用意されたモバイルデバイスを使うかして商品を自分でスキャンする必要がある。もうひとつはAppleストアに似たモデル。これは、店舗内を移動する従業員がレジ係を担えるようにするもので、店員がモバイルデバイスを片手に買い物客の精算を完了させる。

大手小売業者は現在、従来のようなレジ係がいらない実店舗のショッピング体験を追求している。先頭を走るのはもちろんAmazonだ。2018年秋にはレジ係がいないAmazon Goの2号店をシアトルに開店する予定で、同様の店舗をシカゴとサンフランシスコにも開く計画だ。ウォルマートは、2013年にアプリを使ったセルフスキャンの第1弾を公開し、以来、レジの自動化に取り組んでいる。自動化を求める人から、スタッフに話をすることが必要だと感じる人まで、さまざまな買い物客に満足してもらえる実店舗の小売環境をウォルマートは目指しているという。

スキャンアンドゴーの試み

ウォルマートはこれまでにスキャンアンドゴーを2度試みたが、利用の少なさとプロセスに対する顧客満足度の低さを理由にやめている。最初の試みは2013年に70店舗で開始したトライアル。アプリを使って商品をスキャンし、ショッピングの最後に、生成されるQRコードをセルフレジセンターでスキャンして支払うというものだった。第2弾は2017年8月に120店舗で開始し、この2018年1月にさらに120店舗を追加した。支払いはアプリ内で行い、レジセンターは完全に必要ないというものだ。ただ、追加チェックとして、店を出る前に購入した証明を店員に見せる必要があり、同社によるとこのステップに満足しない買い物客が多かった。第2弾はこの4月に終了した。

「袋に入れていない商品をカゴに入れた状態で、ドアのところでレシートをチェックされるのに買い物客が慣れなかったのが摩擦になった」と、ディケンズ氏は語る。

しかし、ディケンズ氏によると、ウォルマート傘下の会員制スーパーマーケット、サムズ・クラブ(Sam’s Club)では、店を出る前にレシートをチェックされるのに買い物客が慣れて、スキャンアンドゴーをまだ提供している。一方、ウォルマート店舗へのスキャンアンドゴーの再導入は急いでいない。現在は、テストで得られた知見を活用した改善に取り組んでおり、いつになるかはわからないが、今後、別のサービスの展開を検討しているという。

競合他社のトライアル

ほかの小売業者もスキャンアンドゴーの技術のテストを進めている。クローガー(Kroger)は、1月に発表したスキャンアンドゴーのサービス(名称は「Scan, Bag, Go」)を、現在も400店舗で実施している。英国の小売業者であるテスコ(Tesco)も、同様のシステムをテストしていると伝えられている。これに対し、ターゲット(Target)やホーム・デポ(Home Depot)は自動レジ機の効率化に投資している。またホーム・デポは、オンラインで購入した支払い済みの商品を受け取れるロッカーの設置を進めている。

小売テクノロジーのスタートアップに投資するミネアポリス拠点のベンチャーキャピタル、ループ・ベンチャーズ(Loup Ventures)のマネージングディレクター、アンドリュー・マーフィー氏は、セルフスキャンは、時間が取られるという点で不完全なソリューションであり、完全にデジタル化された迅速なショッピング体験を求めている買い物客は、労力が大きいと思うのかもしれないと語る。

「スキャンアンドゴーは精算の完全な自動化への足掛かりにすぎない」と、マーフィー氏。「たとえば、商品を手作業でひとつずつスキャンする必要がある点がまだ不格好だ。将来的には、買い物カゴが中身を自動で認識してくれるようになるだろう」と、同氏は語った。

技術と売上のバランス

Amazonの「ジャストウォークアウト(Just Walk Out)」技術の場合、入店時にAmazonアプリを開いてスキャンすると、欲しい商品を手に取ることで自動的に課金されていく。ただ、この「やってきて、出ていく」だけのスピーディな精算システムは、買い物客からすると魅力的だが、小売業者の恩恵ははっきりしない。というのも、リサーチ会社のフォレスター(Forrester)のアナリスト、スチャリタ・コダリ氏によると、トランザクションが簡単になるほど取引額が小さくなるのが普通なのだ。同氏によると、決済が簡単になることで来店が増えるかもしれないが、この点はまだ裏付けのエビデンスが乏しい。それに、Amazon Goのようなテクノロジーは極めて高価だ。

「製品コストは小売業者と顧客の双方にもたらされる価値が見合ったものである必要があるが、資本的支出は1店舗あたりおそらく数百万ドル(数億円)になるだろう」と、コダリ氏。

コダリ氏によると、この技術を拡大していくためには、価格を1店舗あたり約10万ドル(約1000万円)に下げる必要があり、また、アプリや堅牢な窃盗防止策が必要だという課題を解決する必要がある。

加えて、まだ証明されていないことがある。「(テクノロジーは)興味深いが、実際には高価で扱いが難しく、2000平方フィート(約190平方メートル)あるAmazonの店舗以外でうまく行くのかはまだ証明されていない」と、コダリ氏は語った。

Suman Bhattacharyya (原文 / 訳:ガリレオ)

 

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