停滞は死を招く、NYの老舗名門デパート「没落」の道程:創業120年のヘンリ・ベンデルが閉店

DIGIDAY[日本版] / 2018年10月15日 11時50分

20世紀初頭、ヘンリ・ベンデル(Henri Bendel)は世界有数の先進的な考え方をする高級デパートだった。

時代は変わった。顧客のマインドセットの変化、内部の停滞、差別化の欠如により、このニューヨークを象徴する高級デパートは完全に閉店することになった。

ヘンリ・ベンデルは最初の数十年、新しい境地を開拓していった。小売店としてはじめて店内でメイクを提供し、小売店としてはじめて店内でファッションショーを開催した。

120年におよぶ営業の最初の数十年で、ヘンリ・ベンデルは高級小売店のあるべき基準を確立した。象徴的な包装、顧客サービスへの注力、活発な若い人材の採用(若きアンディ・ウォーホル)などが相まって、初期の成功につながった。

しかし、ヘンリ・ベンデルが最初の店舗をニューヨーク市に開店したころから、小売の世界は変化した。1895年創業のヘンリ・ベンデルは1980年代に、ビクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)やバス&ボディー・ワークス(Bath & Body Works)といったブランドを所有するLブランズ(L Brands)に買収された。そして現在、LブランズがCNN Moneyに送った文書によると、親会社が「会社の収益性を改善し、成長の潜在力で上回るより大きなブランドに注力する」ことができるように、完全な閉店を進めている。この記事のためにLブランズにコメントを求めたが、反応はなかった。

ディスラプションの犠牲者

ヘンリ・ベンデルは、現在、大規模に進んでいる小売における破壊的な変化の新たな犠牲者のようだ。売上の減少とeコマースプラットフォームとの厳しい競争に直面し、部分的あるいは全面的に閉店を余儀なくされた小売業者はほかにもたくさんある。

Lブランズの2017年の収益約120億ドル(約1.3兆円)のうち、ヘンリ・ベンデルは全店でわずか8500万ドル(約97億円)であり、この2018年は運転経費で4500万ドル(約51億円)もの赤字になった。ヘンリ・ベンデルは少なくともこの2年間、赤字経営が続いている。

Lブランズは、かつての名門小売店のアイデンティティを見つけようと奮闘したが、従来型店舗の方面ではバーグドルフ・グッドマン(Bergdorf Goodman)やサックス・フィフス・アベニュー(Saks Fifth Avenue)などの競合他店に大きな差をつけられ、ネッタポルテ(NET-A-PORTER)のようなファッションのデジタル小売にも大きく負けた。同じく古いブランドが時代にあわせて変化し適応するなか、残念ながら、ヘンリ・ベンデルはそれが十分に迅速にはできなかった。

「こうした古めのブランドの多くが、この問題を抱えている」と語るのは、消費経済について助言するルーズ・スレッズ(Loose Threads)の創業者で主任アナリストのリッチー・シーゲル氏だ。「そうしたブランドの現代版とはどういうことなのか。ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)などのブランドはクールな現代的なものを何でも進めている。動きは遅いかもしれないが動いてはいる。これに対し、ヘンリは最初から一貫してビジネスモデルがほとんど同じだ。変化が足りなかった」と同氏は語った。

ヘンリ・ベンデルの過ち

変化はあった。近年だと、2009年にアパレルの販売を停止してブランド物のハンドバッグとアクセサリーに注力したが、来るべきものを回避するにはそれでは足りなかった。

シーゲル氏によると、ヘンリ・ベンデルが犯した大きな間違いがもうひとつある。それは、過剰すぎる拡大だ。

ヘンリ・ベンデルは何十年間も、5番街のデパート1店だけの時代が続いた。運営しやすい小さな規模を維持しながら、ニューヨークを象徴する場所としてアイデンティティを築いていった。1985年にLブランズに買収されると、この哲学が変わってしまった。それから数十年で、1カ所のブランドから20カ所を超えるブランドへと拡大した。最終的には23の店舗を運営し、出生地であるニューヨーク市以外にも店を展開した。

「小売業の全般的なブームのなかでの出来事だった」と、シーゲル氏は語る。「成長という考え方を身につけた。製品の差別化には問題を抱えていた。ショップインショップに力を入れたが、その後、インターネットが登場して何もかも混乱させた」。

この終焉が物語るもの

ヘンリ・ベンデルの製品は次第に曖昧になっていった。グッチやルイ・ヴィトンのような高級ブランドに比べると、それほど華やかではなく名声もなかった。そして、H&Mやザラ(Zara)のようなファストファッションの小売店と競争するには値段が高すぎた。

ヘンリ・ベンデルは、曖昧な中間領域に位置し、ケイト・スペード(Kate Spade)のような比較対象となるアクセサリーブランドと差別化するものがほとんどなかった。売上げがゆっくりと、しかし確実に失われていく創業123年の小売店をどうすればいいのか、Lブランズはアイデアをまったく持ち合わせていなかったようだ。

ヘンリ・ベンデルは、Lブランズからの売却を試みられることもないまま、まもなく完全に息を引き取るだろう。この終焉は、同じような小売業者ばかりでなく、そのオーナーたちにも強力なメッセージになるはずだ。停滞は死を招く。そして、明確なアイデンティティがないブランドは道を譲る運命にある。

危険信号が灯るLブランズ

Lブランズは、残りのブランドが同じことにならないように気を配る必要がある。特にビクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)は危ない。同社の旗艦ブランドだが、この2年間、店舗売上が10%減少するなど、このところ売上不振が続いている。

「前向きな角度で言えば、うまくいっていないものを取り除いているということになる」と、シーゲル氏は語る。「しかし、すべてのブランドをその方法で経営するのなら、それは会社全体への危険信号だ」。

Danny Parisi (原文 / 訳:ガリレオ)

 

digiday_jp

トピックスRSS

ランキング