Amazonが配送・流通サービスを拡大中:その真意とは

DIGIDAY[日本版] / 2019年4月19日 11時50分

Amazonの次なる一手は、リテイラーにとっての配送・流通プロバイダーとなり、サードパーティ配送業者の直接的な競合となることだ。セラーにとって、これは自分たちの商品を素早く効率的に顧客に届けるための新たな選択肢であり、Amazonにとって、これは自社のフルフィルメントサービスの提供によって支払われる報酬とは別の収入源となる。

2019年4月初頭の報告によれば、Amazonはニューヨーク、ロサンゼルス、そしてシカゴの地域で、Amazon自社が運営する配送の選択肢をセラー側に与えているという。これは「Amazonシッピング(Amazon Shipping)」と呼ばれ、商品がフルフィルメントセンターを経由せず、セラーの倉庫から直接顧客のもとに届けられる。このことで、Amazonは現在のマルチチャンネル・フルフィルメントを上回る配送能力を得ることになる。マルチチャンネル・フルフィルメントとは、マーチャントが商品をAmazonのフルフィルメントセンターから配送できるようにしたサービスだ。さらに、これはAmazonが自前の流通サービスを立ち上げるうえでのさらなる一歩となるだろう。このサービスによって、セラー側のUPSやフェデックス(FedEx)などのサードパーティ配送会社への依存度を減らすことにもなると思われる。

Amazonの広報は、この報告を正しいと認めることも、否定することもしなかったが、Amazonは、顧客に素早く商品を届けるための手段を常に模索している、と語った。

セラーたちの見方

セラーたちはこのニュースを注意深く見守っている。ライズ・ブリューイング(Rise Brewing)の広報担当、ライアン・ウイリアムズ氏は、これを興味深い選択肢だと語る。ライズ・ブリューイングは、Amazon内店舗からの注文に対してはAmazonのマルチチャンネル・フルフィルメントのサービスを利用し(Amazonの倉庫から出荷される)、Amazon内の店舗以外からの注文に対してはフェデックスを利用している。彼はこの両方のやり方には満足しているとのことだが、Amazon側が直接顧客に配送することで、梱包パッケージをパーソナライズできる機会が増える可能性がある。彼は、すべての注文を自分たち自身で対応することで、セラーにとってより大きなインパクトをもたらすのではないか、と語る。

「手続きはシンプルになればなるほど良い」と、ウィリアムズ氏は言う。

Amazon自身の配送能力がさらに強固なものになれば、サードパーティ配送業者への依存も少なくなり、体験をより幅広くコントロールできるようになる。さらに、サードパーティ配送業者を使って問題に直面したことのあるセラーにとっては、悩みの種を取り除くことができる。Amazonのエージェンシーであるボブスレッド・マーケティング(Bobsled Marketing)でCEOを務めるキリ・マスターズ氏は、Amazonでのセラーでもあるが、彼によると、サードパーティ配送業者に頼っているセラーにとって、注文に関わる一連の業務の効率が上がるのは良いことだと語る。その理由は、現在は問題が発生した時に、原因がどこにあるかがはっきりしないことがあるからだ。

「私の会社では、在庫品をAmazonのFBA倉庫に送るときには、セラーセントラルのUPSの割引プログラムを利用している。UPSは私たちの商品の梱包箱を受け取り、配送ラベルを貼り付けるのだが、(ときには)そのラベルが剥がれてしまっていたり、Amazonが受け取る梱包箱のラベルが正しく貼られていなかったりすることもあった」と、キリ氏は語る。「これは、中間業者がいる場合には対処を余儀なくされる問題だ」。

流通セービス拡大の狙い

Amazonが現在の配送ビジネスを拡大するかどうかにかかわらず、これは流通サービスの能力を育成するうえでの長期的な戦略の一部だ。2018年12月、Amazonは自社保有の空輸機を50機増やしている。また、いくつかの地域で空輸拠点を立ち上げたが、これにはシンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港に建設中の15億ドル(約1669億円)規模の拠点も含まれ、2021年には開業予定だ。これは、Amazonがリテールやクラウドビジネスとは別に収入を得るための手段のひとつだと、ガートナーL2(Gartner L2)でシニアプリンシパルを務めるオーエイズ・カージ氏は語る。

「Amazonの2018年の4半期ごとの業績を見てみると、特にリテール部門での成長にはかげりが見え始めている」と、彼は語る。「企業全体としては、広告ビジネスで再起を狙う途中段階のようにも見えるし、AWSの見直しにも取り組んでいる。配送ネットワークに関して言えば、Amazonがプライム会員以外の顧客からもマネタイズを始めることは、理にかなったことだと思う」。

流通ネットワークの拡大を長期的な目線で見ると、配送はAmazonにとってまだ未開拓の部分だ。コンサルタント企業のシップマトリクス(Shipmatrix)による、データを引用した最近の報告書によると、Amazonは現在、配送トラフィックの10%を自社で担っているという。一方、Amazonのトラフィックの62%をUSPSが、21%から26%をUPSが、そして8%から10%をフェデックスが担っている。自社で運営する配送サービスは、Amazonのエコシステムの外でサービスを提供する企業にとって、スケール拡大の可能性が与えられることになる。

「これはAmazonのAWSクラウド(AWS Cloud)とよく似ている。Amazon自身のために利用されるよりも、はるかにメリットが大きくなる可能性があり、そのほかのリテイラーやブランドも、Amazonのインフラを活用することで、素早く2日間で配送を終わらせることができるかも知れない」と、eコマースの調査機関であるマーケットプレース・パルス(Marketplace Pulse)のCEO、ジョーザス・カジューケナス氏は語った。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:Conyac)

 

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