Snapchat コンテンツを次々に増やす、 ESPN の狙いは?

DIGIDAY[日本版] / 2019年6月18日 16時50分

スポーツパブリッシャーのESPNが、Snapchat(スナップチャット)での取り組みを拡大している。3月には、「ESPN MMAショー(ESPN MMA Show)」という週1回配信の番組を新たに追加した。この新番組は、総合格闘技番組の拡大を目指した戦略の一環だ。同社はすでに、「スポーツセンター(SportsCenter)」「ESPNデイリー(ESPN Daily)」「カレッジゲームデイ(College GameDay)」といった番組をSnapchatで配信している。

ESPNがSnapchatにますます入れ込む一方、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)やブリーチャー・レポート(Bleacher Report)といったパブリッシャーは、Snapchatでの番組配信を停止している。だがESPNにとって、Snapchat向け番組の制作は、すでにスポーツファンが存在する場所で、彼らにリーチするという同社のデジタル戦略に一致した動きだ。また、視聴者をテレビ番組やストリーミングサービス「ESPN+」のコンテンツに誘導して収益を上げるのに、Snapchatが効果的であることがすでに証明されている。

「我々は、あらゆる場所でスポーツファンを盛り上げるという全体的な戦略を掲げている。他社のことはわからないが、我々にとって(Snapchatは)きわめてエキサイティングで満足できる場所であり、オーディエンスに大きな共感をもたらしてきたと考えている。また、配信ペースや各番組や各シーンのスピード感はもちろん、グラフィックスの面でも、我々は以前よりスマートに取り組めるようになった」と、ESPNでデジタルおよびソーシャル担当SVPを務めるライアン・スプーン氏はいう。

ESPNのSnapchat戦略

ESPNはSnapchatの「ディスカバー(Discover)」のローンチパートナーだった。そして、この4年間でディスカバーにおける戦略を変更し、自社の記事にただリンクするだけでなく、Snapchatに適した、よりテレビ風のコンテンツを制作するようになった。2016年には、当時毎日配信していた番組(2018年のカレッジフットボールシーズンでは週1回配信)に加え、週1回放映のテレビ番組「カレッジゲームデイ」のSnapchat版を開始。2017年には、テキスト情報が中心だったチャンネルを1日2回配信の「スポーツセンター」に衣替えした。2018年になると、平日午後配信の「ESPNデイリー」を追加し、「スポーツセンター」を午前のみの配信に変更。2019年に入ったいま、「MMAショー」の配信を開始した。現在、この番組は9つのエピソードが公開されている。

オーディエンスの規模は番組によって異なる。朝の番組となった「スポーツセンター」は、数百万の定期オーディエンスを生み出している。ESPNの広報担当者によれば、2018年の第4四半期には、60%を超えるオーディエンスが週に3回以上この番組を見ていたという。また、「ESPNデイリー」も毎週数百万のオーディエンスを抱え、その50%近くが週に3回以上、この番組を見ている。フットボールシーズンにのみ週1回配信される「カレッジゲームデイ」も、毎週数百万のオーディエンスを抱えているという。新しい「MMAショー」については、広報担当者は具体的な数値を明かさなかったが、オーディエンス数もエンゲージメントも拡大しているそうだ。全体的に見ると、ESPNのSnapchatユーザーは65%以上が24歳以下、90%以上が35歳以下となっている。

ESPNがSnapchatで配信している4つの番組は、それぞれ独自のトピックを扱っており、アンカーを務めるパーソナリティも異なっている。だが、ESPNのコンテンツチームは、さまざまな番組やプラットフォームを横断する形で仕事をし、プロデューサーのチームも、ESPN内で横断的に動画の制作に取り組んでいる。広報担当者はチームの人数についてコメントするのを拒否したが、チームの規模は大きく、Snapchatではじめて「スポーツセンター」を配信して以来、拡大を続けているという。

新番組「MMAショー」の中身

ESPNが制作面で学んだことのひとつは、オーディエンスはレポーターがスタジオから試合の結果をダイジェストで伝えるだけでなく、外に出て取材することを望んでいるということだ。新しいMMAの番組ではこの方式が採用されている。

新番組の「MMAショー」では、最近の試合のダイジェストだけでなく、今後の試合の予想も伝えている。ESPNのアンカーであるモリー・カーリム氏が司会を務めるなか、MMAの元選手でESPNのコメンテーターを務めるアリエル・ヘルワニ氏とチェール・ソネン氏が、今後の試合について議論している。また、ESPNの解説者ブレット・オカモト氏もこの番組に参加している。

「(MMA関係の)コンテンツを拡大するという大きな目標を掲げるなか、オーディエンスに合わせた番組を作ることが重要だと考えている。我々はこれまで、さまざまな経験を通じて取材範囲を広げ、分析を強化し、映像を増やしてきた。スナップ(Snap)での自分たちの取り組みを、我々は大いに誇りに思っている。いまはあらゆる場所で(MMAの)オーディエンスを増やすべく、懸命に取り組んでいるところだ」と、スプーン氏は語った。

今回の新番組に加え、ESPNはインスタグラム(Instagram)でMMAの番組向けの新しいアカウントを開設した。スプーン氏によれば、このアカウントはフォロワー数が23万1000人で、「スポーツセンター」の1400万人やESPN本体の1280万人に比べてはるかに少ないものの、すべてのアカウントのなかでもっともインタラクション率が高いという。MMAアカウントのインスタグラムストーリーも、視聴完了率が平均で80%を超えている。

Snapchatでのマネタイズ

Snapchatで収益を上げるため、ESPNは各番組で広告を販売している。そのなかには、「スナップチャットコマーシャルズ(Snapchat Commercials)」と呼ばれるスキップできない広告もある。こうした取り組みが利益をもたらしているかどうかについて、広報担当者はコメントを拒否したが、その利用度や収益性は高いという。

また、ESPNはSnapchatの番組を利用して、テレビネットワークやOTTサービスの「ESPN+」にオーディエンスを誘導している。たとえば、「MMAショー」の最近のエピソードでは、ニューヨーク州ロチェスターで開催されるUFC主催の試合を予想したうえで、番組で取り上げた全試合が「ESPN+」で中継されるとアンカーのモリー・カーリム氏が伝えた。

「何よりもまず、我々の一大イベントに人々が関わってほしいと考えている。今夜開かれる大会を見てもらいたいのだ。来るべき大会について伝えるために、我々はテレビやソーシャルでさまざまな取り組みを行い、人々が話題にして楽しんでくれたと期待しているが、いまは彼らに大会を見てほしい。テレビからソーシャル、そしてアプリまであらゆる画面を活用することが、こうした取り組みを行うのにもっとも効果的で適切な方法だと我々は考えている」と、スプーン氏は語った。

Kerry Flynn(原文 / 訳:ガリレオ)

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