「テック企業」化する、ウォールマートのデジタル改革:専門部署はいまや6000人超

DIGIDAY[日本版] / 2019年6月14日 8時50分

米小売大手のウォルマート(Walmart)は、Amazonに立ち向かうべく、テクノロジー事業の拡大に取り組んできた。そんななか、担当幹部の役割に対する同社の考え方も変わってきた。いまや同社は、eコマースとテックの両チームをまったくの別ものと考えるのではなく、社内の複数箇所に及ぶ、もっと大きな責任をトップに与えるようになったのだ。

ウォルマートがテック部門の増設に取りかかったのは2011年、ソーシャルメディア分析会社コズミックス(Kosmix)を買収したときだった。ウォルマートはコズミックスに残ったスタッフで「ウォルマートラボ(Walmart Labs)」の増設に着手、同部署はウォルマートのテクノロジー部門としてブランディングされた。以降、ウォルマートはラボの人員を継続的に増やしてきた。近いところでは昨年も、同部署による「グロッサリーピックアップ」サービスへの取り組みを強化するために、大幅な増員を行なった。ウォルマートはラボの従業員数を明らかにしなかったが、昨年のこの時期にフルタイムとパートタイムを合わせて約6000人のスタッフを雇用しており、年末までにさらに2000人を雇い入れる計画を立てていた。

だが、ウォルマートにとって、もっとも重要なテックイニシアチブの拡大に取り組んでいるのは、もはやウォルマートラボの従業員だけではなくなっている。ウォルマートのアメリカ国内のeコマース事業は、マーク・ロア氏が指揮をとっている。同氏はウォルマートが2016年に買収したeコマースサイト、ジェット・ドット・コム(Jet.com)の共同創業者だ。ウォルマートは今年4月、アドテクスタートアップのポリモーフラボ(Polymorph Labs)を買収し、広告事業への進出に必要なテック系の人材を獲得すると発表した。

新CTOのスレシュ・クマール氏

5月下旬、ウォルマートは新CTO(最高技術責任者)にスレシュ・クマール氏を任命した。同氏はかつてAmazonでワールドワイド・リテール・システム部門のバイスプレジデントを務めた人物だ。近いところでは、Googleでディスプレイ、動画、アプリ広告&アナリティクス部門のバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーも務めた。クマール氏は前CTOのジェレミー・キング氏(3月にウォルマートを退社し、ピンタレスト[Pinterest]に合流した)の後釜に座るだけでない。新設されたCTO兼CDO(最高開発責任者)のポジションにつき、CEO(最高経営責任者)のダグ・マクミロン氏の直属の部下となる。またこれによって、ウォルマートの国内事業部とサムズ・クラブ(Sam’s Club)、国際事業部の各CTO、および同社IT部門「グローバルビジネスサービス(Global Business Services)」のCIO(最高情報責任者)は、クマール氏の直属の部下となる。

これによってクマール氏は、どのような新技術や新サービスが現在、各事業部でトラクションを得ているのかを把握できるはずだ。たとえばサムズ・クラブは昨年、スキャン&ゴー式チェックアウトやウェイファインディング、電子棚札などの最新技術を実験するためのテストストアをダラスにオープンした。一方、ウォルマートのCIOはかねてから、マイクロソフト(Microsoft)との共同エンジニアリングオフィスのローンチを指揮してきた。このエンジニアリングオフィスでは、2社が社内向けアプリの開発を行っている。より統合された指揮系統をテック幹部のために整備することで、ウォルマートは新たなテックサービスや技術の応用をより迅速に拡大できるようになるだろう。翌日配達などの機能をウォルマートよりもはるかに迅速に展開できる力を持つAmazonとの競合をめざすのであれば、この能力が今後、同社にとって非常に重要になってくるだろう。

マクミロン氏はウォルマートの従業員にあてたメールのなかで、「ウォルマートは大規模なデジタル改革に取り組んでいるが、その道のりはまだまだ長い。今後はペースを上げて、変化の度合いを高めていきたい」と述べ、同社がクマール氏に新たな役職を設けることにした理由を説明している。

「ウォルマートはテクノロジー企業」

これが物語るのは、同社の成長においてテクノロジーが果たしている役割の高まりだ。ウォルマートはいま、グロッサリーピックアップをはじめとする、さまざまな新サービスの展開をめざしている。そうした新サービスに必要なのは、技術力を実店舗とオンラインで強化することだ。

市場調査会社のガートナー(Gartner)で小売部門の主席アナリストを務めるロバート・ヒートゥ氏は、「それが明示しているのは、ウォルマートは単なる小売企業ではなく、テクノロジー企業であるという事実だ」と述べる。

クマール氏が受け継ぐのは、キング氏によって築かれたテクノロジーの土台だ。キング氏はウォルマートのサイトと店舗のテクノロジーチームをどちらも指揮したが、その目的はより統一された顧客体験をオンラインと実店舗のあいだに作り出すことだった。キング氏はウォルマート在籍時、新入社員候補に向けて、こんなピッチを打っていた──その規模から考えて、ウォルマートは巨大なデータセットからなる独自の機械学習問題に取り組むための場所である、と。

「ジェレミー(・キング氏)はウォルマートのテクノロジーへの取り組み方を改革した人物だ。かつてのウォルマートは生粋のブリック・アンド・モルタル(実店舗型店舗)だった」と語るのは、マーケティング企業のピュブリシスサピエント(Publicis Sapient)でグローバルコマースストラテジー部門のバイスプレジデントを務めるジョン・ライリー氏だ。「eコマースのフィールドにはほとんど出て行かなかった」。

タレントたちが集まる理由

eコマース担当のマーク・ロア氏は、買収や次世代のリテールイニシアチブを先導し、新たな人材の獲得に貢献してきた。ロア氏はウォルマートのアメリカeコマース部門のプレジデント兼CEOで、翌日配達のロールアウトや、社内インキュベーター「ストア・ナンバー8(Store No. 8)」のローンチ(2017年)などの取り組みを指揮してきた。ケイティ・フィネガン氏をはじめとする多数のジェット・ドット・コム「卒業生」が、この取り組みにスタッフとして参加してきた(フィネガン氏は先ごろウォルマートを退社している)。そのほかにも、小売業界の優秀な人材がこれに関わってきた。そのなかのひとりが、ファッションレンタルサービスを手がけるレント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)の共同創業者、ジェニー・フライス氏で、同氏はウォルマートのパーソナルショッピングサービス「ジェットブラック(Jetblack)」のローンチを指揮した。

そこにクマール氏が加わることで、さまざまな有名テック企業とつながりを持った、また新たな話題の人物が、新しい人材をウォルマートに引きつけることになる。

「ウォルマートのような企業がピンタレストやGoogleから人材を獲得するのは難しい」と、ライリー氏は語る。「それに成功しているということは、ウォルマートはかなりの額の給与を支払っているということであり、人材の獲得に投資しているということだ」。

Anna Hensel (原文 / 訳:ガリレオ)

 

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