Z世代 向け動画企業・カイラTVが、タレント管理業に進出:15万人からスターを発掘

DIGIDAY[日本版] / 2019年10月3日 16時50分

YouTube以外にも有名クリエイターを生み出す場所がある。カイラTV(Kyra TV:カイラ)は、メディアオーナーとタレント管理スタジオのハイブリッドモデルとして2年前に設立した。同社は主にTikTok(ティックトック)やインスタグラム(Instagram)などのプラットフォームで自社番組の主演を努められそうなスターを探し、そのスターが主演の番組をYouTubeで配信して収益化につなげている。

たとえば8月第3週、カイラはTikTokのクリエイターであるネオン・ユーバンクス氏のアカウントが5月に大きく伸びたことに注目し、同氏を雇っている。カイラの創設者らはロンドンを拠点としているが、18歳のユーバンクス氏と契約するにあたってジョージア州アトランタに住む彼のもとを訪れている。ユーバンクス氏は3月にTikTokに加入したばかりだ。

「当社は将来性のあるタレントを発掘し、世界的なスーパースターであり、ブランドとして育て上げることを目標としている」と、カイラの創設者4人のひとり、デブラン・カラカ氏は語る。「タレントが持つオーディエンスの力を活用して広告主やブランド、EC企業と素晴らしい関係を築き、各社の収益化に結びつけている」。

公開オーディションで選定

カイラはさらに2人のクリエイターとの契約について、今後数カ月交渉を行っていくという。カイラはタレントを主役にした長尺の番組、「PAQ」と「ネイバ(Nayva)」をYouTubeで展開し、成功を収めている。現在の取り組みも、この成功を受けてのものだ。昨年10月にローンチされた後発の「ネイバ」は毎週火曜日に配信される20分間の番組で、女性4人が十代の女性向けファッションや美容、スタイル、文化にスポットライトを当てる。

カイラは「ネイバ」の4人を雇うにあたって、インスタグラムに広告を展開してニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドンでオーディションを開催した。そして応募者15万人のなかから候補者を1万8000人に絞り込み、公開オーディションを実施している。

10月にローンチした「ネイバ」のYouTubeチャンネル登録者数は33万人を突破した。90年代前半のスタイルを再現する動画や動物柄のプリントを取り入れたスタイリングに挑戦する動画などが人気を博している。「ネイバ」はTikTokとインスタグラムでも動画クリップを配信しているが、メインとなるのはYouTubeだ。「ネイバ」の20分のコンテンツに対し、平均視聴時間は15分にも達する。カラカ氏は若いオーディエンスからの高い支持が広告主を惹きつけていると語る。

ビジネスとブランド形成

この成功と広告主からの需要を受けて、カイラの今年度収益は2018年度の3倍の1000万ドル(約10.6億円)に達する見込みだ。全収益の8割はブランデッドコンテンツの収益で、残りがプラットフォームの広告販売と10月にローンチするEC販売が占める。

「ネイバ」の動画にはいずれもブランデッドコンテンツが盛り込まれており、大半は商品やブランド参加といった形で実施されている。カイラのブランド向けの売り込みには、1動画あたりで数千万円規模という収益が材料として盛り込まれることが多い。昨年1番組のスポンサーを務めたコンバース(Converse)はその後、1年のパートナーシップ契約を結んでいる。現時点で「ネイバ」は、動画全体の2〜3割でブランドからの支払いを受けている。

だが、カイラTVのクリエイティブディレクターを務めるイオナ・ゴールダー氏は、伸び率を維持するために動画1本あたりの参加ブランド数に制限を設ける予定だと明かしている。ナイキ(Nike)やビーツ・エレクトロニクス(Beats by Dre)といった大手ブランドからも注目を集める「ネイバ」だが、ブランド動画以上に登録者増につながっているのがエディトリアル動画だ。4人組がラッパーのリコ・ナスティー氏のもっとも有名なスタイルを再現する動画は、YouTubeで60万再生と登録者1万9000人増を達成している。ビーツ・エレクトロニクスの動画でも5000人の登録者数増だった。

「ブランド契約があまりにも多くなると、自分たちのブランドフランチャイズを確立しにくくなる」と、ゴールダー氏は語る。「ブランドメッセージを取り入れる必要にせまられて、自分たちのメッセージがおろそかになってしまう危険が潜んでいる」。「ネイバ」はまだ開設から1年も経っておらず、自分たちのブランドを確立するまで、さらに多数のブランド契約を結ぶ余地が残されている。

オーセンティックな拡大

制作スタジオ、そしてブリーチャー・レポート(Bleacher Report)やコンプレックス(Complex)といったメディア企業はタレントとの提携において長い歴史を誇るが、カイラ氏のアプローチが注目を集めているのは、タレントが独占契約で、コンテンツ分野におけるカイラの企業目標の中核を成している点だ。「PAQ」や「ネイバ」を通じ、ブランドはカイラのタレントと提携する。さらにカルバンクライン(Calvin Klein)やTKマックス(TK Maxx)といったブランドにとって、こうしたタレントはアカウントを通じて自社キャンペーンの延長になりうる存在だ。

カイラはエディトリアル戦略を導入している。カイラは以前、ほかにも「グレートネス(Greatness)」と「バッドカンテーン(Bad Canteen)」という2番組をローンチしている。「グレートネス」は司会が世界中を旅する番組だが、ブランドからの資金なしに高いプロダクションバリューは実現できず、両番組のYouTubeチャンネルには昨年、新コンテンツは追加されていない。現在、カイラはブランドが参加してもしなくても実現可能なフォーマットの開発に力を注いでいる。プラットフォームにおけるプレロール広告収益がカイラの主目的になったことはない。立ち上げの時点から、同社はFacebookの数を頼みに一気に拡大しようという姿勢は見せていない。Facebookの数字は大きいが、必ずしも意味のある数字とは限らないためだ。

エージェンシー各社はカイラの若者向け長尺番組の制作能力を称賛しているが、同社は自分たちのブランド開発のために努力を続けたいとしている。「課題は常に、オーセンティックでありつつ拡大し続けることだ」と指摘するのは、メディアコム・ビヨンド・アドバタイジング(Mediacom Beyond Advertising)の共同責任者、ダン・ウッド氏だ。「カイラは正しい選択を探して選び続けていると思うが、オーセンティックな拡大というのは一夜にして実現できるものではない」。テクノロジーを駆使して次のタレントのためのプラットフォームを見いだせれば、新しいスターをより迅速に見つけられる。

「SNSは現代のテレビ」

これまで同社は5億ドル(約530億円)の資金を調達しており、10月に発表のさらに多額のシードラウンドも終えたばかりだ。この資金は、ロサンゼルスにオフィスを立ち上げて開始するEC事業と2〜3の新番組、今年末までに契約する新たなタレントといった分野で使われる。カイラの社員数は60人にまで増えた。今年末までに、ロサンゼルスのオフィスにさらに15人が加わる。これをもとにカイラはタレント数を増やしていく予定だ。「ネイバ」のオーディエンスの6割がすでに米国からの視聴となっている。

テレビよりソーシャルメディアを見て過ごす若者が増え続けている。英調査会社グローバルウェブインデックス(GlobalWebIndex)によると、現代人がソーシャルメディアに費やす時間は1人あたり2時間22分にも達する。そんななか、ソーシャルメディアのプラットフォームでタレントを探すというのは理にかなった選択だ。

「ソーシャルメディアプラットフォームは、現代におけるテレビネットワークだ」と、カラカ氏は語る。「それだけの注目を(Z世代の)オーディエンスから集めている。こういったネットワークで成功しているのはタレントだ。だからこそ、タレントを中心としたインフラや戦略を構築すべきだと確信している」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:SI Japan)
Image: courtesy of Kyra TV.

  

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