D2C ブランドがいま、求めてやまない「最重要」人材 : リテンションマーケター とは

DIGIDAY[日本版] / 2019年9月27日 8時50分

D2C(Direct to Consumer)ブランドが新しいカテゴリーに参入するにつれて、顧客維持(リテンション)に特化したマーケターを雇用しはじめている。彼らのゴールはリピート顧客を通じてビジネスを大きくすることだ。

ここ数カ月のあいだに、リテンションマーケターの人材募集を公開したブランドには、ブルックリネン(Brooklinen)、ケアオブ(Care/of)、ペロトン(Peloton)、そしてプローズ(Prose)が含まれる。この職はライフサイクルマーケティングと呼ぶ会社もある。たとえば、ローラ(Lola)はライフサイクルマーケティングマネージャーの職を探している。この職の内容は、「ユーザー中心の、アクティベーションにつながり、リテンションを改善し、そして最終的に顧客のライフタイムバリュー(LTV)を高めてくれると証明されているマルチチャンネルなエンゲージメントキャンペーンを作ること」だ。

リテンションマーケターの職は通常、グロースマーケティング部門の一部となる。デジタルプロダクト部門、もしくはデータサイエンス部門と密なコミュニケーションを取りながら働くことになる。これらの部門はまた別に、それぞれが自分たちのためのリテンション専門家を雇用する場合もある。会社がもっとも重要だと考えるリテンション関連のメトリックスの成績を向上させるために、eメールやテキストといった複数のチャンネルを横断して新しいマーケティング戦術を試すことが、リテンションマーケターたちの責任となる。

求められている経験

人材を募集している前述の会社ではリテンションマーケターに対して、マーケティング分野での5年以上の勤務経験を求めている。特に経験のフォーカスはリテンション、eメール、そしてときにグロースマーケティングだ。マック・ウェルドン(Mack Weldon)、ボンバス(Bombas)、サードラブ(ThirdLove)といった他社のリテンションマーケターたちはしばしば、ほかのD2C企業やレガシーリテーラーでのeメールマーケティング職、もしくはグロースマーケティング職の経験を持つ。

リテンションマーケターを探しているのはD2Cブランドだけではない。ラルフローレン(Ralph Lauren)やコールハーン(Cole Haan)といった歴史の長いブランドたちもまた、ここ1カ月の間にリテンションマーケター職の募集をかけている。同一分野での人材争奪戦がはじまろうとしていることが分かる。

「成功したD2C企業の大部分は、リテンションが非常に良い成績を見せているため、ビジネスが上手く行っている」と語るのは、フリーランスマーケター向けのプラットフォームであるマーケターハイヤー(MarketerHire)のCEOであり共同ファウンダーであるクリス・トイ氏だ。

ブランドの成長とともに

D2Cブランドならどこでも、創業時からリテンションは非常に重要だったというだろう。しかし、現実的に考えると、既存の顧客がひとりも存在しない状態でローンチした新しい会社にとって、もっとも重要なのは新規顧客を多く獲得することだろう。特に開始時のプロダクトがひとつだけな会社、さらにソファーやメガネといった、頻繁に買い替えをしないアイテムの場合、ひとりの顧客がリピーターとして購入できる回数は限られている。

そのため、D2Cブランドが販売するプロダクトの量が増えれば増えるほど、リテンションの重要度も高まる。ひとりの顧客が購買する機会が増えるからだ。

「ブランドが成長し、進化するにつれて、それを伝える責任は我々側にある」と、ブルックリネンのCEO兼ファウンダーのリッチ・ヒュロップ氏は言う。ブルックリネンはeメールとリテンションマーケティング部門のディレクター職の求人を2週間前にかけた。ヒュロップ氏によると、ブルックリネンには現在、ふたりのリテンションマーケターがおり、彼らは1〜2年勤務経験を持つ。しかし、そこにディレクターを入れることで部門をさらに公式なものにすることが狙いだ。

メールツールの捉え方

このディレクターはeメールやSMS、そしてダイレクトメールといったチャンネルを通じて「顧客や今後の展開についてのマーケティング戦略の主導となる」とのことだ。求人情報によると、この人材は「包括的なダイレクトメールプログラム」の開発を管轄することにもなる。

これはほかのマーケティングチャンネルと比べて、ダイレクトメールがはるかに優れていると、ヒュロップ氏が考えているわけではない。その一方で、ブルックリネンの新プロダクトを顧客へ視覚的に伝えるのに、もっとも効果的だと考えているようだ。ベッドシート販売ではじまったブルックリネンだが、今年ラウンジウェアを導入しアパレル部門にも参入した。

リテンションマーケターを採用するにあたり、ブランドたちが犯すだろう失敗のうち、もっとも大きいもののひとつは、eメールマーケターと同じものだと考えることだと、トイ氏は言う。1年未満の若いブランドにとっては、リテンションマーケター専門職を作るだけのリソースが生まれるまでのあいだ、eメール・マーケターを起用することは問題ないと、彼は言う。

しかし、リテンションはただ、顧客が再度何かを購入してくれるまで「ディスカウントをeメールで送る」ことだけではない。既存の顧客がチャンネルを越えて、どう行動するのかを企業は理解しなければいけない。顧客がさらに購買してくれるようなマーケティングメッセージをプッシュするようなスペースがあるかどうか、も理解する必要がある。

より高度な実験を行うことも

サブスクリプションベースのビタミンサービスであるケアオブのマーケティング責任者であるアヌ・バーマ氏は、サービスがローンチしてから6から7カ月後に専門のeメールマーケターを起用したという。その後、ケアオブは創立1年を迎え、「マーケティング部門はリテンションへのリソース投入を増やしはじめ、ただeメールプログラムを運営するだけでなく、より高度な実験を行うことも真剣に検討しはじめた」。

ケアオブは現在、リテンションマーケティング部門においてシニアマネージャーを募集している。この職は「インボックス、アプリマーケティング、テキスト、プッシュ通知、eメールといったチャンネルを主導すること」になる。

ケアオブは1年が経ってアプリを製作した。これまでのダウンロード数はバーマ氏は明らかにしなかったが、ケアオブの顧客のうち「かなりの割合」がアプリを利用するという。アプリを使って、顧客はビタミンをどれくらいの頻度で摂取しているかの記録を付けることができ、リワードを受け取ったり、摂取の際に励ましのメッセージを受け取ることができる。また栄養と健康に関する記事も読める。

配送作業も重要チャネルに

ケアオブは、サブスクリプションベースのサービスのため、毎月の配送自体も、新プロダクトを勧めるための非常に重要なチャンネルだと会社は捉えていると、バーマ氏は語った。

たとえば、ケアオブがプロテインパウダーを今年前半にローンチした際、そのサンプルを既存の顧客のボックスに同封した。既存の顧客から得られるビジネスの割合を増やすことに加えて、複数のカテゴリーからの商品を購入する顧客を増やすことも、リテンションマーケティングの仕事となることがある。また、ケアオブのようなサブスクリプションベースの企業の場合は、キャンセル率を下げることもだ。

D2Cブランドがより多くのリテンションマーケターを採用するなかで、マーケティング部門のサイズ自体も大きくなっているだろう。ほかに採用している職にはブランドマーケター、サイトマーケターなどが含まれる可能性がある。ブランドマーケターはビルボードやテレビといった、キャンペーン後すぐの購買には結びつかないかもしれないチャンネルにおけるキャンペーンを担当する。サイトマーケターはサイト上のコピーとユーザー体験を改善し、購買を増やすことが仕事だ。

残されている懸念事項

これらの役割は、最高マーケティング責任者、マーケティング部門バイスプレジデント、もしくはグロース部門のバイスプレジデントの直属の部下となる。彼らがマーケティング部門におけるすべてのチームが競争ではなく、コラボレーションできているかどうかを管理する。

トイ氏は、「リテンションマーケターがやりたいと考えていても、新規顧客獲得を仕事とするマーケターはやりたくないと考える物事も出てくるだろう。そのときにどうやってそれを解決するか、考えなくてはいけない」という。

Anna Hensel(原文 / 訳:塚本 紺)

 

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