ロボット工学を活用する、ファッションブランドたち:ランウェイから店頭まで

DIGIDAY[日本版] / 2019年9月26日 8時50分

9月第2週のニューヨーク・ファッション・ウィーク期間中、ファッションブランド、ラグ&ボーン(Rag & Bone)は3年振りにランウェイに戻り、いかにも同ブランドらしく、最新テクノロジーを利用した斬新な演出でショーを盛り上げた。マイクロソフト(Microsoft)と組んで巨大ロボットアームを導入し、モデルやパフォーマーの姿を360度全方位から捉え、その映像を劇場内のスクリーンにリアルタイムで映し出した。

最新テクノロジーの活用は実際、ラグ&ボーン(Rag & Bone)が展開するマーケティング戦略の一環だ。2019秋冬コレクションでは、定番のランウェイショーの代わりに、 「A Last Supper(ア・ラスト・サパー)」と題する豪華ディナーを催し、ゲストの姿をAIが撮影および編集した動画をその場で上映した。

こうした奇抜な行為が効果的に人目を引く一方、実のところ、ファッション業界の舞台裏にはすでに、ロボット工学の影響力が着実に浸透しつつある。多くのブランドはたとえば、ロボット工学を利用して受注から納品までの時間短縮や製造のスピードアップを図っており、これまでとは比較にならない速度での生地裁断および縫合を実現している。

体験向上に利用できるか

「ラグ&ボーン(Rag & Bone)が今回登場させたロボットアームは、彼らが以前から推し進めているマーケティングストラテジーの延長線上にある。ブランデッドエクスペリエンスの創造にAIといった奇抜なテクノロジーを利用する戦略だ。もちろん、いくら人目を引きたいからといっても、あれは少々やり過ぎだったとは思うが、人目を引くのがファッションウィークのそもそもの目的であるし、そういう意味ではこの場にふさわしい」と語るのは、eコマースソフトウェア企業エラスティック・パス(Elastic Path)のチーフストラテジーオフィサー、ダーリン・アーチャー氏だ。「前進への鍵は新たなテクノロジーの取り入れ方にある。奇抜なエクスペリエンス(経験)のためだけでなく、顧客がそのブランドとエンゲージするあらゆる場におけるエクスペリエンスの向上に利用できるか否かがポイントとなる」。

広告エージェンシー、ヒュージ(Huge)のユーザーエクスペリエンス担当グループVPエミリー・ウェンガート氏は2019年夏、日本の化粧品ブランドSK-IIと組み、後者の東京におけるポップアップストアにロボットを導入した。そのコンセプトは、顧客が肌の悩みをロボットに伝えると、ロボットが自動で動き、その顧客に最適な商品を選んでくれる、というものだった。ただし、ウェンガート氏によれば、常設店舗ではなく、期間限定のポップアップストアの呼び物だったとはいえ、大勢のスタッフの介在はあったという。

「ただ、多くのスタッフを常駐させてはいたが、ロボットは間違いなく顧客に安心感を抱かせるスペースの創造に役立ってくれた。スタッフの役割が従来のそれとは少々違うものになった。人間に肌の悩みをすべて打ち明けるのは、やはりどこか気が引けるものだが、今回はその不安を取り除けた。また、一連のプロセスを経験した後の反応にも興味深いものがあった。皆、セールス担当者との直接のコンタクトを求めていた」と、ウェンガート氏はふり返る。

「人間とロボットの共生」

その一方、ロボット工学の倉庫への導入は、ファッションブランドがAmazonやウォルマート(Walmart)の手法を手本にできる有力な一手だ。Amazonやウォルマートは出荷・配送の時短と大量の返品処理にロボットを活用しており、ファッションブランドもその先例に積極的に倣うべきだと、ローカス・ロボティクス(Locus Robotics)のチーフマーケティングオフィサー、カレン・レヴィット氏は断言する。同社はリテーラーに「ロボット・アズ・ア・サービス」(RAS)モデルを提供している。

「オートクチュールでもないかぎり、どのファッションブランドにも商品を消費者に届けるための配送手段が欠かせないし、かなり大型の倉庫に在庫を収めておく必要がある」と、レヴィット氏は語る。ローカス・ロボティクス(Locus Robotics)のモバイルロボットは倉庫内を動き回り、消費者、ブランドの小売店、卸売業者に配送する商品をピックアップするようプログラミングされている。同社のロボットの目的は、受注から配送までの時間を短縮し、ブランドが消費者需要のスピードに対応し、主に翌日配送を実現することにある。

レヴィット氏は具体的な取引先名こそ明かさなかったが、同社のロボットを利用している多くの企業のなかには、美容業界大手やアクティブウェアの有名企業もいるという。同社は最近、ある世界規模の高級ブランドと契約を締結しており、フットウェア、アパレル、アクティブウェアと、複数ジャンルのブランドと提携している。

「人間に取って代わるという話ではなく、ポイントは多くの人間にかかる負担の軽減にある。人間とロボットの素晴らしい共生関係にほかならない」と、レヴィット氏は語る。同社のクライアントであるリテーラーが契約しているロボットの台数は、倉庫内の従業員1人に対して平均約3台。リース費はロボット1台あたり1カ月950ドル(約10万円)。倉庫内に商品のピックアップ担当者が20人いる場合、クライアントは一般にロボットを60台借りている。

新技術について回る不安

ただし、どんな新テクノロジーにも必ず、故障に関する懸念や、従業員がその能力を快適に利用できるのか、といった不安がついて回る。たとえば、エイソス(Asos)は先頃、アトランタに新設した自動倉庫の不具合により2500万ドル(約26億円)相当の大損害を被っている。同倉庫のオートメーション技術では、受注品の正確なピッキングは可能だったが、返品を迅速に戻すことができなかった。

KATIE RICHARDS(原文 / 訳:SI Japan)

 

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング