「脱落」候補者も見えてきた、熾烈なストリーミング戦争

DIGIDAY[日本版] / 2019年12月6日 11時50分

ストリーミング業界の競争はますます熾烈さを増している。そんななかで、中核的なビジネスをエンターテイメント以外に持つウォルマート(Walmart)のような企業たちは、ストリーミングビジネスにどれほど力を注ぐべきか再検討することを強いている。

ウォルマートは、2010年にブードゥー(Vudu)を買収してからの約10年間、ストリーミング動画ビジネスに関わってきた。しかし、その期間の大部分は、ブードゥーの役割は基本的には、ウォルマートのような店舗で購入したDVDのデジタル版をダウンロードしたり、映画やテレビドラマを購入・レンタルするオンラインリテーラーであった。

3年前、ブードゥーは広告表示がされる代わりに無料で視聴できるプランを追加。ここで配信されるライセンスコンテンツは収益シェア形式である。これによって、まだ若い広告ビジネスの構築を助け、利益マージンを守っていた。しかし、彼らがオリジナルプログラム制作に乗り出したことで状況が変わった。

矛盾が残るブードゥーの戦略

ブードゥーはこの9月に最初のオリジナルコンテンツを配信した。そして来年にはさらに12のオリジナル番組を配信するために目下制作中だ。ブードゥーは、これらのプロジェクトの予算を400万ドル(約4.3億円)から1000万ドル(約10.8億円)と設定していると、この件に詳しいメディアエグゼクティブのひとりは語ってくれた。12の新作オリジナルのうち6つはすでに制作中もしくは開発が開始されているが、それを除外しても現存のコストに加えてさらに2400万ドル(約26億円)から6000万ドル(約65億円)のコストがかかることになる。

Netflix(ネットフリックス)とディズニー(Disney)はオリジナルコンテンツ制作に何十億ドルも支出するが、それは彼らにとってのビジネスであるからだ。映画や番組を作ることで、人々がお金を払って見てもらうことがビジネスとなっている。しかし、ウォルマートがこのビジネスに参入している目的はそうではない。この違いが彼らが最終的にストリーミングビジネスから退却する理由となるかもしれない。

ブードゥーのオリジナル番組や映画は無料で視聴でき、ウォルマートによって販売されているプロダクトをプロモーションするためのスポンサーシップや広告によってコストが助成されている形だ。その結果、この事業は非常に高額なマーケティング企画の体を成している。これまでもブードゥーは広告主を集めるのに苦労してきており、それも合わさって、コストの高額さは際立っている。そしてウォルマートにとっては、今後継続するのが難しい局面にまで至っているように思われる。10月にインフォメーション(The Information)が報道したところによると、ウォルマートはブードゥーの売却を検討している、コストが高いことがその理由のひとつであるようだ。

ベライゾン(Verizon)のゴー90(Go90)がそうであったように、メインのビジネスを成長させようとしてエンターテイメント事業に参入した企業はウォルマートがはじめてではない。今後も同様の企みをする企業は出てくるだろう。

メイルチンプとショッピファイ

メイルチンプ(Mailchimp)とショッピファイ(Shopify)は新規参入者の例だ。6月にメイルチンプはデジタル・エンターテイメント・プラットフォームをデビューさせた。そこではオリジナル番組が並んでいる。これによってマーケティングコストを削減するのが狙いだ。しかし、メディア企業、エンターテイメント企業のエグゼクティブたちは、メイルチンプが番組のエピソード1話ごとに企業に対し、6桁(億円単位)を支払うオファーをしていると述べる。ブランデッドコンテンツの範囲を超えたエンターテイメント業界における野心を抱えていると、彼らは推測しているようだ。

ショッピファイもまた、この分野で謎めいた動きを見せている。コマースプラットフォームを持つエンターテイメント企業のエグゼクティブのひとりは、今年前半に次のように語っている。ショッピファイはプロデューサーとしての役割を見せつつあるという。Netflix、Amazon、もしくはテレビ局に販売し、彼らのチャンネルを通じてその番組をプロモーションできるコンテンツを探しているというのだ。ショッピファイはまた、設立して10カ月が経った彼らのテレビ・映画制作部門であるショッピファイ・スタジオス(Shopify Studios)を率いるため、エンターテイメント業界のベテランであるサラ・ノース氏を最近になって雇っている。これもまたショッピファイの方向性を示す素材となっている。しかし、この秋にショッピファイとミーティングを行ったメディア企業エグゼクティブのひとりは、セールス競争をモチーフにした番組のアイデアを提案するように頼まれたが、ミーティングを終えたあとの彼の感想としては、ショッピファイは番組制作のパートナーというよりは、クライアントとエージェンシーの関係を求めているのではないか、というものだった。

ウォルマートと同様に、メイルチンプ、そしてショッピファイはマーケティングとエンターテイメントの両方をまたいで成功しようとしているようだ。ストリーミング競争がより熾烈になるにつれて、彼らはどちらを重要視するか、決める必要が出てくるかもしれない。

Tim Peterson(原文 / 訳:塚本 紺)

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