ウォルマートの新フルフィルメントサービス、その実力は?:Amazonに追いつけるのか

DIGIDAY[日本版] / 2020年4月6日 16時50分

ウォルマート(Walmart)は、2016年にJet.comを買収してから積極的にマーケットプレイスの成長戦略に取り組んできた。同社がサードパーティの販売業者向けにフルフィルメントサービスを提供するのは既定路線で、問題はいつ提供を開始するかだった。ウォルマートの最大のライバルAmazonは、2006年からサードパーティの販売業者向けにフルフィルメントサービスを展開している。

2月第5週、ウォルマートのフルフィルメントサービス(Walmart Fulfillment Services、以下WFS)がついにその全容をあらわした。同社は数カ月前から一部の業者向けにソフトローンチを行っていたという。ウォルマートは、WFSをマーケットプレイスでの成長を促進するための新たなツールと位置づけている。

同サービスは全販売業者が申し込めるが、重量や寸法が一定以上の商品は利用できないとのことだ。WFSのウェブページによれば、参加した販売業者の商品は2日で配達できるようになるため検索ランキングで有利になるという。ウォルマートの広報担当はベンダーが負担するコストの具体額は明かしていないが、保管とフルフィルメントの手数料がかかるとしている。

WFS担当バイスプレジデントのジャレバックリー・コックス氏は次のように述べている。「WFSによるカスタマーや業者のメリットは多い。販売業者の商品を2日で配達でき、返品しやすく、専用のカスタマーサービスを受けられ、低コストで料金体系もシンプル、かつ会員費も不要だ」。

Amazonと比較して不十分

エージェンシーや販売業者らは、ウォルマートがAmazonと並び立つためにはフルフィルメントサービスだけでは不十分だと指摘している。Amazonのウェブサイトやモバイルアプリの利用者数はウォルマートより多い。新たな動画広告やディスプレイ広告を含め、Amazonの広告フォーマットは非常に多岐にわたる。販売業者にとってはAmazonで売上を伸ばすのにどの広告フォーマットがより効果的か試しやすいとされている。

米DIGIDAYの姉妹サイトのモダン・リテール(Modern Retail)がインタビューを行ったエージェンシー3社はいずれも、クライアントのウォルマートのマーケットプレイスでの売上はAmazonでの売上より少ないと回答している。ティヌイティ(Tinuiti)で戦略的マーケットプレイスサービス担当シニアディレクターを務めるエリザベス・マーステン氏によれば、もっとも業績の優れたクライアントでもウォルマートのウェブサイトを通じた売上はAmazonでの売上の2割程度だという。

「ウォルマートにAmazonと同じものを期待すると、落胆することになるだろう」と、同氏は語る。

さまざまなDIY商品を販売するグロウ・アンド・メイク(Grow and Make)の創業者、ウィル・ジョンストン氏は、ウォルマートマーケットプレイスでの売上が芳しくなかったため数カ月以内に商品を引き上げる予定だとしている。同社は昨年、Amazonでおよそ60万ドル(約6600万円)を売り上げたが、ウォルマートマーケットプレイスでの売上は1000ドル(約11万円)にも満たなかったという。

ウォルマートならではのメリット

ウォルマートの広報担当はサードパーティの販売業者による一般的な売上についてコメントを拒否した一方で、ECエージェンシーのパターン(Pattern)の例について言及している。同社はウォルマートの新たなフルフィルメントサービスを試験的に利用し、ウォルマートのウェブサイト上で同社の月間売上を更新している。

それでもウォルマートマーケットプレイスで販売するメリットは少ない。ウォルマートマーケットプレイスでの販売を、ウォルマートの実店舗で商品を扱ってもらうための第一歩と位置づける企業は多い。

またAmazonへの依存度の高さに懸念を抱いた企業が、収益源の多様化のため利用するケースも増えている。

ボブスレッド・マーケティング(Bobsled Marketing)のCEO、キリ・マスターズ氏は、ウォルマートマーケットプレイスは販売業者が少ないため、アカウントマネージャーの対応がAmazonより迅速だと指摘する。Amazonでは現在280万の販売業者が商品を販売しているのに対し、ウォルマートの広報担当によると、同社のマーケットプレイスでの販売業者は数千にとどまっている。

販売業者らはこれまで米DIGIDAYに対し、ウォルマートマーケットプレイスではフルフィルメントのコストを負担することになるため、Amazonでの販売価格を維持するのが難しいと語ってきた。ウォルマートがフルフィルメントサービスを追加したことは、こうした問題点への解決策となっている。

広告選択肢の少なさが課題

だがウォルマートマーケットプレイスにおける最大の問題点は、広告の選択肢の少なさだ。Amazonには主要な広告フォーマットが3種類ある。スポンサー商品、ブランド広告、そして商品のディスプレイ広告だ。さらに広告のプレースメントが多様で、広告を出せる検索用語も多岐にわたる。一方、ウォルマートマーケットプレイスにおける主要な広告フォーマットはスポンサード商品のままだ。

小売とECエージェンシーのコマースカナル(Commerce Canal)でCEOを務めるライアン・クレーバー氏は「ウォルマートにはスポンサード商品プログラムがあるが、まだ導入して日が浅い。野球で言えば1回表か2回表といったところだ」と語る。

ウォルマートは今年、Amazonで使われているような広告フォーマットと機能を増やすための取り組みを開始している。たとえば1月にはウォルマートメディアグループ(Walmart Media Group)がセルフサービスの広告プラットフォームをロールアウトした。

Amazonプライムへの対抗措置

ウォルマートメディアグループで販売およびメディアパートナー担当バイスプレジデントを務めるレックス・ジョセフス氏は「2020年の広告事業を効果的なものとするには、事業の自動化が肝要だ。さらにリアルタイムでの制御やツール、分析機能の提供が鍵となる」と、以前米DIGIDAYに語っている。

クレーバー氏はウォルマートマーケットプレイスにおけるほかの課題として、Amazonプライム会員のようなコンバージョンを高める強力なサービスを挙げている。Amazonでプライム対応の商品を扱う業者は、ライバル業者よりプライム会員への販売を増やしやすいのだ。だが、ウォルマートがプライムに匹敵する会員プログラムの立ち上げを準備していると2月27日に報道されており、この状況も変化する可能性がある。

クレーバー氏は次のように述べている。「いまウォルマートの商品ページでは、2日で配達と書かれた商品が並んでいる。だがプライムによる消費者心理ほどの効果は生まれていない」。

Anna Hensel(原文 / 訳:SI Japan)

 

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング