ECに投資しない オフプライスストア と、忍び寄る競合の影

DIGIDAY[日本版] / 2020年3月30日 16時50分

いまやあらゆる小売企業が、収益の2ケタ成長を達成するためEC事業を手がけているように思える。だがオンライン販売を行わないところが大半の実店舗グループがある。それが安価に商品を提供するオフプライスストアだ。

先週、バーリントンストア(Burlington Stores, Inc.)はEC事業の停止を発表した。同社の売上に占める同事業の割合は0.5%に過ぎなかったという。

同社のCEO、マイケル・オサリバン氏は第4四半期の業績報告で「エネルギーとリソースを収益性の高い実店舗における売上増に集中するのが狙いだ」と語った。

いっそ捨てるというのも英断

バーリントンのような決定はまだ一般的ではないが、競合他社もオンライン事業の構築にあまり力を注いではいない。TJXカンパニーズ(TJX Companies Inc.)は、昨年9月に同社のチェーンであるマーシャルズ(Marshalls)用のECサイトをローンチしたが、もうひとつのチェーンであるホームグッズ(Home Goods)はまだオンライン販売を行っていない。同社のもっとも有名なチェーンであるTJマックス(TJ Maxx)は、2013年からECサイトを有している。

オフプライスストアがEC事業にほとんど力を注いでこなかった理由のひとつとして、同業界がほかの小売業界より高い成長率を示してきた点が挙げられる。バーリントンの2019年第4四半期の総収益は22億ドル(約2370億円)で、これは前年度から10%増だ。TJXの売上も10%増の122億ドル(約1兆3200億円)となっている。

だからこそオフプライスストアは、資金をECサイトの構築ではなく、カスタマーが来店を続けている店舗の改装や、新店舗の立ち上げなどに費やしているのだ。オサリバン氏によれば、バーリントンもまた今後数年で同様の目標を掲げているという。同社は現在727店舗を展開しているが、TJXの店舗は4529店にものぼる。「既存の実店舗での取り組みや、新規開店や店舗の移転などによって収益増を目指してく」と、同氏は語る。

eマーケター(eMarketer)でECアナリストを務めるアンドリュー・リップスマン氏は「優れたEC体験を提供するには、ある程度の投資と維持費、宣伝が必要だ」と指摘する。「ECの収益が全体の0.5%であれば、いっそ捨ててしまうという思い切った決断も賢さと言えるのではないか」。

オフプライスストアはECへの投資が少ないことについて、カスタマーが店舗内を歩いて一番良いものを探すという体験を好んでおり、オンラインでこの体験を再現しづらい事を理由としてあげることが多い。だが実際はより複雑な要素が絡んでくる場合もある。ECは、必ずしも売上だけの問題ではないのだ。

オフプライスECの2つの課題

売上だけを見れば、オンライン収益が数%に過ぎない企業はECサイトは投資に見合わないと考えるかもしれない。だが、もしオフプライスストアがウェブサイトからの直接的な売上だけを見ているのであれば、重要なことを見落としているのかもしれない。それは、ウェブサイトを見てどの店舗を訪れるかを決めるカスタマーが多いという点だ。

カンターコンサルティング(Kantar Consulting)の小売アナリスト、ティファニー・ホーガン氏は「オンラインは、買い物客と企業やブランドとの最初のコンタクトになりつつある」と指摘する。「買い物客は『バーリントンはこういうスタイルの商品を揃えている』と確認しながらブランドを知る。デジタル上に存在することは、消費者のなかで認知され、マインドシェアを維持するための重要な要素だ」。

オフプライスストアは、ECサイトの構築にあたり2つの大きな課題に直面している。まず、オフプライスストアは他社の過剰在庫を買うことで安価に商品を提供している。そのため商品在庫の予測や、オンラインでの宣伝が難しいのだ。そして商品も5点から10点ほどしか手に入らないこともあり、そうした場合は数日以内に売り切れてしまう。

もうひとつの課題が、商品を大幅に割引しているため、オンラインの販売では利益をあげるのが難しい点だ。オサリバン氏は3月第1週に、バーリントンがECサイトを閉鎖した理由のひとつとして、同社商品の平均単価が12ドル(約1300円)程度である事を挙げ、次のように述べている。

「ECでは、マーチャンダイジングや処理、発送、返品対応のコストをすべて負担する必要がある。これは価格面において非常に難しく、特に当社や競合他社が競い合っているこの業界では不可能に近い」。

それでもデジタルが重要な理由

バーリントンのオンライン事業は暗礁に乗り上げたが、ECにおいて割引商品の販売を進める企業は存在する。たとえば昨年10月、サイモン・プロパティ・グループ(Simon Property Group)はギルト・グループ(Gilt Groupe)と提携してオンラインのアウトレットウェブサイト「ショップ・プレミアム・アウトレット(Shop Premium Outlets)」を立ち上げた。

サイモン・プロパティ・グループのCEO、デイビッド・サイモン氏は当時のフォーチュン(Fortune)のインタビューで次のように述べている。「当社のアウトレット商品は今後も順調に売れると確信しているが、その一部はオンラインで販売していく」。もしオフプライスストアがオンライン事業から完全に撤退すれば、ECに投資する意欲のある競合他社に売上を取られるリスクがあるだろう。

さらに、ピュブリシス(Publicis)の最高商業責任者、ジェイソン・ゴールドバーグ氏は、スレッドアップ(ThredUp)やザ・リアルリアル(The RealReal)といった再販企業もまた、カスタマーに対してオンラインで「宝探し」のような体験をできるアプリを提供していると語る。オフプライスストアと同様、再販プラットフォームもまた非常に割引率の高い商品を提供しており、品揃えも毎日のように変わる。

「(オフプライスストアが)すぐに、破壊的イノベーションの波に飲み込まれるとは思わない。だが、彼らは気づいていないように思える」と、ゴールドバーグ氏は語り、次のように述べた。「どの分野の企業も、その波に飲み込まれるまで自分たちが独自性を有していると信じているのだ」。

Anna Hensel(原文 / 訳:SI Japan)

 
 

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