イベント延期相次ぐなか、遠隔営業を試みる広告役員たち:「いつまでも先延ばしできない」

DIGIDAY[日本版] / 2020年4月1日 16時50分

業界内で行われる大規模イベントは、イベント内における表彰も重要だが、その存在意義は契約の締結にある。ディナーやパーティー、イベント中のミーティングなど、イベントは新たな職やパートナー、ビジネスチャンスを探す機会となっている。

だが現在、SXSWといったイベントのキャンセルが相次ぎ、カンヌなども延期されている。広告業界の役員らは契約締結のため辛抱強く取り組むとしているものの、これまでと同様とはいかないようだ。

対面してのミーティングは行えず、動画チャットや電話越しでの対談になる。そこにセレンディピティや、ロゼワインのグラスを片手に普段は会う機会のない相手と話すチャンスはない。今後数カ月にわたり、予期せぬパートナーや経営統合、契約はあまり期待できないかもしれない。また、主要イベントで契約を発表するために契約締結を急ぐといったことも起こりづらくなる。契約自体がどんなものかはブランドやプラットフォーム、エージェンシーごとに異なるものの、重要職の雇用や経営統合、大規模な取り組みや宣伝などが考えられる。たとえばクイビィ(Quibi)が2019年春に1億ドル(約1070億円)規模の広告をローンチ前に発表しており、これは2019年のカンヌに間に合うように役員らが急いだと考えられている。

こういった契約は電話やZoomで即座に締結するのは難しい。特に現在、広告主らはコロナウイルスで不透明な市場に直面しており、宣伝費用を抑える傾向にあるのだ。これまで数十年続いてきた慣習を、かつてない規模のパンデミックと不透明な市場のなかでシームレスに移行するのは容易ではない。そしてマーケティングや広告業界は、こういったイベントによって築かれた人と人の繋がりによって成り立っている部分が非常に大きい。

こういった変化があっても企業活動は続く。そんななか、マーケターらはオンラインでもこうしたイベントで繋がりを築けることを証明しようと取り組んでいる。

「在宅でも勤勉かつ生産的に」

プランA(Plan A)のCEO、アンドリュー・エセックス氏はメールで「契約についてはメールやテキストメッセージ、そして技術としては過小評価されているが電話で引き続き行っていく」と語った。同氏は2018年のカンヌライオンズで、パートナー企業のMTカーニー(MT Carney)とともに新たなエージェンシーネットワークの立ち上げを発表している。

エージェンシー役員らのあいだでは、ミーティングや話し合いを促すイベントはなくとも取り組みを促進していこうという感覚が一般的となっている。あるデジタルエージェンシーのCMOは「これからも契約は続けていく」と語る。「新たな現実を前に若干の減速は見られる。我々は現在、重要事項よりも緊急事項に取り組んでいるとも言える。だが提携にせよエージェンシーの見直しにせよ、重要な契約をいつまでも先延ばしにはできない」。

またリモートワークが広がるなかで効率的かつ効果的な企業活動ができていることをステークホルダーに示すべきだという声もある。そのためには大規模イベントがあったら取り付けられたであろう契約について営業幹部にインセンティブを与え、交渉を進めさせるべきだという意見だ。レベレーション(Revelation)の北米担当マネージングディレクター、マット・ワースト氏は「企業活動や契約は継続していくだろう。多くの人が、在宅勤務でも同じくらい勤勉かつ生産的に活動していることを証明しようとしている。やりとりを行うプラットフォームや場所が変わるだけだ」と語る。「これまではニューヨークですぐ近所にオフィスがある相手に、カンヌのヨットの上でブランチを楽しんだりしていた。それが、ウェストチェスターに住む社員とのビデオ会議に変わるのだ」。

イベントへの依存度が減る可能性

イベントや個人間のミーティングがない現時点でも、契約締結は行われていると指摘する声もある。4Aの元プレジデントでエージェンシーのシェルパ(Sherpa)を立ち上げたナンシー・ヒル氏は「契約の締結は、いまでもきちんと行われている」と、メールで語った。「初日は影響を受けたが、2日目に整理を行い、3日目には調整、4日目には再編に基づく新たな決定が行われた」。

以前米DIGIDAYが報じた通り、今年前半に行われる予定だった重要イベントの多くは第4四半期にまでずれ込む予定となっている。これによりエージェンシー役員やマーケターはさまざまな難しい問題に直面すると思われる。エージェンシー役員らは、イベントが再開されるまでは、これまで頼ってきたイベントに代わる新たな契約や提携のための機会を見つけ出す必要がある。

重要イベントが契約締結にどれほど有益だったのか、その影響度はまだ正確には分からない。イベントなしで各社が取り組んでいることで、将来的にCESやSXSW、カンヌ、アドバタイジングウィークといったイベントへの依存度が減ることも考えられるのだ。米DIGIDAYの調査によれば、エージェンシーの20%、ブランドの22%が「今後、社員の会議への参加が減る」と回答している(米DIGIDAYによるエージェンシー75社とブランド130社を対象とした調査)。役員らは、第4四半期に多くのイベントが集中することで全イベントに参加するのが難しくなるとも述べている。特に財務的に厳しい状況が予想されるなかで、イベント参加費用は削られる可能性も高い。

一方、イベントを重視するの声も

一方、こういった不確定要素があるにもかかわらず、業界イベントについて積極的な認識を保ったままの役員もいる。「カンヌは広告エコシステムにとって非常に重要だと認識している」と、同イベントを特に重視しているあるメディアエージェンシー役員は語る。「我々は人と人のつながりで成り立っている業界にいる。カンヌは世界規模で人が集まるイベントなのだ。このイベントは『市場』ではないが、世界規模の意思決定者がたくさんの取引を取りまとめるために集まる場所となっている」。

また世界的な隔離が解かれたあとこそ、直接会うことが重要性を帯びると考える人もいる。「いまの状況がすべて解決したあとに、同僚と集まるというのはいままで以上に喜ばしく、生産的になるのではないか」と、エセックス氏は述べる。「そして南フランスまで行って働くことについて、誰も文句を言わなくなるだろう」。

Kristina Monllos(原文 / 訳:SI Japan)

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