独自ポッドキャストシステムを構築した、シブステッドの狙い :「自分たちで制御できる」

DIGIDAY[日本版] / 2020年10月7日 16時50分

ノルウェーの大手パブリッシャーであるシブステッド・メディア(Schibsted Media)が、まだまだ成長途上の同国のポッドキャスト業界を活性化させようとしている。

現在、さまざまなタイトルで合計40のポッドキャスト番組を制作している同社だが、昨年からはさらに独自の編集技術プラットフォームであるコア・ニュース・プロダクト(Core News Product)を活用したポッドキャスト番組製作を進めている。これは、ニュース誌の商品部門、開発者、コンテンツ部門など社内のさまざまな部署から約30人が参加する取り組みだ。目的は同ブランドにおけるポッドキャスト活用方法、購読者の誘導方法、そして広告収入を増やす方法の分析と実験となっている。基本的に一般ニュースを扱うシブステッドだが、グループ内のタイトルごとのビジネスモデルに応じた分析を進めているようだ。

高品質なポッドキャスト番組で購読者数を増やすという手法を採用する企業はあまり多くない。理由のひとつとして挙げられるのが、米DIGIDAYが以前報じた通り、AppleやGoogle、そして最近ではSpotifyが世界におけるポッドキャストプラットフォームを寡占しており、制限が加わってしまうという状況だ。そんななか、ポッドキャストに真剣に取り組むパブリッシャーのあいだでは、プラットフォームから脱却し、独自のポッドキャストモデルを構築することが重要になりつつある。

シブステッドのプロダクトマネージャー、エリック・サースタッド氏は、「ほかのニュースメディアも追随するのではないか」と語る。「メリットは明らかだ。既存のビジネスモデルを強化するのはもちろん、新たな収益源になる可能性を秘めている」。

まだ小規模だが新しい収入源に

シブステッドもまた、コロナ禍で打撃を受けたパブリッシャーのひとつだ。同グループの財務諸表によれば、4月から6月にかけての収益は4億9800万ノルウェークローネ(約56億円)だったが、これは前年同期比11%減となっている。シブステッドのポッドキャストからの広告収益はいまだ少ないが、同グループはポッドキャストをコンテンツ戦略の中心に位置づけている。なかでも人気なのがノルウェー全体のニュースを扱うアフテンポステン(Aftenposten)がポッドキャスト配信しているフォークラート(Forklart)で、これは毎週100万回近くのストリーミング配信を達成している。

そしてアフテンポステンのサブスクリプション契約者数は24万人近い。現在、同タイトルはエーキャスト(Acast)やiTunesといったサードパーティのプラットフォームでの公開前に、契約者向けにペイウォールを設けたうえで特別回を期間限定で配信している。シブステッドは、独自プラットフォームでポッドキャスト配信することで、消費者の行動分析やより掘り下げたコンテンツの充実、ポッドキャストのリテンションに果たす役割の把握といったメリットを享受する。また、同グループの読者はニュースアプリでニュースを読みながらポッドキャストを聴けるようになっている。

シブステッドでは現在、ポッドキャストの広告収益はあまり大きくないが、今年は前年比で50%増を見込んでいる(具体額は非公開)。これは、同グループのコンテンツ自体と、まだ同国の歴史の浅いポッドキャスト市場が成熟しつつあるためだ。実際、インターバス・カンター(Interbuss Kantar)の推計によると、ノルウェーの全人口の45%(540万人)が月に1回はポッドキャストを聴いている。ポッドキャストプラットフォームのエーキャストでは、ノルウェーの月間ユーザー数は1100万人以上を数える。

シブステッドの推定によれば、ノルウェー国内におけるポッドキャストの広告収益は年間400万ポンド(約5億4000万円)に過ぎない。一方、インタラクティブ広告協議会(IAB)によれば、米国におけるポッドキャスト広告収益は10億ドル(約1060億円)の大台に近づいているという。とはいえ、エーキャストの7月のノルウェーにおける広告収益は前年同月比で800%に達した。

独自プラットフォームの利点

さらに、シブステッドの新プラットフォームの導入により、広告バイヤーは同グループの広告ツールでポッドキャスト上のキャンペーンを予約できるようになった。かつてはエーキャストにおける広告販売は手動で行う必要があったため、これによりさらに市場は拡大する見込みだ。エーキャストは現在もシブステッドのポッドキャストに広告を配信しており、広告は外部プラットフォームで再生されることになる。

メディアアナリストのトーマス・ベークダル氏は、「どのポッドキャストプラットフォームも、無料のビジネスモデルに基づいて規模を拡大している。そのため、有料番組を落とし込むのが非常に難しいのだ」と語り、デンマークのパブリッシャー、ゼットランド(Zetland)やオランダのパブリッシャー、デ・コレスポンデント(De Correspondent)による異なるモデルを例に挙げている。「技術面やユーザー体験だけでなく、事業面における課題も存在している」。たとえばSpotifyは、自社プラットフォームで独占配信を行うポッドキャスト番組を買い取る一方、クリエイターに対しては、ポッドキャスト番組の無料提供を求めている。「こういったプラットフォームからの扱いは非常に不公平なものだ」と同氏は付け加える。

シブステッドでは、具体的な結果は非公開ながら、継続的なテストを行った結果、ポッドキャストは自社チャネルと外部の両方で配信することで、聴取数の合計が増えることが判明したという。

たとえば、同グループのタブロイド系ニュースを扱うVGでは、ほとんどの収益は広告から得ており、ノルウェーでは人口の24%が購読している(Reuters Digital News Report 2020のデータ)。VGは現在ポッドキャストを15番組展開しており、今後数カ月のあいだにさらに5~10種類のポッドキャストを立ち上げる予定だという。特に人気なのが、犯罪ドキュメンタリー番組のクリムポッデン(Krimpodden)で、9月第3週の回はVGで約2万人のリスナーを記録した。これはVG全体のリスナーの約25%を占める(残りはiTunes、Google、Spotifyといった外部プラットフォーム経由)。

「これがもっとも賢い方法だ」

理由のひとつとして挙げられるのが、シブステッドのポッドキャストプレイヤーと連携したことで、ユーザー体験が向上し、ポッドキャスト番組が目に触れやすくなり、類似コンテンツや関連コンテンツとのクロスプロモーションも可能になったことだ。ポッドキャスト広告のインベントリーが増え、配信プラットフォームではなく、自ら制御できるようになったことで、VGは、スポット広告や番組スポンサーでより高い広告料金を設定できるようになった。

ポッドキャストの商業開発を行うヘレネ・スバーボ氏は「これは必要であるとともに、収益を増やすチャンスでもあった」と語る。「市場の未来を考えれば、これがもっとも賢い方法だ。データが手に入り、ツールも利用しやすい。これは市場を拡大し、自分たちで制御するため必要なイノベーションなのだ」。

[原文:‘Gives us more control’ To grow revenue, Schibsted built its own podcast platform]

LUCINDA SOUTHERN(翻訳:SI Japan、編集:長田真)

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