Amazon が貨物輸送機を購入、輸送体制を本格組織へ:「長期のコミットメントだ」

DIGIDAY[日本版] / 2021年1月18日 12時50分

Amazonが自前の航空機による貨物輸送体制を手に入れようとしている。

Amazonは貨物輸送機を11機――デルタ航空(Delta)から7機、ウエストジェット航空(WestJet)から4機――を購入することを初めて発表した。Amazonはいままで、貨物機のリース契約をしていただけだった。

この発表は、ここ数年にわたるAmazonエア(Amazon Air)の急成長を締めくくるものだ。Amazonエアは同社の貨物輸送ネットワークで、2016年にAmazonプライム・エア(Prime Air)として誕生した。Amazonは現在、シンシナティとドイツのライプツィヒの空港に新たなハブを構築する準備を進めており、2021年末までに航空機の数でDHLを追い越そうとしている。

航空機を航空会社から直接購入するというAmazonの決定は、タイミングの問題だったのかもしれない。航空業界は依然として低迷しており、航空会社の多くは業務合理化のために古い飛行機を処分している。昨年、たとえば5年使用したボーイング777の価値は10%も下落した。だが、貨物輸送機をリースではなく購入するという決定は、Amazonが配送ネットワークに関わる長期戦に参入し始めるという、業界人の多くが長い間抱いてきた推測を確固たるものにしている。

ホフストラ大学でグローバルスタディーズおよび地理学の教授を務めるジーン・ポール・ロドリク氏は、「Amazonが航空機を購入するという事実は、同社がここに留まり続け、長期に渡ってコミットする意思を明確に示したものだ」と話す。

これは、UPSやフェデックス(FedEx)のような規模の運送会社になろうとする、Amazonの最近の取り組みとも合致している。Amazonは2020年に非常に多くのフルフィルメントセンターを追加し、その面積を50%増加させた。同社はまた、地上の配送体制にも多額の投資を行っている。隆盛を見せるAmazonエアは、その取り組みの最後のピースに過ぎない。

Amazonは、航空機の新規購入によって、フルサービスキャリアになる道を着々と進み、自前の配送部隊で荷物を世界中に届けられるようになる。ここまでの軌跡を振り返ってみよう。

Amazonエアの現在の規模は?

フライトウェーブズ(FreightWaves)によると、Amazonは2021年末までに、リースと購入の両方で80機の航空機を調達しようとしている。この数は今後も増え続けるだろう。2020年5月にデポール大学が行った研究は、2027年または2028年までにAmazonが200機もの航空機を保有すると予測した。UPSが現在保有する航空機は275機、フェデックスは463機だ。

Amazonエアは、Amazonの配送のなかでもっともタイムリーなものを扱っているようで、翌日配達に選ばれている製品の多くは航空便で送られている。2020年3月には、個人用防護具(PPE)などの必需品の配送にも飛行機が役立ったとAmazonは述べている。

Amazonエアの将来にとって同じくらい重要なのは、シンシナティに今年オープン予定の15億ドル(約1557億円)を投じたハブだ。

Amazonはほかにも空港に進出している。同社は最近、フロリダ州レイクランド、テキサス州オースティン、その他いくつかの都市に加えて、カリフォルニア州サンバーナーディーノに西海岸のハブを設置することを発表した。オハイオ州立大学の物流学の教授であるテリー・L・エスパー氏は、「シンシナティのハブが中核拠点となるだろう」と述べる。フェデックスが自社の航空機のほとんどをメンフィスのグローバルハブを経由させているように、Amazonもシンシナティで同様のことを行うだろう。

世界でのAmazonエアの存在感はまだ比較的小さく、その航空機はアムステルダム(Amazonは2020年末にオランダでストアをオープンしたばかりだ)と上海、テルアビブへ飛んでいるだけだ。だがライプツィヒにハブが完成すれば、国際的な配送ネットワークも大きく向上する。

貨物機を操縦するのは?

Amazon社内にはフライトスタッフがいないので、貨物機の運航や保守整備は、エア・トランスポート・インターナショナル(Air Transport International:以下、ATI)、アトラス航空(Atlas Air)、サンカントリー航空(Sun Country Airlines)など、複数の外部企業に頼らざるを得ない。(航空貨物輸送コングロマリット、エア・トランスポート・サービス・グループ[Air Transport Services Group]傘下の)ATIは、Amazonエアの業務の最大の担い手で、Amazonからの依頼だけでATIの全ビジネスの半分以上を占めている。一方、Amazonのその他の大口契約業者であるアトラス航空は、同社が所有する航空機の約3分の1をAmazonにリースしている。

ATIもアトラス航空も、航空貨物を取り扱う競合他社に比べて従業員の給与水準がかなり低いと報じられている。コンサルティング会社のフライトパス・エコノミクス(Flightpath Economics)によると、航空貨物を扱う企業のなかでもっとも賃金の低いアトラス航空は、最上位のUPSの半分以下しかパイロットに支払っていないという。その影響で、長時間労働や事故への懸念の高まりと比べると、いくつかの緊迫したパイロット労働組合との契約交渉につながっている。

ビジネス・インサイダー(Business Insider)の2019年の記事では、Amazon便が墜落し従業員3名が死亡した事故を受け、この2社の貨物スタッフは労働条件が残酷で、契約スタッフの「ほぼ100%」が 「2020年中に事故が起きる可能性が高い」と考えていたと伝えている。

Amazonエアの戦略は?

Amazonが行う多くの投資の壮大なスキームのなかで、この貨物機部隊は比較的新しいものだ。それは航空貨物サービスの運営には費用がかかるからだ。これを成功させるためにAmazonは、航空機に実際に満載できるだけの十分な在庫があることを保証する必要があった。「飛行機を満載にし、投資を回収するための輸送量があることを確認したほうがよい」と、ロドリク氏は話す。

最初の数年間、Amazonの航空戦略は、ハブを経由するのではなく最終目的地に直行する、業界用語で言う「ポイント・ツー・ポイント」フライトに主眼を置いてきた。デポール大学は、AmazonエアのハブとAmazonのフルフィルメントセンターの所在地を比較する地理的分析を行い、両者に重複が多いことに気づいた。

これは、フェデックスやUPSが取っている「ハブ・アンド・スポーク」方式とは大きく異なる。ハブ・アンド・スポーク方式では、航空会社が主要ハブに集約し、そこで荷物を分類して近隣地域のフルフィルメントセンターへ分散して送る。

ふたつのモデルの違いは大きい。ハブベースのアプローチでは配送スピードが数時間遅れることが通常だとロドリク氏はいうが、長期的にはコストの節約にもなる。これは、ポイント・ツー・ポイントのフライトでは、両方の目的地へ飛行する際に、荷物が満載になる可能性が低いからだ。Amazonはここ数年、迅速な配送を顧客に対して主に売り込んでおり、これまでのところはポイント・ツー・ポイントの戦略は純粋に理にかなっている。しかし、シンシナティへの投資は、ハブベースモデルへ大きく舵を切るシグナルかもしれない。

Amazonがその方向へと軸足を転換するなら、UPSやフェデックスとの直接的な競争に直面し、さらには、Amazonエアを中心にAmazonが配送ネットワークで彼らと対抗しようとしていることを示唆している。

エスパー氏によれば、ハブベースモデルへのシフトは、Amazonがそれを望むならば、Amazonではない販売業者を含む外部の組織のためのフルフィルメントキャリアになる可能性を開くという。「あえて言うなら、AmazonはAmazonのビジネス以外の側面で航空インフラを考えているということだ。もし彼らが独自の航空貨物便を運行するなら、すでにサードパーティとのあいだに築いた関係に配送サービスという側面を追加できるだろう」と、エスパー氏は語った。

[原文:‘A long-term commitment’: How Amazon’s cargo fleet ambitions are getting serious]

MICHAEL WATERS(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:長田真)
Photo by Adam Moreira / WikiCommons

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