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インフルエンサー 施策で炎上した、セフォラの受難:極右のキャンセルカルチャーのターゲットに

DIGIDAY[日本版] / 2021年3月18日 8時50分

トランプ前大統領が掲げていたスローガン「Make America Great Again(アメリカを再び偉大な国に)」の支持者たちは、問題発言や炎上を取り上げて全否定する「キャンセルカルチャー(cancel culture)」を嫌っていると主張する。だが、化粧品専門店のセフォラ(Sephora)を取り巻く昨今の状況を見ていると、そうとも言えなさそうだ。

キューリグ(Keurig)、ナイキ(Nike)、ノードストローム(Nordstrom)など、過去に保守派によって不買運動が呼びかけられたブランドのように、セフォラは1月末、保守派の美容インフルエンサーであるアマンダ・エンシング氏の逆鱗に触れ、騒動へと発展した。そして同ブランドのインスタグラム、Facebook、Twitterなどソーシャルメディアアカウントに、Qアノン(米国の極右系陰謀論)を支持する美容動画ブロガーのフォロワーたちから、数千件もの怒りに満ちたコメントが寄せられた。

エンシング氏は、1月6日に発生した議事堂襲撃事件を支持し、選挙に不正があったというトランプ氏の誤った主張を拡散していることで知られる。セフォラから提携を打ち切られたエンシング氏は、自身のソーシャルメディアで同ブランドへのボイコットを呼びかけ、ニュースマックス(Newsmax)などの保守系メディアでセフォラを激しく批判。このことを受けてセフォラは、サードパーティーのプラットフォームを介してインフルエンサーと契約してきたアプローチ方法を、現在再考中だ。

「我々は最近、エンシング氏のソーシャルプラットフォーム上での憂慮すべき言動について知った。直近では、議事堂襲撃事件での暴挙やそこで失われた命について、軽視する発言もあった。このため、彼女とのプログラムを無期限停止にすることを決め、外部ベンダーと制作した動画も取り下げた」との声明をセフォラは発表した。エンシング氏にコメントを求めたものの、返答は無かった。

炎上騒動が起こった経緯

炎上騒動の発端は1月末、インフルエンサープラットフォームであるリワードスタイル(RewardStyle)を介してセフォラがスポンサーとなったYouTube動画を、エンシング氏が投稿したことだ。セフォラのソーシャルメディアには、エンシング氏との提携に怒りを表明するコメントが殺到。これらのコメントに対し、エンシング氏の発言はセフォラの価値観に沿わないものであり、エンシング氏と制作した「すべてのプログラムを停止する」と回答した。

週が明けて2月に入ると、ニュースマックスなどの保守系メディアに出演したエンシング氏はセフォラを批判し、保守主義なクリスチャンであるために虐げられたと主張した。エンシング氏はさらにほかのメディアにも出演予定であることを、メッセージアプリであるテレグラム(Telegram)の新しいグループ内で明かした。

2月3日にエンシング氏は、極右派の評論家で陰謀論者、ディネシュ・ドゥスーザの番組『ザ・エネミー・ウィズイン(The Enemy Within)』に出演。ドゥスーザは、エンシング氏の身に降りかかったことや、「セフォラのダイバーシティ&インクルージョンの方針は偽物だ」という「率直な意見」を、セフォラの商品レビューサイトに投稿するよう、視聴者に促した。

すると、セフォラはこのような声明を発表する。「今回の決定が政治的、あるいは宗教的な信念に基づいて行われたという主張は不正確だ。私たちは、各個人の考え方や表現の自由を尊重している。ただしセフォラは、ブランドに不適切と見なしたパートナーシップを、終了する権利を有している」。

セフォラは今後、インフルエンサーの審査方法を変更する予定だ。同ブランドによると「今回の件を真剣に受け止め、今後はあらゆるインフルエンサーとのアウトリーチ、コンテンツ、パートナーシップをより厳しく管理できるよう、取り組んでいる」という。ニュースマックスのインタビューでエンシング氏は、リワードスタイルからはセフォラが彼女の動画を見て承認したと告げられていたと述べた。リワードスタイルにコメントを求めたものの返答はなかったが、同社は以前、米DIGIDAYの姉妹サイトであるグロッシー(Glossy)の取材に対して、10月にQアノンのコンテンツを禁止したと語っている。

エンシング氏の言い訳

エンシング氏はニュースマックスなどのショーに出演した際に、陰謀論についての考えは明らかにしなかったものの、暴力は支持しておらず、人種差別主義者でもないと主張した。Qアノンに関する投稿についてや、エンシング氏が支持する議事堂襲撃事件で人種差別主義的なスローガンやシンボルが見られたことにつてどう考えるか、司会者は尋ねていない。保守系メディアからの質問は、エンシング氏が展開するセフォラへの反対運動に、保守層からの幅広い支持を集めることに寄与したのだった。

エンシング氏は議事堂襲撃事件以降、Qアノンの陰謀論をテレグラムグループで定期的に広め、リン・ウッド氏(Qアノンを支持し、マイク・ペンス前副大統領の処刑を呼び掛けた弁護士)や、サイモン・パークス氏(陰謀論者で、乳幼児期に身長2.7メートルの宇宙人の養子になったと主張する英国の元政治家)などの陰謀論について投稿している。さらにバイデン大統領の就任以前には、就任式の日に軍がバイデン大統領を逮捕してトランプ前大統領が権力の座に就くというQアノンの説を支持する投稿もシェアした。これらが実現しないと今度は、バイデン大統領が執務をしているのはホワイトハウスでなく映画セットなのだと主張するようになった。

エンシング氏は、黒人差別への抗議運動「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」にも反対しており、これはセフォラだけでなく美容業界のほとんどのブランドが採る立場とは相容れないものだろう。「黒人の命も大切であることは疑う余地がない」とセフォラは名言しているほか、エンシング氏がスポンサードコンテンツ動画で取り上げたフェンティビューティ(Fenty Beauty)、グロウレシピ(Glow Recipe)、サマーフライデイズ(Summer Fridays)、タチャ(Tatcha)などのブランドも、この運動を支持している。

ドリュー・ヘルナンデス氏(極右のポッドキャスター)のYouTubeのライブ配信インタビューに出演した際にエンシング氏は、「過激な」ブラック・ライブズ・マター運動を支持する動画を「もし別のインフルエンサーが制作したら、あなたと同じような扱いを受けると思うか?」という質問を受けている。エンシング氏はこのように答えている。「私のような立場にあって、あのようなこと(BLM運動)を支援しながらも暴力を支援する人々はいる。それが彼らが模範とするルールなのだろうが、私はそのようには思っていない」。

「最高にイケてる」保守派ブランド

セフォラの声明には「あらゆる人を受け入れ、思いやりがあり、敬意を払うインクルーシブな美容コミュニティの構築に、全力で取り組むことを約束する。この価値観が、我々のあらゆる意思決定を導き続けることとなる」とある。

エンシング氏は、自身のソーシャルメディアやさまざまなメディアのインタビューで、彼女のリーガルチームがリワードスタイル側と、スキャンダルの場合の提携解消の取り決めについて連絡を取り合っていたと語っている。セフォラの声明には「セフォラは、アマンダ(・エンシング氏)や彼女のリーガルチームと直接接触したことは一切ない」と記されている。また「支払い条件や情報開示条項だけに限らないが、彼女との契約はすべて、セフォラのパートナーであるリワードスタイルが取り扱っている」。

ここ1年ほど、ライフスタイルやファッション、美容系のインフルエンサーのなかには、Qアノンにインスタグラム映えするフェミニンなイメージを与えて敷居を低くし、極右派のコンテンツへの入り口として貢献してきた者たちもいた。議事堂襲撃事件以降、多くのブランドはエンシング氏をフォローするのをやめている。だが同氏は美容関連の投稿数を倍増させており、新しい美容ブランドを2年間開発してきたと発表した。Twitterで「最高にイケてる」保守派ブランドになると説明しており、「メイクアップを再び偉大に(Make Makeup Great Again)」と謳っている。

[原文:Sephora becomes a target of far-right cancel culture]

LIZ FLORA(翻訳:田崎亮子/編集:長田真)

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