大手企業は、なぜ TikTok より インスタリール を好むのか?

DIGIDAY[日本版] / 2021年3月8日 8時50分

2020年8月、Facebookはインスタグラムの新機能、リール (Reels)をロールアウトした。同社は同サービスの開発段階から、TikTokのドッペルゲンガーを自社で開発中であるという事実を、隠しはしなかった。リールは、TikTokと同じように短尺動画をベースにしており、そのアルゴリズムは、フォロワー数に関係なくあらゆるクリエイターのコンテンツが、エンゲージメントの初期徴候に基づいてバイラル化するように設計されている。

リールの登場から半年以上が経過したいま、TikTokとリールの違いが明らかになりはじめている。リールが、メジャーブランドのアカウントに好まれているのに対し、大手ブランドに挑む中小のブランド、およびインフルエンサーが魅力を感じているのがTikTokだ。この現象の背景には、両プラットフォームのアルゴリズムの違いと、大手ブランドたちにとって、インスタグラムが慣れ親しんだ存在であるという事実がある。

「大手ブランドの場合、TikTokを上層部に売り込むのは難しい」と、インフルエンサーマーケティングプラットフォーム、ステータスフィア(Statusphere)の設立者、クリステン・ワイリー氏は語る。たとえば、家具や家庭用品を展開するウェイフェア(Wayfair)は、リールにはときどき動画を投稿しているが、TikTokは利用していない。

TikTokの驚異的なバイラルスピード

大手ブランドの多くが、TikTokよりもリールに快適さを感じる理由のひとつは、インスタグラムが、すでにその効果が実証されているプラットフォームだからだと、ワイリー氏は話す。ブランド各社はしばしば、自社の法務チームの承認を得なければ、新しいプラットフォームを活用したり、インフルエンサーキャンペーンを展開したりすることができない。TikTokの場合、「ブランドの法務チームが、難色を示す例をいくつも見てきた」と、ワイリー氏は語る。

2020年の夏から秋にかけて見られた、TikTokに対する懐疑論の一部は、いつ連邦政府がTikTokを禁止しても不思議ではないというリスクに端を発していた。しかしいま(少なくとも表面上は)TikTokはその危機を回避している。だとすると、いまもメジャーブランドがTikTokを拒否する背景には、上層部がTikTokの特徴やカルチャーを、受け入れようとしないことが影響しているのではないかと、ワイリー氏は話す。TikTokの特徴のひとつが、その「スピード感」だ。同プラットフォームでは、コンテンツがコンテキストから切り離され、驚異的な速さで独特なメタジョークと化し得る。部外者は、そのスピードに恐れを感じるのだ。「TikTokを利用している幹部が上層部にいない大手ブランドは、TikTokに対して良い印象を持っていないだろう」と、同氏は語る。

リールは、そうしたブランドの逃げ道になっている。「フォーチュン500にランクインしているブランドにとって、新たなプラットフォームでソーシャルアカウントを作るのは、簡単ではない」と、ソーシャルメディアマーケティングを強みとするエージェンシー、マーカーリー(Markerly)の創業者、ジャスティン・クライン氏は語る。同氏は、クライアントの1社を引き合いに出してこう語る。「彼らは、リールのことしか考えていない」。しかしこのクライアントは、上層部がTikTokに批判的だったため、リールを利用するしかなかったという。「ほとんどのブランドは、すでにインスタグラムのアカウントを持っている」とクライン氏。そうなると、大手ブランドの多くがリールに流れる状況も理解ができる。

リールは、よりブランドに優しい

そのほかにも、両プラットフォームのあいだには、もっと本質的な違いがある。マーカーリーが、セフォラ(Sephora)やバーガーキング(Burger King)、DSWなど、ブランド10社を比較・分析したところ、リールの方がブランドのアカウントが成功しやすいことがわかっている。反対に、個人ユーザーはTikTokのほうが成功しやすい。

同調査によれば、ブランドの平均インプレッション率(1件の投稿がフィードに表示される頻度)は、TikTokが5.22%だったのに対して、リールは12.08%だった。またマーカーリーは、この数字が個々のアカウントによって、どのように異なるのかを把握するために、著名人のアカウントも調査した。その結果、彼らのTikTokにおけるインプレッション率は108.82%だったが、リールにおけるそれは、わずか21.45%であることがわかった(これらのレートは、各アカウントのフォロワーへの表示回数から算出している。レートが100%を超える場合があるのは、そのためだ)。「これは、コンテンツレコメンドの仕組みに、大きな違いがあるのではと、個人的には思っている」と、クライン氏は語る。

これらの調査サンプルは小規模だし、それぞれのアルゴリズムが修正されれば、結果も変動する可能性がある。とはいえこの調査は、現状両プラットフォームのあいだに、大きな違いがあることを示している。それは、リールのほうが、フォロワー数を重視しているということ、メジャーブランドに適した場所であるということだ。

一方TikTokでは、投稿者は既存フォロワー以外に対しても、自らのコンテンツを届けることが可能だ。またTIkTokでは、フォロワーがたくさんいたとしても、すべての投稿がFor You Pageを通じてフォロワーに表示されるわけではない。リールも、人気動画をバイラル化するという使命を背負っている。しかしリールのアルゴリズムの方が、既存のフォロワー基盤をやや重視しているという。「TikTokの根底には、コンテンツそのものを評価する傾向がある。対してインスタグラムは、TikTokなどに比べると、いまもフォロワー数を高く評価している」と、ワイリー氏は語る。

しかし、ブランド各社が投稿する実際の動画は、TikTokでもリールでもほとんど同じだ。ただ、コンテンツに関する違いを挙げると、リールでは、TikTokがデュエット(duet)やスティッチ(stitch)機能を介して実現しているような、ユーザー同士の交流機会があまり見られない。たとえばチポトレ(Chipotle)の場合、同レストランチェーンのTikTokアカウントは、ほかの人気TikTokerのリポストで埋め尽くされている。一方、リールへの投稿はどうかというと、ほとんどがチポトレのインハウス動画となっている。

「新たな出会いの場」にはならない

そのアルゴリズムゆえ、リールには、TikTokのような、ユーザーが新しいプロダクトを発見するツールとしての力はない。一部のブランド、たとえばリール動画が平均で700万回の視聴回数を獲得していると発表しているルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)や、動画1本あたり約120万回の視聴回数を獲得しているファッションブランド、バルマン(Balmain)は、リールに勝機を見出している。しかしインスタグラムは、TikTokをきっかけに成功した、クランベリージュースやチョコレートボムといった商品を生み出す仕組みは提供できていない。

前述したように、リールのアルゴリズムは、既存フォロワーへのコンテンツ配信を重視しているが、インスタグラムのほかの機能とは一線を画している。たとえば、インスタグラムの投稿(posts)やストーリーズ(stories)機能は、コンテンツがバイラルする要素を備えていない。しかしリールなら、それに適した動画を使って、自社製品を何百万人というユーザーに紹介するチャンスがある。「リールはインスタグラムにとって、フォロワーの枠を超えてビジネスを広げる場を作るための、第一歩なのかもしれない」と、ワイリー氏は語った。

[原文:Why incumbent brands prefer Reels over TikTok]

MICHAEL WATERS(翻訳:ガリレオ、編集:村上莞)
Image by Louis Vuitton on Instagram

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