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バーンアウトの第2波を防ぐため、雇用主たちの努力とは?:「そろそろ限界に近づいている」

DIGIDAY[日本版] / 2021年9月14日 10時50分

2021年6月、米国で400万人近くの人々が仕事を辞めた。オーウェン氏(仮名)*もそのひとりとなった。

通常の週40時間労働に加えて、早朝、深夜、週末も働く生活が5年間続いたのち、オーウェン氏は世界的に名の知れた大手広告会社(それは彼が初めて就職した会社だったが)に、見切りをつけた。そして同月、ストレスを減らすために彼はあるブティックPRエージェンシーに再就職した。彼のストレスレベルは、パンデミックが起こって在宅ワークが始まった昨年までに、悪化の一途をたどっていた。

その頃、米国ではワクチン接種が進んだことで、社会的交流再開の機運が高まっていた。しかし、オーウェン氏は新しい職場で、リモートワークが継続されることが通知された。彼のストレス要因の多くは、このリモートワークだった。

「転職の決断には満足しているものの、バーンアウト(燃え尽き症候群)の症状は緩和されていない気がする」とオーウェン氏はいう。「むしろ悪化し、新種の倦怠感へと進化したように思う」。

以前より状況が改善され、安全に友人や家族に会うことができるようになったいまでも、人と会うことに十分な時間を割けているとは思えず、こうした感情は増すばかりだ。

「新しい同僚たちに良い印象を与えようと日々在宅勤務に励みながら、これまで逃してきた1年分の交友の機会を週末に詰め込んできた」とオーウェン氏。「このため、ひとりの時間をかなり犠牲にしているはずなのに、いまだに、孤独感はまったくぬぐえない」。

徐々に進行するバーンアウト

いわゆる「大離職時代(The Great Resignation)」のさなかに仕事を辞めた人々のすべてが、オーウェン氏と同じ理由というわけではない。だが、彼の退職動機のひとつであるバーンアウトは米国の労働力の低下など、労働に関する大きな問題となっている。

2020年3月以降、さまざまな要因がバーンアウトをもたらした。たとえば死者まで出ているパンデミックに対し、健康維持に努めることや、パンデミックに続く不況・経済的困難へのやりくり、そして多くの人々にとってリモートでの仕事をうまくやりこなすことなどだ。それに加えて、めまぐるしく変化するニュース報道によって、米国における人種差別や警察による暴行事件、さらには大統領選挙にいたるまで、重要でありながら精神的に消耗する出来事が洪水となって人々を飲み込んだ。

しかし、2021年春にワクチン接種が進んだあと、さらに新しい要因が加わった。

人々は安心して社会生活を再開できるようになり、雇用主は職場復帰の計画を立て始めた。これによって、社員たちは、仕事と生活のバランスを再考し始めている。だが、新型コロナウイルスの変異種が出現したこと、また特定の地域でワクチン接種が遅れていることなどが、私たちがかつての生活を完全に取り戻すことを阻んでいる。

「私たちはバーンアウトの第2波を経験している。予測がまったくできないことがその一因だ」と、デジタルマーケティング&コミュニケーション会社ジェリーフィッシュ(Jellyfish)でグローバルCMOを務めるシャロン・ハリス氏はいう。

さらに、ワシントンDCを本拠地とするカウンセリング&セラピーグループのスライブワークス(Thriveworks)の公認マリッジ&ファミリーセラピストであるエミリー・シモニアン氏によると、社会生活の安定化への再調整のペースは「当然、人によって異なる」。したがって、マネージャーやチームリーダーは、このワクチン接種後の世界において、職場復帰計画について話し合ったり、職場の方針を再評価したりするときに、その点に十分注意を払う必要がある。

バーンアウトを管理するための新しいルール

ハリス氏をはじめ、マネージャーによっては社員が毎日のオフィスへの通勤を再開すると、生産性が低下すると予想する。

これは、1日の終わりにシャットダウンして帰宅するという工程が原因のひとつだが、社員たちが1年以上ぶりに共有の作業環境に適応する必要があるためでもある。つまり、どちらもこれまでと違うワークスタイルへと変えることによる作業ペースの遅延や、成果物の劣化を引き起こし得る懸念材料として、一部のマネージャーは危惧しているのだ。

「1年生に戻って再び友達を作る必要があるといったような、抑え込まれた不安がある程度存在する」と、ハリス氏はいう。「とくに、このパンデミックのあいだに我が社の社員規模は2倍になった。お互い初めて会うという社員がたくさんいる」。

ジェリーフィッシュはまた、オフィスとリモートのハイブリッド型で働くようになったため、そのパフォーマンス監視モデルの再評価も行っている。これには、在宅勤務を継続している社員が、オフィスで働く同僚と等しい昇進の機会が得られると感じられる環境になることを目的としている、とハリス氏は話す。

たとえば、社員は自分でビジネスを提案して昇進の機会を得ることができるようになるだろう。昇進は、ほかの社員との共同作業に費やした時間や単にプロジェクトに費やした時間ではなく、仕事の質に基づいて決められる。

戦略的マーケティング会社サリエントMG(SalientMG)のCEO兼創設者のマック・マッケルビー氏は、14人のスタッフがすでに5年間完全にリモートで仕事をしているにもかかわらず、社員中心の方針変更によって、社員各人にとっての適切なライフワークバランスを実現しようとしている。

「バーンアウトは、まわりの人々のことをよく知らず、経験をともにしないときに起こる」とマッケルビー氏は話す。

今年の新しい方針には、チームが午後1時にログオフする通年の「サマーフライデー」が含まれている。また、木曜日の朝は現在、自分の仕事に専念できる時間とし、会議を予定に入れることができないようになっている。マッケルビー氏は、気を散らされないように、この時間内は電話も鳴らないようにしている。さらに、無制限の有給休暇をスタッフがどのように取得しているかを注意深く監視して、ホリデーシーズンの休暇に加え、各社員が1年に最低3週間有給休暇をとっていることを確認するようにしている。

マッケルビー氏はまた、地理的理由で給与が変わることを恐れずにチームメンバーが好きな場所に移り住むことも奨励した。「私は自分が説いていることは、自ら実践している」とマッケルビー氏。そして、昨年自分もバーモント州のシャンプレーン湖岸に住居を移したとつけ加えた。

これらの変更により、年間総労働時間が減少しているように見えるが、この社員中心の経営アプローチにより、昨年の収益が2019年の2倍になったとマッケルビー氏は明かした。

「今までは、これが普通だと『受け入れているふり』をすることができたが、そろそろ限界に近づいている」とハリス氏はいう。「バーンアウトの原因の一部は、正直なところ、この『受け入れているふり』を続けることにある。そして彼らは、これまで18カ月間、この『ふり』を続けてきたが、あと6カ月か9カ月、さらに続けることは難しいだろうと、さすがに気づき始めている」。

そして、大離職時代からほかのことを何も学べなかったとしても、人々は、「またこれも現実なのだ」と受け入れ、社会や自身の生活に対し、恐れずに白旗を掲げるだろう。

*編集者注:オーウェンは彼の身元を明らかにしないための仮名だ。DIGIDAYは、雇用主からの報復を恐れず自由に話してもらうため、匿名とした。

[原文:‘A new strain of malaise’: How employers are trying to guard against another wave of burnout]

KAYLEIGH BARBER(翻訳:SI Japan、編集:小玉明依)

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