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【東京医科大学】炎症性腸疾患のヒト腸内細菌・ファージ・真菌の同定と世界共通性を発見

Digital PR Platform / 2024年11月29日 20時5分


【研究の背景】
 炎症性腸疾患(IBD)は、腸に慢性の炎症が生じる厚生労働省指定難病のひとつであり、潰瘍性大腸炎(UC)*¹ とクローン病(CD)*² に分類されます。若年層に発症することが多く、一生涯に渡り生活の質に影響を及ぼすだけでなく、患者数の増加による医療経済の圧迫も問題となっています。原因が不明なため完治は困難であり、手術による腸管切除を余儀なくされる患者が多数存在します。
 ヒトの腸内には、細菌だけでなく、ウイルス(バクテリオファージ:以下ファージ)、真菌などの微生物も生息しており、これらを総称してマルチバイオームと呼びます。従来のIBD研究では、腸内細菌叢に着目した解析が中心的であり、IBD患者では、腸内細菌叢の乱れや特定の腸内細菌種の変化が確認されております。しかし、腸内細菌種以外の微生物やそれらが有する機能代謝遺伝子がどのように相互作用(クロストーク)し、IBDの病態形成に関与しているかは分かっておりません。これら微生物や遺伝子を網羅的に調べることで、IBDの新たな疾患メカニズムの解明、IBDの新たなバイオマーカーの同定、そして、微生物制御を介した治療法の開発につながる新知見が創出される可能性があります。

【本研究で得られた結果・知見】
1.UCとCDにおける腸内細菌叢の変化は異なることを発見
 Japanese 4Dコホート*³ より、UC患者111人、CD患者31人、健常者540人を抽出し、糞便ショットガンメタゲノムシークエンス解析を実施しました。その結果、腸内細菌4,364種(種レベル)、機能代謝遺伝子(KEGG)10,689個、抗生剤耐性遺伝子403個、ファージ1,347種、真菌90種を同定しました。健常者と比較して、日本人IBD患者では、Bifidobacterium (B. breve、B. longum、B. dentium)、Enterococcus (E. faecium、E. faecalis)、Sterprococcus salivariusなどが増加し、Faecalibacterium prausnitziiなどの短鎖脂肪酸産生菌の低下が確認されました。一方、CD患者では、Escherichia coliが増加しており、この菌種が抗生剤耐性遺伝子や接着性浸潤性大腸菌(AIEC)の病原性遺伝子を複数獲得していることも示しました。UC患者では、これらの所見は認められないため、CDに特異的な腸内細菌叢の変化と考えられました。さらに、重要な点として日本人IBD患者における腸内細菌叢の変動は、米国(図1a)、スペイン、オランダ、中国のIBD患者と類似しており、特に、全てのCDコホートに共通して、Escherichia coliが増加していることを発見しました(図1b)。このことから、腸内細菌種の変動はUCとCDで異なることがわかりました。そして、特にCDで増加するEscherichia coliはAIECの特徴を有し、抗生剤耐性遺伝子を複数獲得していたことから、CD患者の薬剤耐性菌感染症リスクが示唆されました。

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