病原細菌であるレジオネラが宿主細胞の小胞体に定着する仕組みを解明~レジオネラの小胞体定着化に働く宿主・病原体双方の因子を発見
Digital PR Platform / 2024年12月18日 14時5分

【ポイント】
■ 宿主細胞の小胞体に到達したレジオネラは、滑面小胞体より侵入し粗面小胞体へと移行することで小胞体内に増殖ニッチを形成していることを発見しました。
■ レジオネラが滑面小胞体から粗面小胞体へと移行する過程において、宿主細胞に備わっているRab4やRab10及びBap31を階層的に利用していることを見出し、レジオネラが分泌するLpg1152と呼ばれる病原因子がBap31の機能をハイジャックすることを発見しました。
■ これらの成果は、レジオネラの小胞体定着化の抑制などを基盤としたレジオネラ感染に対する新規治療法の開発に繋げられることが期待されます。
【概要】
東京薬科大学・生命科学部・感染制御学研究室の新崎恒平教授らは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のShaeri Mukherjee教授らの研究グループとの共同研究により、病原細菌であるレジオネラが宿主細胞内の小胞体に定着する仕組みを解明しました。本研究の成果は、レジオネラの細胞内発症機構の一旦を明らかにしたとともに、この仕組みの抑制を基盤としたレジオネラ感染における新規治療法の確立に繋げられることが期待されます。本成果は、2024年12月12日に米国Cell Pressが刊行するオンライン科学誌「Cell Reports」に掲載されました。
【研究の背景】
温泉や公衆浴場など『水』を扱う施設での感染事例を報道などで目にする機会のあるレジオネラですが、感染に伴い重篤な肺炎を引き起こすことが知られています。また、レジオネラは宿主細胞内で増殖することから、「細胞内発症型細菌」となります。
宿主細胞であるマクロファージ(食細胞)に侵入後、レジオネラはレジオネラ含有液胞(Legionella-containing vacuole; LCV)とよばれる膜構造を細胞内に形成します。通常、マクロファージは細胞外の異物を取り込みリソソーム(細胞内の分解工場)へ輸送した後に分解する役割を担っていますが、レジオネラはLCVがリソソームへと輸送される過程を遮断します。更には、宿主細胞の小胞体より分泌された輸送小胞をLCVへと取り込むことでLCVの構造を変換します。そして、この変換が引き金となりLCVは小胞体へ移行し、レジオネラは最終的に小胞体で増殖します。なお、上記したレジオネラによる細胞内感染の成立には、レジオネラが宿主細胞に対して分泌する病原因子である「レジオネラエフェクター」が必要不可欠です。
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