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心筋炎の改善や心筋症の発症予防における新たな治療薬候補を発見

Digital PR Platform / 2021年10月27日 8時30分

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 横浜市立大学大学院医学研究科 救急医学 西井基継講師や、本学医学部6年生の髙熊朗さんらの研究グループは、自己免疫性心筋炎心筋症モデルを用いて、プロスタグランジンE2受容体4(EP4)*1刺激が心筋炎による心ポンプ失調を改善するのみならず、拡張型心筋症の発症を阻止することを世界に先駆けて明らかにしました。本研究の成果は、若年者の重症心不全の代表疾患であり、有効な薬物治療がない劇症型心筋炎や特発性拡張型心筋症*2の新たな治療法開発に資することが期待されます。
 本研究成果は、自然科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。(日本時間2021年10月26日18時)

研究成果のポイント 


EP4受容体作動薬が、劇症型心筋炎を改善するのみならず心筋炎後拡張型心筋症の発症を阻止する可能性が示唆された。
心筋炎後心室リモデリングおよび心臓線維化を制御する新たな分子機序として、EP4受容体刺激による組織型メタロプロテアーゼ阻害因子(TIMP)3*3の正制御が、持続的マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)2*4活性による過剰な心筋細胞外基質代謝*5を抑制することを明らかにした。


研究背景
 近年、心不全による死亡は増加の一途を辿っており、心不全対策は世界的な課題です。特に、心筋炎の劇症化(心ポンプ不全)と、その後の特発性拡張型心筋症(IDC)は若年者における重症心不全を来す代表的な心疾患です。IDCは既存の標準的心不全治療薬に対して反応性が悪く、根本治療として心移植しかありません。IDCの治療薬開発は喫緊の課題とされています。
 心筋炎からIDCへの進展においては、自己免疫応答とそれに伴う心室リモデリング(心室再構築)や心臓線維化が重要であることが示唆されてきました。これまで、EP4は心筋に多く存在し、組織炎症に重要な役割を果たすことが報告されており、虚血性再還流モデルマウスでは心室リモデリングを改善することが示されてきました。しかしながらEP4のIDCにおける治療効果とその機序はこれまで不明でした。
 そこで本研究では、心筋炎およびIDCの解析に有用な自己免疫性心筋炎マウスモデル(EAM)を用いて、EP4刺激の難治性心不全における治療的意義とその分子機序を検討しました。

研究内容
 EAM炎症活動期の心臓において、EP4受容体発現が亢進しており、選択的EP4作動薬投与により、炎症極期での心機能障害と血圧低下が改善し、慢性期で心拡大やコラーゲン沈着が抑制されることを見出しました。一方、これらの心保護効果は選択的EP4阻害剤の併用により阻害されました。以上よりEP4受容体シグナルが、心筋炎による心ポンプ失調の改善およびIDCへの進展を予防する新たな治療標的として期待されることが示されました。
 心筋炎後IDC発症を予防する新たな分子機序として、EP4シグナルによるTIMP3発現の増加が、心筋炎後の持続的なMMP2活性を抑制し、その結果過剰な心筋細胞外マトリックス代謝が制御されることで心筋炎に引き続く心室リモデリング及び心臓線維化の進行が阻止されることを明らかにしました(図1)。


[画像1]https://user.pr-automation.jp/simg/1706/52234/600_257_2021102211091261721d4852e4e.jpg


図1:心筋炎後拡張型心筋症(特発性拡張型心筋症)の発症とその抑制における新たな分子機序
心筋細胞外基質の過剰な分解亢進は、特発性拡張型心筋症の主病態である心室再構築と線維化を誘導することが知られており、この病的な基質分解の分子機序において持続的なマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)2活性が重要な役割を果たしていることが示唆された(左図)。一方、EP4作動薬は、TIMP(組織抑制型メタロプロテアーゼ)3の発現を増加し、MMP2の活性を制御することで、過剰な心筋細胞外基質分解を抑制し、その結果特発性拡張型心筋症の発症を抑制する可能性が示された(右図)。

今後の展開
 ヒト心筋炎患者においてEP4選択的作動薬の臨床研究を推進していくための研究体制を構築し、若年者における重症心不全に対する治療法の確立に貢献していきます。

研究費
 本研究は、文部科学省科学研究費助成事業基盤研究(C)および横浜学術教育振興財団研究助成を受けて実施されました。また、小野薬品工業株式会社からの薬剤原末提供支援を受けました。

論文情報
タイトル:Prostaglandin-E2 Receptor-4 Stimulant Rescues Cardiac Malfunction during Myocarditis and Protects the Heart from Adverse Ventricular Remodeling after Myocarditis
著者:Akira Takakuma, Mototsugu Nishii, Alan Valaperti, Haruto Hiraga, Ryo Saji, Kazuya Sakai, Reo Matsumura, Yasuo Miyata, Nozomu Oba, Fumiya Nunose, Fumihiro Ogawa, Kouichi Tamura, Ichiro Takeuchi.
掲載雑誌:Scientific reports
DOI:10.1038/s41598-021-99930-5

用語説明
*1 プロスタグランジンE2受容体4(EP4):
 プロスタグランジンE2(PGE2)は組織炎症において重要な役割を果たしている。その生理作用はPGE2受容体であるEP1-EP4受容体を介して発揮される。特にEP4は心筋細胞に存在することが知られており、虚血性心疾患においてEP4が関与することが報告されている。

*2 特発性拡張型心筋症(IDC):
 若年者の重症心不全の代表疾患であり、現在その患者数は約3万人と推計されている。根本的治療法は心移植しかなく、心移植適応症例の80~90%を占める疾患である。

*3 組織抑制型メタロプロテアーゼ(TIMP):
 TIMPはMMPの活性を制御する分子であり、TIMP-1から-4までのファミリーメンバーからなる。

*4 基質(マトリックス)メタロプロテアーゼ(MMP):
 細胞外基質分解酵素であり、基質の種類により活性化されるMMPタイプが異なる。

*5 心筋細胞外基質代謝:
心筋細胞外基質は心臓の構造維持や心機能において重症な役割を果たしている。炎症や虚血ストレスにより基質分解が促進し、炎症や梗塞部位が排除され修復される一方で、過剰に促進されることで心臓構造異常による心拡大や心筋機能障害が生じる。さらに、コラーゲン合成が亢進し心臓線維化が生じる。この一連の代謝過程を言う。





[画像2]https://user.pr-automation.jp/simg/1706/52234/300_62_2021102211112961721dd15ac84.jpg








本件に関するお問合わせ先
横浜市立大学 広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp

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