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【大阪大学】新型コロナウイルスが高齢、肥満、糖尿病のヒトに危険な理由 -- 脂肪組織とGRP78の関与を提唱

Digital PR Platform / 2021年10月29日 14時5分

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大阪大学大学院医学系研究科のシンジフン助教(糖尿病病態医療学寄附講座)、下村伊一郎教授(内分泌・代謝内科学)らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がお年寄りや肥満、糖尿病のヒトに危険な理由として脂肪組織とGRP78の関与を新たに提唱しました。
【研究成果のポイント】
●新型コロナウイルス感染症において、高齢、肥満、糖尿病が重症化のリスク因子となるメカニズムとして、シャペロンタンパク質であるGPR78 ※1 が関与していることを示唆した。
●GRP78は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質 ※2 と結合し、ウイルスの受容体であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)※3 発現細胞への集積を増強することを発見した。さらに、お年寄りや肥満、糖尿病の高インスリン環境では、脂肪組織において、GRP78の発現が増加することも明らかにした。
●糖尿病の薬や生活習慣の改善(食事や運動など)により脂肪組織GRP78の発現を抑制できることを見出し、COVID-19の予防や治療応用への可能性が期待される。





◆概要
 大阪大学大学院医学系研究科のシンジフン助教(糖尿病病態医療学寄附講座)、下村伊一郎教授(内分泌・代謝内科学)らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がお年寄りや肥満、糖尿病のヒトに危険な理由として脂肪組織とGRP78の関与を新たに提唱しました。
 高齢者や肥満、糖尿病がCOVID-19の重症化の主なリスク因子として知られていますが、そのメカニズムは十分に解明されていません。また、これまでに、GRP78は小胞体に局在し、新生タンパク質の高次構造の形成を助けるシャペロンタンパクとして知られていましたが、COVID-19との関連は不明でした。
 今回、研究グループは、SARS-CoV-2のスパイクタンパクを用いた生化学実験で、細胞ストレスにより誘導される細胞表面型または、分泌型のGRP78がSARS-CoV-2のスパイクタンパクと結合し、ACE2を発現している細胞への集積を増強させることを見出しました。また、GRP78は脂肪組織で高発現しており、COVID-19の危険因子として挙げられていた加齢、肥満、糖尿病などの高インスリン環境により誘導されることを発見しました。さらに、抗糖尿病薬や生活習慣の改善(食事や運動など)によりその発現を抑制できることを明らかにし、今後のCOVID-19の予防や治療への可能性を示唆しました。
 本成果は、COVID-19病態の科学的な理解を深めると共に、新たな予防・治療法の創出につながることが期待されます。
 本研究成果は、米国科学誌「Diabetes」オンラインに、10月6日(水)に公開されました。

◆研究の背景
 GRP78は小胞体に局在し、タンパク質が正常な高次構造を維持するように助けるシャペロンタンパクとしてよく知られています。ストレス環境では、GRP78は細胞表面や血中に分泌され、内因性・外因性のタンパクと結合し様々な病態に関係しています。また、GPR78は様々なウイルスと結合し、ウイルスの複製や細胞への侵入などウイルスのライフサイクルに関与していることが知られています。しかしながら、GPR78とCOVID-19の関連については不明でした。

◆本研究の成果
 本研究グループでは、SARS-CoV-2のスパイクタンパクを用いた生化学実験や様々なトランスクリプトーム解析を通じ、COVID-19が、高齢や肥満、糖尿病のヒトに危険な理由として脂肪組織とGRP78の関与を新たに提唱しました。まず、ストレスにより発生する細胞表面型・分泌型GRP78がSARS-CoV-2のスパイクタンパクと結合し、ACE2発現細胞への集積を増強させることを見出しました。さらに、GRP78の発現はCOVID-19の危険因子としてよく知られている高齢や肥満、糖尿病状態の脂肪組織で高発現していることを明らかにし、その主な理由は高インスリン環境であることを発見しました。既存の抗糖尿病薬や生活習慣の改善(食事や運動など)によりその発現を抑制できることから、今後のCOVID-19の予防や治療への可能性が示唆されます。

◆本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
 COVID-19は2019年、最初の感染が報告されて以来、世界的に2億人以上の感染と4百万人以上の死亡者を出しており、いまだ進行中の危険な伝染病です。その研究期間はまだ短く、COVID-19に関する基礎知識や治療ターゲットへの情報は不足しています。本研究は、細胞外GRP78、特に分泌型のGRP78がSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合し、ACE2発現細胞への集積を増強させることを発見した初の報告です。脂肪組織のGRP78はCOVID-19の危険因子として挙げられている高齢や肥満、糖尿病など高インスリン環境により発現が誘導され、抗糖尿病薬や生活習慣の改善(食事や運動など)により抑制できることを見出しました。今後、COVID-19の予防や治療ターゲットとしての応用が期待されます。

◆用語説明
※1 GRP78
 BiP(binding immunoglobulin protein)とも呼ばれ、ヒトではHSPA5遺伝子によってコードされるタンパク質である。小胞体へ移行してきた新生タンパク質に結合し、それらをその後のフォールティングやオリゴマー化が可能な状態に維持する。

※2 スパイクタンパク質
 スパイクタンパク質は、ウイルスエンベロープ上の糖タンパク質スパイクである。これらの突起は、宿主細胞上の特定の受容体にのみ結合する。それらは、宿主の特異性とウイルス感染性の両面で不可欠である。

※3 アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)
 アンジオテンシン変換酵素2は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系に属する酵素であり、コロナウイルスはACE2を宿主細胞受容体として利用する。

図:COVID-19におけるGRP78の潜在的役割
 脂肪組織において、GRP78は加齢や肥満、糖尿病でよくみられる高インスリン環境により誘導される。細胞表面型や分泌型GRP78はSARS-CoV-2のスパイクタンパクと結合し、ACE2を発現している細胞との結合や集積を増強させる。GRP78の細胞内/細胞外での役割から、SARS-CoV-2の様々な病態発現やライフサイクル(ウイルスの複製や侵入、全身のACE2発現細胞への感染、炎症など)に深く関わる可能性が考えられる。



◆特記事項
 本研究成果は、米国科学誌「Diabetes」オンラインに、10月6日(水)に公開されました。
【タイトル】
''Possible Involvement of Adipose Tissue in Patients With Older Age, Obesity, and Diabetes With Coronavirus SARS-CoV-2 Infection (COVID-19) via GRP78 (BIP/HSPA5): Significance of Hyperinsulinemia Management in COVID-19''
【著者名】
Jihoon Shin1,2,*, Shinichiro Toyoda1, Shigeki Nishitani1, Atsunori Fukuhara1,3, Shunbun Kita1,3, Michio Otsuki1 and Iichiro Shimomura1
(*責任著者)
【所属】
 1.大阪大学 大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学
 2.大阪大学 大学院医学系研究科 糖尿病病態医療学寄附講座
 3.大阪大学 大学院医学系研究科 肥満脂肪病態学寄附講座
【DOI】10.2337/db20-1094

【研究者のコメント】(シン ジフン助教)
 これまで肥満・糖尿病と関連した脂肪組織の生理病態的意義を解明してきました。その過程で、2019年COVID-19が世界に広まり、研究施設の閉鎖や利用制限などで通常の研究ができなくなった時期がありました。その時、自分が研究してきた肥満や糖尿病、脂肪組織がCOVID-19の重症化に危険因子として作用することに着目し、比較的簡便な細胞実験やデータベースの解析を用いて行った研究結果が、今回の成果に繋がりました。聞きなれない内容でRevisionが厳しく、論文の受理まで1年近くかかりましたが、その大切さを認めてもらい、本成果を米国科学誌「Diabetes」に掲載することができました。この研究内容が全世界に広まっているCOVID-19危機に少しでも貢献できればと願っています。

▼研究に関する問い合わせ先
 Shin Jihoon(シン ジフン)
 大阪大学大学院医学系研究科
 内分泌・代謝内科学 第4研究室
 糖尿病病態医療学寄附講座 助教
 E-mail: shinjihoon0209@endmet.med.osaka-u.ac.jp


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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