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微小な“ねじれ”を由来とするタンパク質結晶の不完全性の観測に成功

Digital PR Platform / 2024年5月8日 10時0分


[画像4]https://digitalpr.jp/simg/1706/87699/500_424_202405071538506639cc7a90bf3.jpg
図4 (a) I-GI結晶と(b)P-GI結晶の結晶構造, (c)簡易的に描いた各GI結晶の構造
I-GI結晶は等方的、P-GI結晶は異方的な分子間接触がある






今後の展開
 本研究では、同一のタンパク質を用いて、完全結晶とねじれ結晶の存在を明らかにしました。デジタルX線トポグラフィによるロッキングカーブイメージングの回折理論に基づいた解析から、微小な“ねじれ”が結晶に取り残された最後の結晶欠陥であることが分かりました。また、結晶構造情報から、その“ねじれ”の起源として、結晶を構成する分子間の異方的な接触(相互作用)であることが示唆され、“ねじれ”の原理解明に一歩前進しました。タンパク質をはじめとした分子性結晶の“ねじれ”の制御により、新薬開発のための単結晶構造解析のみならず、材料の開発促進が期待されます。


研究費
 X線トポグラフィ測定はKEKのフォトンファクトリーBL-14B、BL-20B(Proposal Nos. 2019G103, 2021G022, 2023G030)にて行われました。本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業さきがけ(JPMJPR1995)、JSPS科研費(19K23579, 21K04654, 23H01305)の支援を受けて実施されました。

論文情報
タイトル:Unraveling Polymorphism and Twisting in Near-Perfect Protein Crystals
著者:Ryo Suzuki, Marina Abe, Kenichi Kojima, Masaru Tachibana
掲載雑誌:The Journal of Physical Chemistry Letters
DOI:https://doi.org/10.1021/acs.jpclett.4c00319



[画像5]https://digitalpr.jp/simg/1706/87699/350_77_202405071539546639ccba848ad.jpg







用語説明
*1 タンパク質結晶:タンパク質分子が規則正しく配列した結晶。タンパク質の結晶によるX線回折の強度を解析することにより、タンパク質分子の3次元構造を知ることができる。
*2 放射光:電子を光とほぼ等しい速度まで加速させ、電磁石を用いて進行方向を曲げたときに発生する高指向性の強力な電磁波のこと。X線の波長域を含んでおり、実験では単色化したX線を使用している。
*3 フォトンファクトリー(PF):「光の工場」という意味の名で知られる、KEKのつくばキャンパスにある放射光施設。1982年に運転を開始し、X線領域では日本で最初の放射光専用加速器である。数度の改造を経て放射光の高輝度化を図ってきた。国内外の大学等から年間3000人を超える研究者に利用されている。
*4 デジタルX線トポグラフィ:X線トポグラフィとは回折X線の強度の変化を用いて、結晶内の結晶欠陥を観察する非破壊の手法のこと。デジタルX線トポグラフィでは、従来のX線トポグラフィで使用するX線フィルムの代わりにX線のデジタル検出器を使用する。従来のX線トポグラフィでは困難な角度や時間の情報など、多角的なイメージングが可能となる。
*5 ロッキングカーブ測定:X線回折が生じている結晶を連続的に回転するときに得られる回転角に依存した回折X線の強度を測定する方法。角度と回折強度の変化を追うことで、結晶の品質を定量的に評価することが出来る。
*6 X線回折:試料にX線を照射し回折X線を検出して、対象物の構造を非破壊で解析する技術
*7 動力学的回折:X線が結晶中で多重散乱を起こす回折。ダイヤモンドや半導体Siなどの完全性の高い結晶(完全結晶)でのみ観察される。

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