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肺由来のエクソソーム等の細胞からの分泌物に高い抗炎症作用を発見

Digital PR Platform / 2024年5月7日 14時30分


研究の詳細
1. 背景
ALIは、肺上皮および内皮の障壁の破壊に起因する呼吸不全を特徴とする、広く見られる肺疾患です。その要因として、細菌性肺炎やウイルス性肺炎、誤嚥などの肺に直接起因するもの、敗血症や外傷などの肺外因子などがあり、ALIがさらに悪化することで急性呼吸窮迫症候群(Acute respiratory distress syndrome: ARDS)に進展します。例えば、SARS-CoV-2感染症の場合、肺上皮細胞への病原性刺激が自然免疫反応を引き起こしてALIを誘導し、進展に伴って全身のサイトカインストームやARDSを発症し重症化します。ALI病態生理の理解が進んでいるにもかかわらず、全身ステロイド投与、肺保護換気、腹臥位などの治療法の有効性はしばしば限定的であり、肺の炎症を効果的に緩和し、肺傷害を減少させる新規の治療戦略を開発することが求められています。エクソソームを含む細胞外小胞(Extracellular vesicles: EVs)は、あらゆるタイプの細胞から放出される脂質二重膜に包まれたナノ粒子です。これらの小胞は、親細胞からのタンパク質、メッセンジャーRNA、マイクロRNA、脂質のキャリアとして機能し、それによって受容細胞におけるシグナル伝達を誘導することが知られています。さらに、肺内のみならず肺外の細胞から分泌されるEVsが、肺微小環境における気道や肺胞細胞のクロストーク現象を促進することにより、肺組織内の生理的・病理学的活動の両方を制御する上で重要な役割を果たしていることが判明しています。我々は、肺の炎症病態におけるEVsの治療的役割を解明する目的で、EVsの供給源として気道上皮細胞に焦点を置きました。我々の先行研究では、健康なヒト気道上皮細胞由来EVs(HBEC-EVs)が、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)による筋線維芽細胞分化と肺上皮細胞の老化を効率的に抑制することが明らかになっており注2、肺線維症を緩和するHBEC-EVsの効果は、競合開発品の間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell: MSC)由来EVsよりも強力であることが分かっています。しかし致死的な呼吸器疾患であるALI/ARDSの治療におけるHBEC-EVsの効果については、十分に検討されていませんでした。

2. 方法と結果
本研究では、HBEC-EVsが肺の免疫調節に寄与する可能性を評価しました。HBEC-EVsは、THP-1細胞マクロファージおよびHBECsの両方で炎症サイトカインの分泌を減少させることにより、ALIの細胞モデルで免疫抑制効果を示しました。また、HBEC-EVsが様々な免疫関連の表面マーカーを内在的に発現しており、その作用はToll-like receptor(TLR)-NF-κBシグナル伝達経路を制御する9種のマイクロRNAに一部起因することも明らかにしました。さらに、HBEC-EVsのプロテオミクス解析により、炎症の調節に重要なWNTおよびNF-κBシグナル伝達経路に関与するタンパク質の存在が明らかになりました。また、HBEC-EVsに含まれるANXA1が、FPR2受容体と相互作用し、NF-κBシグナル伝達を抑制することで、炎症を抑制することが示唆されました。マウスモデルでの実験では、HBEC-EVsの気道内投与が肺損傷、炎症細胞浸潤、およびサイトカインレベルの低下によってALIを軽減することが示されました。

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