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「雨の中の慾情」片山慎三監督、「1本1本新しい挑戦をしようと意識しています」【第37回東京国際映画祭】

映画.com / 2024年10月27日 17時0分

──プレスシートに「ラブストーリー」を構想する一方、「別れ」をテーマにしたとあります。

 片山監督:その通りです。ラブストーリーといっても、うまくいく男女のイメージは自分には湧かず、これまで観てきた恋愛映画も別れをテーマにした作品が印象に残っていたことから、その路線で物語を思い描きました。

──つげさんというと、読者は夢と旅、そして私小説的な四畳半の世界を思い浮かべるはずですが、この映画は夢と旅の要素はあっても、全然私小説的じゃない。ある種、壮大でオペラティックな作品に仕上がっています。つげさんの持つイメージをラブストーリーの要素を加えて、モダン化しようとされたのでしょうか。

 片山監督:自分が描きたい世界を見つめたとき、原作をそのままやってよいのかという迷いがあり、より映画的に、ドラマティックに見せるにはどうすればよいのか思い悩みました。台湾にシナリオ・ハンティングに行った際、城や戦争のシーンを思いついて、シナリオに加えることにしたんです。

──すると台湾の風景に触発されて、話は変わっていった。シナリオ・ハンティングに行かなかったら、戦争の部分はなかったかもしれない?

 片山監督:なかったです。

──つまり、最初は大江崇允さんと2人で脚本を書いていましたが、 城や戦争の設定は後で片山監督自身が盛り込んだ?

 片山監督:そうです。

──それだけ、台湾の風土に深く魅了されたのですね。

 片山監督:風土はもちろんですが、歴史に触発されました。台湾は中国に近く、僕が撮影する候補地を探しに行った2022年、金門島は軍事的緊張に包まれていました。そうした状況に接し、日本とアジアの歴史を反映させたいと思いました。

──台湾は都市部のほか、地方にも映画を撮影するサポート制度があって大変充実しているそうですね。嘉義市での撮影はいかがでしたか。

 片山監督:台湾の映画スタッフやロケーション協力してくださった方々は、監督がやりたいことを実現させるために熱心に動いてくれるので、撮影は日本よりもやりやすかったですね。折角、ロケハンしても日本ではたいてい許可が下りませんが、台湾では希望した場所でおおよそ撮影することができました。対応がすごくフレキシブルなんです。僕は直感的な人間だから、場所から得たインスピレーションを持って撮影に臨めるのは、大変有り難かったです。

──映画は、夢と現実が絡み合う展開で、すんなりわかりにくい部分もあります。でもどれが現実の場面なのか、見定めることができれば、「なるほど」とわかる仕掛けになっています。たとえば、ビリー・ワイルダーの「サンセット大通り」(1951)のような、倒叙形式による語り口を意識した?

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