ハンフリー・ボガートとは何者だったのか? ドキュメンタリー映画の監督が秘話を明かす【NY発コラム】
映画.com / 2024年12月14日 19時0分
では、当時の赤狩りに対しての立ち位置はどうだったのだろうか。
「彼は検閲に反対でした。それは、最初の妻で女優のヘレン・メンケンがブロードウェイで検閲に遭い、レズビアンを題材にした『The Captive』が上演中止に追い込まれた頃までさかのぼります。そして、ハリウッドにおける共産主義者の赤狩りの頃になると、彼の大きな主張となったのは『映画において、このような検閲を行うことはできない』というものだったと思います。彼は、ハリウッドのスターたちを飛行機に乗せてワシントンに押しかけました。彼らが事態を好転させ、支持してくれると信じていました。彼がデイリー・ワーカー紙の表紙を飾ったのも、圧力が極限に達したときでした。それがボガートのキャラクターの最も驚くべき要素のひとつだと私は思います」
「映画の中でジョン・ヒューストンが言っているように、あれ(=ハリウッドのマッカーシズムに反対し、裁判を傍聴した際、その写真が雑誌ライフに掲載され、あらぬ疑いをかけられたこと)は彼が後悔していることなんです。当時の彼のプレッシャーがどれほどのものだったかを聞くのは興味深いですが、それはブラックリストや製作中止など、現代の私たちにも通じることです。彼が死の床で後悔しているとしたら、おそらくあらぬ疑いをかけられ、製作できなかった作品や出演できなかった作品があることだろうと私は感じています」
最後に、名作「カサブランカ」でのイングリッド・バーグマンとの関係性について聞いてみた。
「あの頃は、まだ前妻のメイヨ・メソットと結婚していた時期でしたから……正直言って、これ以上問題を起こさないようにねと言いたいほど(笑)。問題を避ける方法のひとつは、イングリッド・バーグマンのような美人とあまり仲良くしないことだったと思います。彼女にとっては、映画の共演者としてあまりに連絡が取れないことに戸惑ったに違いありません。当時のインタビューから察するに、ボカートは自分の中に閉じこもっていたのだろうと思います。しかし、彼が感情的な壁を作っているにもかかわらず、スクリーン上でのケミストリーがいまだに伝わってくるのは、ある意味“奇跡”だと思います」
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