2025年の崖とSAPの2025年問題に企業はどう対処すれば良いのか

EnterpriseZine / 2019年5月31日 7時0分

 連載「2025年の崖をどう超えるか」の第一回。2025年のSAPの保守切れは多くの企業のIT部門にとって重要な転換点となる。ERPなど企業IT移行に詳しい鍋野敬一郎氏へのインタビューを踏まえた谷川耕一氏の論稿の前編をお届けする(編集部)。  

 新たなデジタル技術を活用して、革新的なビジネスモデルを創出したい。そのためのデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性は、今や多くの企業経営者などに理解されつつある。しかし現実は厳しく、企業がデータを活用して破壊的なイノベーションを起こすのは簡単ではない。

 ITシステムやデータがサイロ化していて、それらを活用して新たな知見を得られない。さらにDXの迅速な変化に、既存のビジネスプロセスが柔軟に追随できない課題もある。このままDXが進まなければ、2025年には最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある。経済産業省の「DXレポート」でそう指摘し、これを「2025年の崖」と呼んでもいる。

■2025年の崖とSAPの2025年問題を取り巻く企業の現状

株式会社フロンティアワン代表取締役 鍋野敬一郎氏

 DXレポートでは2025年までに複雑化、ブラックボックス化している既存システムを見極め、廃棄するもの塩漬けにするものを仕訳し、必要なものは刷新してDXに取り組むべきだと言う。そうすれば、2030年には実質GDPで130兆円を越える押し上げ効果を発揮できると予測する。できなければ日本企業はグローバルでの競争力を失う。DXの実現には、ゴールイメージを共有し、経営者がリーダーシップを発揮して取り組む必要がある。そしてDXを実現できるようにする、ユーザー企業とSIなどのベンダーとの新たな関係性も必要となる。その上で重要な要素が、DX人材の育成だ。

 そして企業の情報システム部門には、DXレポートの2025年の崖と同じタイミングでのしかかる、別の問題もある。それが「SAPの2025年問題」だ。既存のSAP ERPのサポートサービスが、2025年に終了する。そのためSAP ERPのユーザー企業は、S/4HANAなどへ基幹系システムを移行しなければならないのだ。これは、既存システムを仕分けして適切に刷新する「基幹系システムのモダナイズ」と捉えれば、2025年の崖と根っこの部分は同じとも言えそうだ。

 SAP ERPを基幹系システムとして利用する企業は、日本で2,000を越える。それらを一気にS/4HANAや他のERPのアプリケーションなどへ移行しなければならない。S/4HANAはSAPが用意した純正の移行先ではあるが、データベースは新たなSAP HANAに固定されており、アーキテクチャも刷新されている。そのためSAP ERPからS/4HANAへの移行は、他社のERPアプリケーションに移行するのと同等の手間がかかるとも言われる。そうした理由もあってか、グローバルな調査では既存のSAP ERPユーザーの半分ほどはS/4HANAへの移行を決めているが、1割ほどはS/4HANAへの移行を断念している。残りは態度を決めかねているというのが現状だ。

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