スポーツギア市場における「顧客分類」-仮説検証ツールとしてのエスノグラフィックリサーチ

EnterpriseZine / 2013年3月5日 8時0分

図2:リ・ニン社が選択したスポーツギア市場でのポジショニング 

前回は、コールマン社の「煙感知器」市場への新規参入プロジェクトの事例から、「顧客認知の再構成」を解説いただきました。今回は、これまでにも何度か触れられたエスノグラフィックリサーチに関して、顧客分類の仮説検証ツールとしての活用方法に関して、中国のスポーツギアメーカーのリ・ニンとのプロジェクト事例で解説いただきます。(今までの連載は、こちら)。

■「顧客分類」におけるエスノグラフィックリサーチの役割

 顧客分類に関して、別の例を出しましょう。中国の吊り輪のオリンピック金メダル選手リ・ニンが作ったスポーツウェア会社で、LI-NING リ・ニンというブランドがあります。中国での国内シェアはナンバーワンだったのですが、ナイキとアディダスが進出し、戦々恐々としていました。想定どおり、2社の中国市場への上陸後、同社は国内シェアを落としました。

 私が関わったこのプロジェクトでは、若者がスポーツをどう考えているかに関して、次のようなカテゴリを作りました。シンプルなダイアグラムです。
競う(C:compete)、
楽しむ(P:Play)、
個人(Me)、
みんな(We)

の4つです。

 スポーツウェアを着たりスポーツシューズを履いたりする際に、若者が何を求めているかが重要だと思いました。「個人(Me)で競う(C:compete)」というのは、個人のため、勝つため、パフォーマンのためにスポーツギアを買うという人。もう1つは、「みんな(We)で競う(Compete)」。あるいは、「個人(Me)で楽しむ(Play)」というような場合です。勘のいい読者の方は、もうわかってきましたね。

 たとえば、アメリカでバスケットボールをやっている若者は、シュートが決まるとガッツポーズをします。これは何かと言うと、「俺はお前に勝った、俺って凄いだろ」ということを示しています。

 そこで、エスノグラフィックリサーチャーに、「中国のバスケットボールコートで発せられている言葉と心理を読んで欲しい」と伝えました。結果、すごく面白い答えが分かってきます。まったく競い合うような言葉は出ないのです。中国のストリートの若者は、「皆(We)で楽しんでいる(Play)」だけでした。アメリカの若者は「個人(Me)かつ競う(C: compete)」であるのに対して、中国の若者は、「みんな(We)で楽しむ(Play)」と分類できるということが分かったのは、相当な発見でした。

 このリサーチは、ブランド戦略の話に絡んできます。ステレオタイプかもしれませんが、ナイキは「個人(Me)かつ競う(C:compete)」ですよね。いろいろな見方はありますが、結局、スポーツマンを広告塔に使っています。これは、個人(Me)がハイパフォーマンスで競う(C: compete)ことを暗に示しています。

 一方で、リーボックは「個人(Me)で楽しむ(Play)」。たとえばフィットネスなどのイメージ。ブランドのメッセージを読むことが出来ます。アディダスは「みんな(We)で競う(Compete)」。何となく団体競技イメージ(We)があり、競う(C:compete)ブランドイメージがあります。

Field Research and Design[著]

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