日本で初めてAmazonクラウド上にSAP ERPを導入したケンコーコムの“導入と運用”の舞台裏

EnterpriseZine / 2013年3月21日 7時0分

出所:ガートナー エンタプライズ・アプリケーション&アーキテクチャ サミット2013

健康食品や医薬品などをインターネットで販売するケンコーコムは、東日本大震災を機に、安定的事業運営を目指してオンプレミス(自社運用)のサーバーシステムからクラウド・インフラ上のシステム構築へと舵を切り、2012年8月よりAmazon Web Services(AWS)上でSAP ERPを運用している。AWSのクラウド環境上にSAP ERPを本格導入したのは、国内初となる。ケンコーコムのIT本部長 新井達也氏が同社のクラウド・インフラを活用したERP導入の成功要因と、数か月の運用を経て得られた教訓を紹介した。

■東日本大震災を機に、スピード重視経営に最適なシステム整備を加速

 ケンコーコムは、2011年の東日本大震災を機に、東京にあった本社機能を福岡と分ける二拠点制に移行した。現在、本社は福岡にあり、管理部門やIT部門は基本的に移されている。同時に東京に置いておいた方が有益な機能は、東京オフィスに残されている。

 ケンコーコムの事業は、最終消費者に商品を届けるB to Cが中心で、ECサイトが事業の主力となっている。そのほか、別のECサイトを運営している会社とパートナーシップを組んでおり、そこで販売された商品をケンコーコムの倉庫から消費者に出荷するドロップシップ事業も行っている。そこで今回、それら二つの異なる事業を、ERPでどのように実装していくかが、テーマになった。

 ケンコーコムがシステムに求める要件を理解する上で、一つの重要なコンセプトがある。それは「ロングテール・ビジネス」と呼ばれているもので、いわゆる売れ筋だけでなく、たまにしか売れない商品も常時扱い、全体の売上高を伸ばしていく手法だ。品目別売上グラフが横に長く、テール(しっぽ)のような形になることからロングテールという。これは売り場面積の制約を受けないEコマースならではの販売手法で、その結果、取り扱い商品数が増え続ける事になり、それと共に処理すべきデータも肥大していく。また、たとえばマスクがある時期に爆発的に売れるなど、毎月の振れ幅が大きいのもビジネスの特徴となっている。

 ケンコーコムがERP導入を決定するに至った経営課題は、大きく分けて以下の四つを挙げる。

・経営情報基盤の確立

・業務の効率化、精度の向上

・法対応の強化

・スピード重視

 元々ベンチャー企業で、脈々と連続的成長を続けている過程で必要なシステム追加が行われてきた。そのため様々なシステムが乱立し、情報が分散してしまっていた。

 また、システム連携の悪さから、売上伝票を元に会計システムに入力するなどの手作業も発生していた。さらに下流のシステムで情報を修正すると、「どのシステムの、どの段階のデータが正しいデータなのか」が、分かりづらい状況に陥ってしまった。

 それは、内部統制という意味でも問題だ。また上場企業である以上、近い将来のIFRS対応の基盤構築も求められた。速いビジネススピードに対応すると同時に、リスク分散、BCP対策も図る必要もある。そこで今回、SAPによる一元化により、以上の課題解決を図ることにした。

EnterpriseZine編集部[編]、久原 秀夫[著]

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