「プライバシーか?公益か?」高い次元で医療情報のプライバシー保護と利活用を両立させる“匿名化技術”と活用課題

EnterpriseZine / 2013年4月16日 7時0分

出所:辻井重男氏「医療情報PPDMの可能性」講演資料

2013年3月25日、都内で「医療情報のプライバシー保護と利活用に関するシンポジウム」が開催された。テーマは「医療情報の健全な利活用促進のために何が必要か?」。医療情報のプライバシーを確保した利活用推進のために求められるPPDM(Privacy Preserving Data Mining)のあり方はどうあるべきか。当日行われた講演の中から、東京大学大学院 情報学環で一般財団法人医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)理事長の山本隆一氏の「医療情報のプライバシー保護と利活用」、中央大学研究開発機構教授で、暗号学の権威である辻井重男氏の「医療情報PPDMの可能性」と題して語られた基調講演のレポートをお届けする。

■日本の医療情報電子化状況は、世界トップクラス

 昨今、インターネットに接続したPCやスマートフォン、タブレット端末などの普及もあり、個人に関するデータが日々大量に蓄積されている。こうしたデータの分析から、従来は不可能であった個人に対するきめ細かいサービスが提供可能になる一方、データの不正利用をはじめとするプライバシー侵害のリスクが飛躍的に高まっている。そこで求まられているのがプライバシー保護データマイニング(PPDM :Privacy Preserving Data Mining)である。

 様々な情報の中でも、利活用のメリットと、プライバシー保護の重要性が大きいと言えるのが医療情報だ。新たな治療法を研究開発するためには、症例などのデータが不可欠であるのに対し、個々人の病歴等は多くの人にとって最も第三者に知られたくない情報だろう。

 医療情報の電子化について、日本は先進国の中でもトップランナーだと言える。政府のIT戦略本部などにより電子化の推進が行われ、高齢化社会、地域での医師不足、偏在等に起因する各種問題を解決し、国民の誰もが質の高い医療サービスを享受することが可能にする社会をめざしてきた。現在、インフラ整備については一定の成果が得られたとして、今後は情報を共有するための仕組みの構築、利活用についての施策推進が注目されている。

 こうした状況を背景に開催された本シンポジウムでは、最初に東京大学大学院 情報学環、一般財団法人医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)理事長の山本隆一氏が登壇、「医療情報のプライバシー保護と利活用」と題する基調講演を行った。

 医学知識というのは、決して試験管や動物から生まれてきたものではない。すべて実際の患者から得られた知識をベースに発展してきている。つまり、医学知識は過去の経験の集積、つまり無数のプライバシー、センシティブな情報から生成されたものである。山本氏は「仮にプライバシー保護を最優先して医療情報を活用しないとした場合、医学の進歩が止まってしまう。その結果、すべての人にデメリットが生じることになる」と語る。

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