事業会社のM&Aでの「失敗パターン」と「成功する戦略プロセス」

EnterpriseZine / 2013年8月5日 10時0分

  図表7 シナジーの検討領域と難易度                           

前回は日本の事業会社におけるM&Aの成功例・失敗例、ファンドのM&Aの成功例・失敗例を振り返りました。今回は、その事例から抽出される「事業会社とファンドのM&Aの差」や「成功するM&Aプロセス」を体系化して解説いたします。今までの連載はこちら

■事業会社とファンドのM&Aの差

 事業会社とファンドのM&Aの差はどこからくるのでしょうか。川崎重工業をインタビューさせて頂いた際には「我々はプロなので、デューディリジェンスをしなくても、シナジーが出るかどうかはわかる」というお話がありました。

 しかし、事業会社は少なくとも業界のプロではあってもM&Aのプロではないので、業界の素人ではあるけれども、M&Aのプロであるファンドに比べると、M&Aに関するパフォーマンスが出ていないというのが実情だと思います。

 では、事業会社のM&Aの失敗は、どこに起因するのでしょうか?大きく3つの要因があります。

●1つ目は、M&A戦略不足による失敗

 企業を買収する前に、そもそもどういった事業領域を狙うのか、つまり、どの地域、どの商品、どの顧客セグメント、どのチャネルを狙うのかという明確な戦略イメージを持ち、自社で不足している部分を補ってくれる企業を買うのか、更に事業を拡大するために同業者を買うのかといった狙いを明確にするということです。

 日本の事業会社で結構多いのは、たとえば、「医療・健康の領域」に進出する機会を模索すると、証券会社や投資銀行がいろいろな案件を持ってきて、その中から選んでしまうとい状況があります。これはM&A戦略不足による代表例です。

 幾多のM&Aを成功に導いている日本電産の永守さんは、この会社は買ったら伸びるなと見込んだ場合、「うち、買いますよ」と言って、「10年待つ」とよく言います。本当に買うべき会社を自ら選んで、長期的にでも機会を待つ。

 日本電産のような場合と比較して、対象業界などを漠然と指定して、証券会社や投資銀行から転がってくる案件を選んでしまうのか。

 ここには天と地ほどの差があります。当然、うまい話が転がってくるわけがないので、持ち込まれる案件を戦略なしにやってしまうことが一番大きな失敗のケースです。

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