第三回 正式契約なく着手し頓挫した開発費用は精算されるか。

EnterpriseZine / 2014年9月4日 0時0分

 皆さんはITベンダに仕事をお願いする際、きちんと契約を結んでから作業着手してもらっているでしょうか?私は、そういうことに特別うるさいITベンダで仕事をしておりましたので、契約書のない作業着手や協力会社への作業指示を行なった経験は皆無と言って良いほどですが、IT紛争に陥り裁判所にやってくるプロジェクトの中には、契約を結ばず、口答や簡単な注文書だけで作業を開始したものがかなりあります。契約書のない作業は、その範囲や役割分担が曖昧な上、何か不測の事態が発生したときの対応についての様々な約束事もありませんから、当然にモメゴトを起こす確率は高まります。今回は、そんな紛争についてご紹介したいと思います。「いやいや、契約書くらい作るでしょ、普通。」と思った方、いえいえ、そんなアナタにとっても他人事ではないかもしれません。これからお話しする判例の当事者も契約はちゃんと行なうつもりだったようですから。

■契約前に作業着手した為に起きた紛争

 まずは、事件の経緯からご紹介しましょう。

 東京地方裁判所において平成12年9月21日に判決が出たIT紛争なので、ある独立行政法人向けにシステムの開発と運用を共同で行なおうとした2つの会社の間に起こったものです。通常のユーザ=発注者・ベンダ=受注者という図式とは少し異なりますが、商流としては直接の受注者である外国語翻訳業者が、システム開発をITベンダに下請に出した格好となっていますので、元請会社と下請会社の関係が成り立ちます。元請をユーザ、下請をベンダに見立てて、読んでみてください。
 【事件の経緯】

 ある翻訳業者が独立行政法人の公募事業「インターンシップ支援システム」の開発・運用事業への応募を検討し、ITベンダと提案及び開発について共同事業に関する協議を開始した。

 ベンダは翻訳業者と提案内容についての協議を行ないながら、実際に提案するシステムの開発にも着手したが、この時点では正式な開発契約は結ばれておらず、下請企業の開発着手を元請企業の担当者が口頭で合意したのみだった。

 ところが、独立行政法人から正式な受注を受けた親請会社が下請企業と契約をしようとしたところ、金額が折り合わず、結局、共同事業は解消された。

 まだ、提案の段階から、システム開発を始めてしまうあたり、かなり強引というか向こう見ずな感じがしますが、開発に着手したベンダも、それに合意した翻訳業者も、かなり受注確度が高いと踏んでのことだったでしょう。

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