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人々がアートを巡る旅に出かける理由。瀬戸内国際芸術祭・総合プロデューサー 北川フラム--1/2【INTERVIEW】

FASHION HEADLINE / 2016年3月26日 20時0分

瀬戸内の島々と海を体感しながら、人々はアートを巡る旅に出る

3月30日より三越伊勢丹では、瀬戸内をテーマにした「JAPAN SENSES」というキャンペーンが行われる。それに伴い伊勢丹新宿店のショーウィンドウを舞台に、瀬戸内国際芸術祭のディレクターを務める北川フラム氏が「海の曼荼羅」をテーマに、11人の作家をディレクションする。

「アートは歴史、観光、文化の良さを引き出し、そこに生活する人々や訪れる人々の、未来につながる記憶を呼び起こす」と語る北川氏は、伊勢丹に足を運ぶ人々と、瀬戸内国際芸術祭への来訪者のセンスや感性には共通点があるという。時代の底流を流れる、人々の感覚の奥にあるものとは?


■圧倒的な自然、宇宙と人間が感応する瞬間

ーー「海の曼荼羅」をテーマに、11人の作家をディレクションされるそうですが、どのようなコンセプトをお持ちですか?

平安時代の僧侶である空海は、瀬戸内国際芸術祭の舞台のある讃岐国、現在の香川県の善通寺出身です。苦労して唐に渡り、中国でナンバーワンの位置まで上り詰め、日本に戻って真言宗の開祖となりました。彼は19歳から山林での修行に入り、優婆塞(うばそく)、つまり乞食坊主のように、阿波を巡って土佐まで歩きます。室戸岬の洞窟で修行をしているとき、明星が口に飛び込んできて悟りを開きました。そのとき目にした「空」と「海」から「空海」と名乗るようになったといいます。

刻一刻と表情を変える自然の姿。修行を通して自己を研ぎ澄ませていく感覚。宇宙と自分が出会う瞬間、それこそが、彼にとって祈りであり、信仰そのものだったのです。圧倒的な自然界の力、色彩、そういったものの総体と、人間が感応し合う一瞬。その全体像を表現しようと、空海は曼荼羅(まんだら)をつくり出しました。

瀬戸内国際芸術祭に参加するアーティストたちも、圧倒的な海の力や土地の文化を体感し、作品をつくります。「海の曼荼羅」に集う11人も、できるだけ違うタイプのアーティストを選びました。宇宙と人間が感応する瞬間。その総体を「海の曼荼羅」と呼びたい。その祈りの形を新宿という都会に届けつつ、同時に瀬戸内とつながりたいという願いを込めて、この企画を考えました。


田島 征三「森からの海曼荼羅」

■五感全体で楽しむ、ここでしかできない「旅」の体験

ーー芸術祭の舞台となる島々は、どのような場所ですか?

もともと瀬戸内海というのは、豊かな自然の恵みをたたえた海であり、日本列島のコブクロ、物資輸送の日本の最大の動線でした。人々は海を縦横無尽に行き来し、止まり木としての島々は、独自の文化を育んでいました。それが近代になって、閉鎖空間として隔絶され、島は活力を失い、元来の文化は輪郭を失いつつあります。島で暮らす人々を元気にしたいと、アーティストが風土、歴史に焦点をあて、島の魅力を再発見し、そこで生活してきた人々の時間を寿ぐ。アートをつくり育てることで、多くの人々がつながる。瀬戸内国際芸術祭はこのように、島が誇りを取り戻すためのお手伝いをしてきたわけです。

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