サステナビリティは商品に内在しなければならない--マリ=クレール・ダヴォ3/3【エシカル特集】
FASHION HEADLINE / 2014年12月20日 21時0分
ケリングは18のラグジュアリーブランドと五つのスポーツ&ライフスタイルブランドのグループだ。そのうちの4分の3を占めるラグジュアリーブランドについてダヴォ氏に聞くと、
「これまでのラグジュアリーから連想される言葉は、ヘリテージ(歴史的遺産)、サヴォアフェール(伝統技)、トラディション(伝統)といったものでした。しかし現在のラグジュアリーは、環境と社会に配慮したサステイナブル・ディベロップメントという考え抜きでは語れません。ピノー会長が定義するように、サステイナブル・ディベロップメントは製品のクオリティーに内在するものである、とケリングは考えているのです」
インタビュー中に手渡されたグッチのバッグは、専門家や大学関係者、なめし業者と共に、重金属フリーのなめし工程を開発して作られたものだった。従来のクロムを使用したなめし工程は、六価クロムという人体に有害な物質が発生していたことを考えると、画期的なバッグと言える。
またこの開発は、各ブランドが目指している環境保全に必要な数量的目標と実行計画に沿うもので、有害物質削減の目標達成に近づくと共に、排水量を減らし、エネルギー消費量の削減にもつながっている。グッチは2020年までに有害物質の使用を完全に廃止する目標を掲げているのだ。
開発にはそれなりの初期投資が必要となる。その分が製品の価格に上乗せされているのではと思われがちだが、グッチは価格を据え置いたという。なぜなら、長期的には生産ラインに乗り、増産していくうちに初期投資の費用は少しずつ軽減され、しかもエネルギー消費量が減ることで直接的には経費削減につながり、初期投資費用の軽減を加速させるという理由に基づいている。
差し出されたグッチのバッグは、これまでのバッグの手触りとは違う感触だった。この重金属フリーのなめし工程がすべてのラグジュアリーなバッグに採用されていくなら、この手触りがラグジュアリーのスタンダードになっていくのかもしれない。
「これからの消費者は環境や社会的な問題に関心を高めています。例えばパイソン製品を購入するお客様は、クオリティーの高い素材であることと同時に、絶滅危惧種や生態系を破壊しないパイソンであることを望んでいるのです。こうした課題は、長いスパンで重要性を増していくはずです。企業も長期的な存続を目指していますから、こうしたサステイナブル・ディベロップメントの取り組みを通じて、将来のビジネスに備えているのです」とダヴォ氏。
彼女の言葉からはこれからの社会とビジネスの関係性、そしてあらゆる角度で未来と対峙するケリングのビジネススタイルが展望されるものだった。
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