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特集「キャッチ」司法は変われるのか 26日に袴田事件の再審判決 証拠開示は“さじ加減”「開かずの扉」再審制度の課題

FBS福岡放送ニュース / 2024年9月25日 20時6分

あす26日に再審判決へ

特集キャッチです。注目の裁判を福岡から考えます。1966年静岡県で起きた、いわゆる袴田事件のやりなおし裁判の判決が26日、言い渡されます。事件から実に58年、「開かずの扉」とも言われる再審制度の課題とは。

袴田さん(当時30)

■日本弁護士会連合会・渕上玲子会長

「私たちは袴田事件の悲劇を繰り返さないためにも、今こそ再審法改正を実現しなければなりません。」

9月19日、袴田事件の再審判決を前に再審法改正への機運を高めようと、日本弁護士連合会などが主催した市民集会が開かれました。

1966年6月、静岡県 旧・清水市で、みそ製造会社の専務の自宅が全焼し、焼け跡から刃物で殺害された一家4人の遺体が見つかりました。いわゆる袴田事件です。袴田巌(はかまだ・いわお)さんは、犯人とされ死刑が確定した後も一貫して無実を訴えてきました。去年3月にようやく再審=裁判のやり直しが確定し、9月26日に判決が言い渡されます。

袴田さん(当時78)

しかし、袴田さんの身柄拘束は48年近くにおよびました。ことしで事件からは58年、気が遠くなるような年月が経過しました。

■姉・袴田ひで子さん(91)

「47年7か月、拘置所にいたということで、いろいろ後遺症が出てきています。まだ拘禁症は治っていません。尾を引いております。それでも裁判の決着がつくということは大変うれしく思っています。」

鴨志田弁護士

日弁連で中心となって、再審制度の改革を主張してきたのが鴨志田祐美弁護士です。

■鴨志田祐美 弁護士

「袴田さんは58年の闘いをへて、1週間後に無罪の判決を確実にもらいます。そこを58年の闘いのゴールにしなければならないことはもちろんなのですが、それを今度は再審法改正のスタートにしなければなりません。」

自らも鹿児島県で起きた「大崎事件」の再審請求に関わっていて、去年11月には福岡市で講演し、再審制度の不備を強く訴えました。

■鴨志田 弁護士

「あたった裁判官によって全く審理のやり方が違うという問題。これを再審格差と言います。特にこの再審格差が浮き彫りになるのが、証拠開示という場面です。」

証拠開示は“さじ加減”

「再審格差」が問題に

通常の刑事裁判で、検察は有罪にするための証拠を出し、無罪方向の証拠は出さないのが普通です。その捜査機関に眠ったままの証拠を再審の段階で提出させる「証拠開示」の手続きで、無罪方向の証拠が明らかになり、再審開始や再審無罪につながるケースがいくつもあります。

しかし、袴田事件の最初の再審請求審では27年もの間、証拠はまったく開示されませんでした。証拠開示の手続きにはルールがなく、証拠開示に向けた訴訟指揮が行われるかは裁判官個人の裁量に委ねられているのです。

■鴨志田 弁護士

「27年間で弁護人は何度も何度も証拠開示請求をしているんです。でも27年間で1個も証拠が開示されていないんです。今の第2次再審になって、2010年に当時の裁判長が証拠開示勧告をしたところから、どんどん証拠が開示されるようになって、全部で600点以上の証拠が再審段階で開示されたのが袴田事件。この2010年というのは、袴田さんの死刑が確定してから30年もたっているんです。そこでようやく、やる気のある裁判官にあたったので、証拠開示がやっと実現して、その結果、大変なことが分かった。」

捜査機関による「ねつ造」の疑い

それは、事件から1年2か月後に「味噌タンク」から見つかった“5点の衣類”に関してです。犯行時の着衣とされ、袴田さんの死刑判決の決め手になっていました。ところが。

■鴨志田 弁護士

「5点の衣類が発見された直後のカラー写真が、初めてこの段階で開示されました。とってもビビッドな色をしてました。血は真っ赤で、白いシャツは地の色は白のまま。1年2か月、みそに漬かった色なわけないよねと素人が見て分かるような、こういうことが初めて分かって。そして弁護団も再現実験を実際に1年2か月、みそに衣類をつけて、血染めの衣類を。でも全然違う色だったということで、これは袴田さんが犯行直後に投げ込んだのではなくて、見つかる直前に、1年2か月後に5点の衣類が見つかった直前に誰かが投げ込んだんじゃないの?」

その結果、2度目の再審請求で静岡地裁が裁判のやり直しを決定。"5点の衣類"について、血痕の色やDNA型の鑑定結果などから、袴田さんのものではないとして、捜査機関による"ねつ造"の疑いがあるとまで言及したのです。

しかし、検察が決定に不服を申し立てたことで審理はさらに長期化します。

■鴨志田弁護士

「もうひとつの問題です。なかなか次のステップにすすめない理由が、検察官の不服申し立て、抗告の問題です。」

2018年、東京高裁は一転、再審開始を認めず、判断は最高裁へ持ち越されました。しかし、最高裁は審理に不十分な点があるとして東京高裁に差し戻しました。そして、去年3月。

■記者

「検察の抗告を棄却。再審開始、再審開始と掲げられました。」

その後、検察は不服申し立てをせず、ようやく裁判のやり直しが決まったのです。

審理の長期化が課題

■鴨志田弁護士

「最初の静岡地裁の開始決定から9年もかけて、やっと今、やり直しの裁判が進んでいる。良かったねという話ではないですよ。もう事件から57年(去年11月の講演当時)たっています。」

証拠開示の在り方。検察官の不服申し立てによる審理の長期化。さまざま課題が改めて浮き彫りになりました。司法は変われるのか。判決は26日に言い渡されます。

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