空き家を賃貸物件にして資産化する
ファイナンシャルフィールド / 2021年6月21日 10時40分
全国的に空き家が増えています。空き家を相続して管理しなくてはならなくなったとき、どうすればいいのでしょうか。 適切に管理されていない空き家は「特定空き家」として、行政から指導される法律が整備されました。空き家を適切に管理するのはもちろんですが、賃貸物件として活用することができれば収入を生む資産となり得ます。
相続した空き家をどうするか相続人間で話がまとまらない
相続した空き家は、遺産分割協議等の手続きが終わっていないと、兄弟等複数の相続人が共有しているために、簡単に賃貸物件にする決断ができない場合があります。賃貸物件として貸し出す場合、入居者との契約や借地借家法などの法律関係が生じるため、家賃という利益を得ることができると同時に、貸主としての責任が生じます。
水回りの故障など突然のトラブルへの貸主としての対応は、不動産管理会社と管理契約を結んでおけば管理会社が対応してくれます。管理契約に伴う管理料は、物件の状態や管理内容にもよりますが、一般的に家賃の5%前後です。
家主である方が亡くなって相続した建物が空き家になった場合は、思い入れのある家具などをどうするかの相談がまとまらずに、取りあえず空き家のままにしておきがちです。しかし、空き家の期間が長くなれば、建物や水回りなどの傷みが生じて修繕箇所が増えていきます。なるべく早く相続手続きを終えて、賃貸物件として活用すれば空き家が資産になります。
リフォームにお金をかけるべきか
空き家となっていた期間が長い建物や、メンテナンスがされていない建物は、原則としてそのまま賃貸物件にすることはできません。水回り設備の交換、壁紙・床・畳交換、外壁や屋根の塗装などを行うと高額なリフォーム費用がかかります。
手持ち資金が無くとも、リフォーム費用をローンで借りてリフォームする方法はありますが、お金を借りてリフォームをしたけれども入居者が決まらない、家賃収入が予想よりも安い、といった場合は、リフォームにかけた費用を回収するのに数年かかってしまいます。
リフォーム費用をかけて修繕し、賃貸物件にしたとしても、費用の回収に5年以上かかるようなら、直さずに売却してしまうほうがいいかもしれません。なぜなら、最初にリフォームした箇所も5年経過後に再び同じくらいの費用をかけてリフォームしないといけなくなるかもしれないからです。
その理由として、エアコンなどの賃貸物件に付随する電化製品の保証期間が5年程度であることが挙げられます。
また、2020年4月に施行された改正民法第621条では、以下のような規定があります。
「賃借人は賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ)がある場合において、賃貸借契約が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」
このように、通常使用による経年劣化について、賃借人は原状回復の義務を負わないことが明文化されました。賃貸人が費用を出して張り替え・交換などの対応をしなくてはなりません。
5年程度では、壁紙や床は張り替えなくてはならないほど劣化しないかもしれませんが、すぐに新たな入居者が決まって空室期間が減るように、壁紙や床を張り替える必要に迫られる可能性もあります。
結果的に、最初にかけたリフォーム費用を回収できないうちに再び高額なリフォーム費用がかかるのであれば、最初から賃貸物件にしないほうがよかった、ということにもなり得ます。5年以内で回収できるリフォーム費用に抑えられるかが大きなポイントです。
リフォームしないで賃貸物件にしたり、建物を解体して土地を貸す方法も
持ち主が空き家をリフォームして貸してもリフォーム費用が回収できないのであれば、リフォームしない現状のまま賃貸物件とする方法も検討しましょう。
入居者が自分自身で自分の好みの内装などをリフォームすることを認める契約にして、貸主がリフォーム費用をかけない代わりに家賃を安くして、長く入居してもらう方法があります。
また、グループホームなどの運営団体に空き家の状態のまま貸して、その団体が使いやすいように改装してもらう方法もあります。
都心から離れた場所でリモートワークを促進するために、郊外の建物をリモートワーク施設にして活用する事例も出てきています。リモートワークで仕事をしながら勤務後は郊外でリフレッシュする働き方が広がり、郊外の空き家を活用する起業家が多く出てくるかもしれません。
建物の老朽化が激しい場合は、解体してその土地を月極駐車場やコインパーキング、近所の事業所の資材置き場などとして貸すこともできるかもしれません。ただし、さら地の場合は固定資産税が高くなることを覚えておきましょう。
もちろん、空き家を活用するのではなく、売却したほうがいい場合もあります。
空き家を相続などで取得したら、時間をかけずにどうしていくべきかを検討・決断しましょう。
出典
e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」
執筆者:西村和敏
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
宅地建物取引士
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