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【ちょっと気になる!】預金通帳で「引き出し」が左、「預け入れ」が右なのは、どうして?

ファイナンシャルフィールド / 2021年6月23日 9時10分

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預金通帳を記帳したとき、預金の出し入れや残高の動きをチェックすると思います。その出し入れが通帳に記録される「位置」を改めてよく見てみると、ちょっと気になることがあります。

普通預金通帳を開いてみてください

お持ちの普通預金通帳を試しに開いてみてください。銀行によって体裁やデザインは少しずつ違いますが、記載されている項目(欄)は、向かって左側から次のような順番になっているはずです。
 

[年月日]  [引き出し金額]  [預け入れ金額]  [差し引き残高]

 
「摘要」(取り引き内容)の記載は、上記とは別に独立した欄だったり、あるいは引き出しや預け入れの金額が印字されていないほうの空白箇所にされたりと、いろいろです。
 
いずれにしても、1つ前の行の残高に今回の行の引き出しや預け入れの金額を足し引きした結果が今回の差し引き残高と合っているので、問題はないでしょう。
 
しかし、通帳の中で「引き出し金額が左側」、「預け入れ金額が右側」という配置、簿記や会計処理の視点で考えると、実は逆のようにも思えるのです。
 

主語が、自分(私)ではない現象

誰が主語なのかについて、実は自分(私)ではない現象が世の中にあると以前に書きました。例えば、円と外貨の交換(為替)をするときに、そのレートは次のように呼ばれます。つまり、外貨を「売る」「買う」の主語は、「私(顧客)」ではなく「銀行(金融機関)」なのです。
 

◇外貨を買う(円を外貨に替える)とき
  「TTS」(Telegraphic Transfer Selling Rate = 対顧客電信「売」相場)

 

◇外貨を売る(外貨を円に替える)とき
  「TTB(Telegraphic Transfer Buying Rate = 対顧客電信「買」相場)

 
もう1つ、会社(企業)の財産状況をあらわす貸借対照表。【図表1】のようなものですが、こちらもそうでした。
 

 
この表で<その2>のような体裁になっていると、表の上の左右に「借方」・「貸方」という表示がされています。しかし、表の左側部分は資産(自分のモノやおカネ)なのに、「借」方です。
 
一方、右側部分には借金やまだ支払っていないツケを意味する負債があるのに、「貸」方です。貸借対照表だけでなく、複式簿記の仕訳では必ず借方・貸方がこうした配置となっています。
 
こちらでも、主語は「私」ではなくて取引相手方の「彼ら」なのです。次のように考えると、理解しやすくなります。
 

◇私は、私のモノやおカネを相手方に預けている
   ⇒ 相手方から見ると「借りて」いる状態
   ⇒ 資産項目は、「借方」

 

◇私は、相手方のモノやおカネを借り受けている
   ⇒ 相手方から見ると「貸して」いる状態
   ⇒ 負債項目は、「貸方」

 

預金通帳の主語も、「顧客」ではない

そして預金通帳でも、主語や視点は「顧客」ではなく「銀行」です。おカネが預け入れられると銀行にとっては負債が増えるので、通帳の右側に金額が記載されます。逆に、おカネが引き出されると負債が減り、その金額は通帳の左側に記載されるのです。
 
銀行によっては、左側の引き出し金額を[お支払い金額]、右側の預け入れ金額を[お預かり金額]と表示しています。主語が銀行であることが、一層はっきりしていますね。
 
なお、ゆうちょ銀行の通常貯金の通帳は例外で、左側「お預り金額」、右側「お支払金額」と逆です。前身の「郵便貯金」の通帳でもこの配置で、その形式をそのまま踏襲しているのでしょう。
 
民間銀行の通帳では主語が「銀行」なのに、「官」がルーツのゆうちょ銀行の通帳での主語は「顧客」になっている。何だか“逆転現象”のようにも見えてしまい、面白さを感じます。
 

まとめ

低金利やゼロ(一部マイナス)金利が常態化し、そこにコロナ禍の追い打ちもあるなど、銀行業界では厳しい収益環境が続いています。
 
そのため、各種サービスの有料化や手数料値上げ、また経費削減策としてATM拠点を減らしたり、複数の支店を1ヶ所に集約するなど、利用者にとってはサービス低下につながる動きも相次いでいる状況です。
 
さらに通帳発行有料化や口座維持手数料徴収なども、条件付きですがすでに一部で導入が始まっています。長い目で見ると、これが当たり前の光景になるかもしれません。
 
外貨為替レートの呼び方や預金通帳の中の配置など、主語が「顧客」ではなく「銀行」となっていること自体に、顧客軽視の姿勢があるわけではないのでしょう。
 
とはいえ、銀行のいろいろな業務で今後ますますIT化やデジタル化が加速していく中でも、主語は「顧客」であるサービス産業として進化・発展していくことを願いたいものです。
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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